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ヒッピーからチョコレートへ。ダンデライオン・チョコレート・ジャパン代表取締役 CEO 堀淵清治 vol.3

Bean to Barをテーマにアメリカ西海岸、サンフランシスコで生まれた「ダンデライオン・チョコレート」。日本に上陸して4年が経った。2016年2月にオープンした日本での一号店(東京・蔵前)で、代表の堀淵清治に話を聞く。その3回目。

 

ヒッピーからチョコレートへ。ダンデライオン・チョコレート・ジャパン代表取締役 CEO 堀淵清治 vol.3
かつての江戸城の城下町、蔵前。
職人が暮らす街角にあるチョコレート工房。

 2016年2月11日、サンフランシスコ発祥のクラフト・チョコレート「ダンデライオン・チョコレート」の日本1号店が、東京・蔵前にオープンした。ファクトリースタイルのカフェで、店に入るとまず目に飛び込んでくるのが、チョコレートを作る工房、ファクトリーだ。

 ダンデライオン・チョコレートは、ITビジネスの世界で成功を収めたトッド・マソニスとキャメロン・リングという2人が、2010年にサンフランシスコで起業したクラフト・チョコレート・ブランドであり、ファクトリーである。カカオの産地から、豆の発酵過程、焙煎、選定など製造工程に徹底的にこだわり、パーソナルな味わいとプレゼンテーションで大成功を収めた。世界的ブームとなったBean to Barのパイオニアである。

 そんなダンデライオン・チョコレートの日本1号店の地として選ばれた、蔵前。かつて江戸城の城下町で、現在も職人の町としての面影を色濃く残している。

 

ヒッピーからチョコレートへ。ダンデライオン・チョコレート・ジャパン代表取締役 CEO 堀淵清治 vol.3

「チョコレート・ファクトリーを併設するので、ある程度の広さ、規模が必要でした」と堀淵清治は語った。

「東京の中心部では、僕たちが必要とした空間はなかなか簡単に得られません。都心ではコストがかかりすぎるし、そもそも都心ではないと思っていました。

 その土地、コミュニティが持つ個性や色、空気と共に、僕たちの店は在りたいと思っていたんです。

 蔵前には、代々続いてきた職人の営み、工房の歴史があります。そのような街角に、ダンデライオン・チョコレートを置きたかった。下町がいいなというのは当初からあって、蔵前を歩いていたら、ここに出逢った。目の前が公園で緑が広がっているというのが、決定的だった。緑があって空間が広がっていれば、店で働いている人たちも気持ちがいいはずだし、店にはきれいな光が入ってくるから。

 2号店がある伊勢神宮は、蔵前店を手がけてくれた建築家が、『伊勢にいい場所があるんだが、何かやらないか?』と言ってきて、二つ返事で『行く!』って応えた。

 僕は、1980年代から伊勢に通っている。年に一度、秋になると、必ず伊勢神宮へお詣りに行く。それが僕の慣わし。特に、伊勢神宮の外宮が大好き。初めて目にしたとき、日本のデザインの真髄のようなものを感じた。

 だから、伊勢神宮で何かやらないか?と言われたとき、直後に『行く』と返事をした。僕はマーケティングとは無縁の男です。直感と、一番大事なのは、自分が気持ちいいかどうか」

 

ヒッピーからチョコレートへ。ダンデライオン・チョコレート・ジャパン代表取締役 CEO 堀淵清治 vol.3

「自分が気持ちがいいかどうか。だって、それがなかったら、何のために生きているのか、わからないでしょう。

 僕はもともとチョコレートはそんなに好きじゃなかった。けれど、サンフランシスコのダンデライオン・チョコレートに行って食べたとき、驚いた。そして、彼らのチョコレートが作られる工程を見せてもらって、さらに驚いた。カカオ豆ときび砂糖だけ。豆を焙煎して作る、長方形の型に流し込む。そのシンプルさと、味わいに驚いた。

 それまでチョコレートに興味がなく、ほとんど食べなかった僕にとって、ダンデライオンのチョコレートは『大好きなチョコレートの原点』。ダンデライオンは僕に、まったく新しい体験をさせてくれたんです。

 ダンデライオン・チョコレートは、100年以上昔からおこなわれてきた、Bean to Barという古い方法で作られているチョコレートだけれど、味わう人にとってその体験は新しい。これは成功するぞ!って思いました」

 

「これからは、本質的なもので価値があるものに、人々の視線は向かうと思う」と堀淵清治は語った。

 英語に、「authentic」という言葉がある。「本物の、真の」という意味だが、同時に「信頼がおける、頼りになる」、「正真正銘の」という意味も持つ。ダンデライオン・チョコレートが生みだすチョコレートは、まさにauthenticである。

(敬称略)

 

ヒッピーからチョコレートへ。ダンデライオン・チョコレート・ジャパン代表取締役 CEO 堀淵清治 vol.3

 

文・写真:今井栄一

 

【Profile】

 

堀淵清治(Seiji Horibuchi)

 

1952年徳島県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、渡米。米国最大のマンガ・アニメ企業(現ビズメディア)を創立、1997年に社長兼CEOに就任。2011年、NEW PEOPLE, Inc.を創業。2006年、『萌えるアメリカ-米国人はいかにしてMANGAを読むようになったか(日経BP社刊)』を出版。Newsweekの“世界が尊敬する日本人100人“にも選ばれる。

2015年、「ブルーボトルコーヒー」日本上陸を主導し、

「サードウェーブ」という言葉が日本のコーヒー界を席巻した。2016年、「ダンデライオン・チョコレート」の日本法人を設立し代表取締役CEOに就任。