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カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー

段ボールからショッピングバッグまで、あらゆる包装材料を取り扱う「クラウン・パッケージ」社。紙の原料となる森林資源を守るために、10年ほど前から新たな取り組みを始めました。

本来なら処分していた材料を紙の原料として再び活用する、エコロジーペーパー『スマートパピエ』の開発です。

 

カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー

例えば、チョコレートの製造時に出るカカオの皮をはじめ、パーム油を搾った後のヤシカサや、緑茶飲料の茶殻などを有効活用。紙の原料に配合し、風合い豊かに生まれ変わらせています。

 

今回は、同社で広報室長とテクニカルマネージャーを兼任する八木野 徹さんに『スマートパピエ』の開発秘話をお聞きしました。

 

カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー

――こちらは「クラウン・パッケージ」さんのショールームだそうですね。スーパーやお店で見たことがあるパッケージがたくさん並んでいます。

 

カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー

そうなんです。弊社は段ボールからギフトボックス、テイクアウト食品容器まで、あらゆるパッケージを扱うメーカーです。段ボールと聞くと茶色いイメージを持たれるかと思いますが、色や薄さ、サイズが色々あるんですよ。企業からのオーダーを受けて、商品イメージに合うパッケージを手掛けています。『スマートパピエ』はそのパッケージ素材のひとつです。

 

素材の風合いを活かして作るエコロジーペーパー

――なるほど。では、『スマートパピエ』について詳しく教えていただけますか?

 

カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー

『スマートパピエ』は、本来なら処分してしまう材料を再利用して作るエコロジーペーパーです。紙の原料である木材パルプと一緒に混ぜて紙を作ると、再びパッケージとして有効活用できるようになります。廃棄物の削減になるだけでなく、木材パルプの使用量も減らせるので、森林資源の節約にもなります。

 

――どんな材料を使っているんでしょうか。

 

現在のラインアップは6種類です。

 

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・パーム油を搾った後に捨てられていたヤシカサを配合した「パームヤシックス®」

 

・笹を使った薬の製造時に排出される、笹の葉の繊維を配合した「ササックスグリーン®」

 

・緑茶飲料の製造時に排出される、国産茶葉100%の茶殻を配合した「ティーリミックス®」

 

・食用色素の製造時に排出される、紅花の花びらを配合した「べニックス®」

 

・チョコレートを作る時に生じる、カカオ豆の皮(以下、カカオハスク)を配合した「カカオミックス®」

 

・ゴマ製品の製造時に生じる、ゴマの表皮を配合した「セサミックス®」

 

ですね。

さらに、新しいスマートパピエ商品も現在開発中です。

 

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6種類を展開。かしこい紙=『スマートパピエ』と名付けられた

――どれもナチュラルな色合いですね。

 

はい、素材の風合いを活かしています。ヤシカサやベニバナなどは繊維が見えますし、ゴマは粒感があります。茶殻を使ったティーミックスは、鼻を近づけてみると、ほんのりお茶の香りがするんですよ。その代わり、製造時は臭いくらいです(笑)。

 

――ほんとにお茶の香りがします!カカオミックスなど他の紙は香りませんね。

 

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カカオミックスは裏表で色の濃さが異なる仕様(「クラウン・パッケージ」提供)

カカオミックスは製造時にはチョコレートの香りがしますが、紙にすると残らないんです。また「パッケージにするなら箱の内外で色が違うものも面白いのでは」と、カカオミックスやパームヤシックスは配合を変えてリバーシブルにしています。

 

――そうなんですね。実際に触ってみると、カカオミックスはツルツルしているのに、他の紙はザラザラしていて、感触が違いますね。

 

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そうですよね、再生素材というと和紙のようなザラザラしたイメージを持たれるかもしれません。実際に茶殻や笹、ベニバナ入りの紙は少しザラザラしています。ただ、素材の風合いを優先させると、実際の商品パッケージに印刷する際、混ぜ込んだ繊維や花びらが取れる場合があるんです。

 

ご依頼くださった企業さんには納得して使っていただいていますが…。そこで、「カカオミックス」を開発する際には、他のスマートパピエよりパッケージの印刷に適するよう工夫しました。

 

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「クラウン・パッケージ」提供画像

――このカカオミックスを使ったパッケージは、どんな企業から発注が来るんでしょうか。

 

ひとつは菓子メーカーさんなど、カカオに関係のある企業さんです。もうひとつは環境に良いパッケージを使うことで、ブランディングの要素にしたい企業さんですね。

 

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「クラウン・パッケージ」パンフレットより

パッケージの底や側面には各素材を使用していることを示すマークが入れられるので、イメージアップにも役立ちます。「チョコレート事業ではないけれど、風合いが気に入ったので自社の商品パッケージに使いたい」という企業さんも多いです。

 

『スマートパピエ』を発表したのは2008年です。包装の展示会に出したところ様々な企業さんが興味を持ってくださって、少しずつ需要が伸びていきました。

 

美しいパッケージ作りのノウハウと、リサイクルペーパーの技術を土台に
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――そもそも、『スマートパピエ』はどのようにして生まれたのでしょうか。 

 

少し遡るのですが、お中元やお歳暮、結婚式の引き出物でコーヒーカップのセットなどをお渡しするのが主流だった頃、弊社には「他にないオシャレなパッケージで包みたい」との要望が多くありました。そこで長らく、製紙メーカーさんと一緒に、美しく装う=“美粧”段ボール素材を開発してきたんです。

 

例えば、紙の中に異なる繊維を流し込んで和紙のような雰囲気を出したり、細かく砕いた雲母を入れ、キラキラさせて高級感を出したり……。この頃はまだ環境に配慮するというより、美しさを求める意味合いが強かったですね。

 

その後2000年に「3R 容器包装リサイクル法」が施行され、エコ素材に注目が集まるようになりました。

当時お取引のあった、音響・映像機器メーカーさんから「マンガ本のリサイクルが進んでいないらしい」と聞いたんですね。「マンガ本は背表紙の糊が邪魔をして再生しにくい」「クラウンさんならリサイクルしてパッケージ素材にできるんじゃない?」という話になりまして。

 

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そこで「弊社だけでは難しいけれど、その企業さんと製紙メーカーさん、古紙を回収する業者さんとの4社でやってみよう」と一大プロジェクトがスタートしました。マンガ本からのリサイクルペーパー開発だけでなく、作り続けられる仕組みを作り、パッケージ化に成功したんです。

 

他にも、別のメーカーさんと一緒に新聞古紙100%の段ボールも作りました。そうした技術が『スマートパピエ』第一号の「パームヤシックス」開発の土台になったんです。

 

きっかけは、テレビで見たドキュメンタリー番組
カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー

――これまでの美粧段ボールのノウハウと、リサイクルペーパーの技術がひとつになって、『スマートパピエ』の開発につながっていったんですね。

ところで、ヤシカサに着目したのはなぜですか?

 

きっかけは10年以上前に、僕が自宅でたまたま観ていたテレビのドキュメンタリー番組でした。確か、「ヨーロッパでは石油の代わりに、パームヤシの油を自動車の燃料に使っている。環境に良いと言われているが、パーム油の生産国では搾りかすが大量に出て、処理しきれず山積みになっている」という内容だったと思います。

 

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「クラウン・パッケージ」提供画像

搾った後のヤシカサは、そのまま腐らせて肥料にするしかないような状況でした。放置していると積みあがったヤシカサは高温になり、内部から煙が上がるほどなんです。メタンガスや二酸化炭素が大量に発生するので、結局は環境破壊になってしまうんですね。

 

当時、僕は開発部署にいたので「ヤシは繊維だから紙にできるんだろうなあ」と思ったんです。「そんなにたくさん材料があるのなら紙にすればいい。ゴミを減らせるじゃないか」って。さっそく会社に掛け合って、ヤシカサを探すところから始めました。

 

カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー
パーム油を絞った後のヤシカサ。繊維を取り出し、紙の原料として使う
カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー

――では、その番組がなければスマートパピエは生まれていなかったかもしれないですね。

 

そうですね。完成にこぎつけるまではかなり大変でした。でも一度作ってしまえばノウハウができます。それをもとに、次の開発を進めていきました。

 

チョコレートメーカー・大東カカオからの相談
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カカオ豆の乾燥風景(クラウン・パッケージ提供画像)

――ヤシカサは繊維ですが、カカオハスクは豆ですよね。異なる素材を同じように商品開発していくには、それぞれのご苦労があると思うのですが。

 

はい、毎回試行錯誤しています。もともと紙は、木の繊維を取り出して水の中に溶かし、網ですくって平らに乾かします。木の皮から作る和紙もそうですね。だから、ヤシや笹のような繊維ならたくさん配合できるんです。しかし、カカオハスクやゴマの表皮は異なる素材です。紙の原料となるパルプにどのように、どのくらい加えるかを探るのが難しいですね。

 

カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー

――カカオミックスは、どのように開発されたんでしょうか。

展示会のパームヤシックスを見たチョコレートメーカーの大東カカオさんから「うちのカカオハスクでも作れませんか」とお声がけがありました。カカオハスクは畑などの肥料や家畜の飼料にもなるのですが、大半は処分してしまうそうなんですね。

 

チョコレート工場に視察に行くと、カカオ豆をむいた後の皮では大きすぎて、紙の原料にはできませんでした。そこで細かくするために皮を水でふやかし、ミキサーにかけてみたら、今度はドロドロしたペーストになってしまって作業ができない。

 

乾いた状態で粉砕し、紙を作ってみたらチョコレートの匂いが強すぎました。皮だけでも発酵するので匂いが強くなってしまうんです。色々試してようやく完成しました。

 

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カカオハスクを粉砕し、ペーストにしたもの。「失敗でした」と八木野さん(「クラウン・パッケージ」提供画像)

――完成までにはどのくらいかかるものなんですか?

 

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「クラウン・パッケージ」提供画像

どの商品もだいたい2~3年はかかりますね。商業ベースにのせるために実際の工場でテストをして問題点を探るのですが、スマートパピエのテストばかりできないので。生産の合間に作るとそのくらいはかかってしまいます。

 

工場の職人さんの意識を変えるのも苦労しました。チョコレート工場では、これまで処分していたカカオハスクをきれいにまとめて出荷する工程が必要になります。製紙工場では、カカオミックスを見せると職人さんから「茶色いし、汚れが浮いているじゃないか」と言われました。無理もありません、これまで“真っ白で汚れがない紙”にするために心血を注いで仕事をされてきた人たちですから。作っていたスマートパピエを継続的に作り続ける仕組みづくりも、数社が関わるので構築するまでに時間がかかりました。

 

――技術的な面だけでなく、様々なご苦労があるんですね。

今までトライしてきた素材で、失敗したものってありますか?

 

両手じゃ足りないくらい試してきたので、色々あります(笑)。

開発の最初の頃には、みかんジュースの搾りかすで作ってみたんです。出来上がりはみかんの粒感が紙の表面に出ていてすごく良い感じでした。でも、1ヶ月ほど経過したら、乾燥から色あせて、なんだかよく分からなくなってしまったんです。

 

りんごジュースの搾りかすでは逆に、りんごの皮が変色して紙がところどころ茶色になってしまいましたね。

他にも、健康食品用のにんにくを収獲した後に処分してしまう葉の部分で紙を作ろうとしたこともあります。しかし、ニンニクの実も混ざってしまうので匂いが強烈で…!さすがに諦めました。

 

――想像するだけでも大変そうです…!

現在のスマートパピエのラインアップは選び抜かれた精鋭なんですね。

 

使えば使うほど廃棄を減らせる。『スマートパピエ』の可能性
カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー
スマートパピエを使ったパッケージには、このようなマークが入る。「『クラウン・パッケージ』の名は入っていないが、ぜひ注目してほしい」と八木野さん

――廃棄物を再利用する『スマートパピエ』は、材料再生=” マテリアルリサイクル”としてさらに注目を集めるのではないかと思います。最後に、今後の展望をお聞かせください。

 

新しい商品の開発と同時に、もっとスマートパピエを知ってもらう活動をしていきたいですね。

 

というのも、スマートパピエを使っていただけるお客様が増えれば増えるほど、材料廃棄の量を減らせるからなんです。

どんなに環境に良いものでも、たくさんの人が使ってくれなければ効果が出ません。

 

生活に身近な商品のパッケージが「再生材料で作られている」と消費者の方に認知されれば、自社の商品に利用してくださる企業さんが増えるかもしれない。

 

弊社を通して「誰もが環境保全に貢献できる機会を作ること」が何より大切だと思っています。

 

 

文:田窪綾、写真:新井まる

 

 

【Profile】

カカオ豆の皮から紙を作る。材料再生の可能性を見出す「クラウン・パッケージ」インタビュー

八木野 徹(Toru Yagino)

 

段ボールから食品容器、ショッピングバッグまであらゆるパッケージ素材を製造・販売する「クラウン・パッケージ」にて、広報室長兼テクニカルマネージャーを務める。