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世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」

2019年7月に表参道ヒルズに登場した、世界の食と農を取り巻くさまざまな社会課題に取り組む「imperfect(インパーフェクト)」。今回ブランド立ち上げ当初から関わっている「imperfect」マーケティング部長・佐伯美紗子さんに、ブランド誕生の経緯や社会課題に対する現在の取り組みについてお話を伺いました。

まずは楽しんでもらうところから。「imperfect表参道」
世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
「imperfect」マーケティング部長 佐伯美紗子さん

――「imperfect」は、どのような経緯で立ち上がったのですか?

佐伯:私たち創業メンバーは、もともと世界中の食の原材料を調達する事業に携わっており、これまでもずっと農家の方々に寄り添い、環境保全に対する取り組みや農家の方の自立支援を促す活動を行なってきました。しかし、自分たちがいいなと思う原材料を作っても、自分たちはメーカーに原材料を売るというところまでしか関わることができない。そこにジレンマを感じ「こんなにいい原材料を農家の方々は作っているということを、お客様とダイレクトにコミュニケーションを取って伝える場を作ろう」ということで、自分たちでブランドを立ち上げ、表参道に出店しました。

 

――ブランド名に込めた思いを教えてください。

佐伯:私たちは「imperfect」という言葉に2通りの意味を込めています。1つは、世界的に見ると農業を取り巻く環境というのは、搾取、貧困の課題を抱えていて、それは不完全なことである、という問題提起の意味。それに対して2つ目の意味は、課題を放置するのではなく、何かしらのアクションを起こしていきたいけれど、そのアクションでさえも最初から完璧な解決策を見出せるわけではない。そんな不完全な状態であっても、やらないよりやった方がいいという、取り組みの姿勢を表しています。

 

――お店に入ると非日常的な空間で、色々な体験が散りばめられているので、ワクワクします。

佐伯:こういった社会的・環境的な取り組みは、ともすれば堅苦しくなりがち。おいしさやおしゃれさに魅力を感じてもらい、お店に入って商品を手に取ってもらう。その食の体験の先に、社会課題の存在や解決のための取り組みに気づいてもらえたらと考えています。

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
3つのカウンターが並ぶ店内では、「ナッツ類」「チョコレート」「シーズンもの」を販売。スタッフとお客様がコミュニケーションを取りやすいようにカウンターを低く設計し、商品のおいしさの魅力を伝えるだけではなく、原材料のこだわりやルーツについて話せる場だ

――商品はどういったところをこだわっているのでしょうか?

佐伯:私たちは、「imperfect」の商品のことを「ウェルフード&ドリンク」と呼んでいます。ウェルにも2つの意味をかけていて、「消費者視点でおいしいと感じること」「農家の方々にとってもいいこと」という双方向の良さを追求しています。さらに商品を作る上で、「農家の自立支援、環境保全に取り組みながら生産された原材料を、必ず最低ひとつは使う」というルールを定めています。

 

――「グレーズドナッツ」や「チョコレートバーク」といった商品が人気だそうですが、おいしさはどのように追求していますか?

佐伯:私たちの商品は決して華やかなものではなく、毎日の食生活になじむものであることを大切にしています。フードディレクターの浅本充(あさもと まこと)さんが商品開発に加わり、ナッツ・カカオ・コーヒーといった「農家の自立支援、環境保全に取り組みながら生産された原材料」と美味しさをどう掛け合わせていくか考えていきました。サステナビリティの考え方は、日本ではまだまだ非日常的なものですが、それを日常のものにしていける、生活の中で取り入れやすい商品づくりを心がけました。

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
「グレーズドナッツ」(580円/50g〜)

――ビーン・トゥ・バーやサードウェーブなど、ピンポイントの取り組みをしているところもある中で、「imperfect」の商品はどのような違いがあるのでしょうか?

 

佐伯:私たちの一番の目標は、社会全体の課題を解決するために、私たちが変わること。循環型の社会を築き上げていこうというメッセージを伝えるために、様々なアプローチがあっていいと考えています。なのでひとつの食べ物や商品にこだわってお店づくりをするわけではない。そういう点が違うと思います。

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
いつも食べる食品も、加工される前の姿を知らないことは多い

――それを踏まえると、店内に飾られているイラストや世界の小物などは、見て楽しむ以上のメッセージがあるということですね。

佐伯:はい。例えば、カウンターテーブルの真ん中に植えられているのは、コーヒーの木。机や壁に描かれたイラストは、私たちが食べているものが世界各地で作られている農作物であることを伝えています。楽しみながら、少しでも社会課題に触れていただけたらと思います。

 

 

 

「imperfect」が社会課題に取り組む理由

――佐伯さんは、「imperfect」立ち上げ当初から関わっていたそうですが、社会課題に取り組む意識はいつ芽生えたのでしょうか?

 

佐伯:私が小学校6年生のときです。当時父の仕事の都合でアメリカに住んでいたのですが、メキシコとの国境近くだったので、メキシコへ行くことも多かったんです。ある日父とメキシコ人の父の同僚と一緒に、メキシコへ行った時、外国人である我々が街を歩いていると、物乞いの人たちがその時限りの恵みを求めて近寄る光景を目の当たりにしました。彼らのほとんどが私と同じ歳くらいの子供か、もっと小さな子供。当時の私は単純に「かわいそうだな」「お金をあげたほうがいいのかな」と思いました。

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」

佐伯:ですが、父の同僚は「あげてはいけない」と言ったんです。「どうして?」と尋ねると、同僚の方は、「今ここでお金を恵んでしまうと、彼らはこれで食べていけると思ってしまう。そうすると、明日もその生活を続けてしまうし、自分たちの子供にもそうさせてしまう」と説明してくれました。その時、恵むと言うことが、必ずしも良いことではないと知りました。

そして後からその事を考えて、「自分と歳も変わらないのに、生まれ育った国や環境が違うだけでこんなに差があるのは変だな」と思うようになったんです。どうやったらこの問題が解決されるのか考えたときに、経済や社会の仕組みから変わらないと、根本的に解決しないと思うようになりました。社会人になるときも、そういった社会課題の解決に一歩でも近づけるような仕事に携わりたいという思いを持ち続けていたので、今の仕事に繋がったのだと思います。

 

――格差がないこともまた、社会課題の解決に繋がるのですね。

佐伯:はい。より効率的に収入を増やせるとか、環境にいい取り組みをするからといって、農家の方に負荷をかけたり、収入が減ってしまったりしては意味がない。どうやったら彼らの収入が増えるか、どうやって環境の保全を両立させていくかといった観点で、プロジェクトを進めていきたいと考えています。

 

 

 

食のよいサイクルを作っていく。「Do well by doing good.」プロジェクト

――消費者も生産者もお互いが豊かになっていくために、どのような取り組みをされているのですか?

佐伯:私たちは、よりサステナブルに農業が続いていくということが、私たち消費者にも返ってくるという流れを育てていきたいと考えています。食のよいサイクルを作るためにも「いかにお客様と一緒にそれに取り組めるか」が大切だと捉え、「Do well by doing good.」という、3つのテーマから自分が応援したいプロジェクトに投票できる仕組みを作りました。

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
商品を買うと、「imperfect」のロゴの欠けている部分を表した、投票用のチップが渡される

――投票は期間が決まっているのですか?

佐伯:プロジェクトの内容は、1年単位で変わります。その年度で一番投票数が多かったプロジェクトに対して、売り上げの数%を充てるという仕組みです。今年の3月に1回目の投票が終わったので、今はセカンドシーズン。1回目は環境がテーマのプロジェクトが選ばれました。

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
選ばれたプロジェクトには、売り上げの数%を寄与。読んで知って、プロジェクトに投票しよう

――3つのテーマやプロジェクトは、どのように決めたのですか?

佐伯:テーマに関しては、農業を取り巻く問題を取り扱おうということで、「環境」「教育」「平等」というカテゴリに分けています。日本で生活している消費者の方にも、興味や共感を持っていただけるテーマだと思います。

 

一方でプロジェクトを決める上で大切にしているのは、その中で本当に農家の方々のためになることかどうか。「魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教える」という言葉があるように、一時的な支援ではなく、私たちがいなくなったとしても持続的に続いていくことが大切です。生活の仕組みそのものが変わっていけるような内容を、取引先の農家やパートナー企業にヒアリングをしながら考えています。

 

――3つにテーマが分かれていることで、入り口も広がりますね

 

佐伯:せっかく商品を買ってプロジェクトに参加し、貢献したのに、支援の実感を持ってもらえないのはもったいないこと。自分がこれを選んで、このプロジェクトが選ばれたという参加意識を持っていただき、そこに自分の売り上げの一部がそこに使われているという感覚を得てほしい。投票用のチップにも「みんなで、不完全な部分を埋めていこう」というメッセージを込めています。

 

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
@Olam International
2019年度、選ばれたのはカカオ農家の問題解決プロジェクト
世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
店内には商品の他に、中南米やアフリカの小物もディスプレイされている

――前回選ばれたプロジェクトはどのような内容だったのでしょうか?

佐伯:前回はコートジボワールのカカオ農家に、シェードツリーの苗木を贈るプロジェクトが決まりました。お店で使っているカカオもそこのものです。

 

――なぜシェードツリー?

佐伯:カカオには、日に当たりすぎると日焼けして品質が落ちると言う特徴があるからなんです。元々焼畑をして、自分たちが育てたい農作物だけを育てる文化だったため、農家の方々にシェードツリーを植えようといっても、「カカオの木のそばに別の木を植えたら栄養が取られるんじゃないか」「日が当たらなかったらカカオが育たないんじゃないか」と、正しい知識を知らないため、最初は信じてくれませんでした。そこを一回やってみようと説得するところから初めて、実際に収穫量が上がってと言う成功体験を積み重ねながら信頼関係を作っていきました。

 

現在はコロナの影響で苗木を植える為の現地への渡航が延期になっていますが、現地の様子を映像で撮って、プロジェクトの結果報告や成果報告を時系列を追って可視化していこうとしています。

 

――コートジボワールのカカオ農家に関して、そのほかにもどんな取り組みをされているのでしょうか?

佐伯:すでに取り組んでいる課題としては、女性の就労機会を増やす」「子どもの栄養不足」があります。そのために就労機会が少ないない農家の女性の方々に、違う食物の作り方を教えるということもしています。畑はひとつの作物だけ作っていると土が痩せ細ってしまうため、複数の作物を作ることで土壌を豊かなままキープできる。さらに2つ作物ができることで、相場に左右されない安定的な収入を得ることにもつながる。このプロジェクトで面白いのは、女性に栄養価が高く、作り方も簡単なキャッサバの作り方も教えるんです。そうして作ったキャッサバを、給食用の素材として販売する手伝いまでしています。最終的に女性たちが作ったキャッサバを学校に通う子供たちが給食で食べることで、子供達も十分な栄養をとれるようになる。

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
@Olam International

――とてもサステナブルな取り組みですね。

佐伯:現在は「教育」というテーマで、先程ご説明したプロジェクトに投票できますよ。ぜひ投票してみてください。

 

 

 

よりサステナブルな社会にしていくために。「imperfect」が抱える今後の課題
世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」

――お店がオープンして1年。何か変化は感じましたか?

佐伯:お店に来てくださるお客さんも含め、自分の周りにいる人が少しずつ変わってきてくれているという実感があり、それが嬉しいです。また、SDGsという言葉が広がっている今、人々の消費行動や考え方が変わっていく、転換期を迎えていると思います。そういったタイミングで、こういったビジネスに携われていることがありがたいですね。

 

――これから使用する原材料も変わっていくのでしょうか?

佐伯:これまでの事業で、農家の方々と一緒に作っている原材料もあり、そういったネットワークを生かしながら広げていきたいですね。今はアフリカ、中南米のものを使うことが多いですが、「農家の自立支援」「環境保全への取り組み」という理念に当てはまっていれば、エリアにこだわりはありません。国内の農家でもいい。さらに食品以外にも商品の幅を広げていきたいですね。現在はTシャツも販売しているんですが、そこに使われているコットンも、着る方にとっても土壌にとっても優しいコードジボワールの手摘みオーガニックコットンを使っています。今後もより生産者に寄り添った生産活動をしていきたいです。

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」
「imperfect Tシャツ」

――「imperfect」でこれからやっていきたいことは?

佐伯:「imperfect」はまだ認知が低いこともあり、社会課題や環境への関心が高い方のご利用がまだまだ多い状況です。そこをもっと広げ、カジュアルに知っていただくための機会をどうやって作っていくかが今後の課題です。現在はわかりやすく、考え方を広めるツールとしてウェブマガジン「DOWELL」を運営し、社会課題の活動を取り扱うプラットフォームのような存在を目指しています。さらに7月からはCBCテレビとコラボレーションし、さまざまな企業に訪問してDo well by doing good.なポイントを探していくという、コーナー企画にも携わっています。

 

私たちの現在の主なお客様層は30〜40代ですが、10~20代も社会的な関心を持ち、多く利用していただいています。今からの社会を作って行く世代の方々にアプローチしながら、社会のいい循環作りにこれからも取り組んでいこうと思います。

 

文:宇治田エリ、写真:深町レミ

 

世界を平等に捉え、社会のいい循環を作っていく「imperfect」

imperfect株式会社 

2019年7月にimperfect表参道をオープン。The world is imperfect, so do well by doing good. (不完全なこの世界。だからいいことして、世界と社会をよくしていこう。)をブランドミッションに掲げ、ご来店のお客様と一緒に世界の食と農を取り巻く社会課題に取り組む。