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カカオ本の連鎖 vol.2 西加奈子『ごはんぐるり』

人によって様々だとは思いますが、僕は西加奈子さんの作品(小説であれ、絵本であれ、エッセイであれ)を読んでいると、人間の芯を射抜く強い眼差しを感じます。真正面から見据えられて、少しドギマギするくらいです。

 

 そんな西さんは、書くものを通じて「いのち」と向き合っていると思うのですが、そうなると当然食べものについての文章も幾つか記しています。

 

 『ごはんくるり』は、彼女の食エッセイと「奴」という短編、そして料理人 竹花いち子さんとの対談がぎゅっと凝縮した文庫本です。

 

 イランのテヘラン生まれ、カイロと大阪育ちの来歴ならでは、たこ焼きに謝ったり、甘い甘い紅茶とチョコレートケーキの味を思い出したり、その多様さと愉快さはまるで虹のような食本なのですが、なかでも「甘い恋」と題されたエッセイでは、執筆中のチョコレート使用法について言及しています。

 

 原稿に向かい文章を書いているとき、とんでもなく集中すると「脳みそがぐるん、と、後ろに『回る』ような感覚に陥る」西さん。その感覚もユニークなのですが、そんなときに常備の板チョコを齧るのだそうです。「チョコレートの甘さがみるみるからだを駆け巡って、それこそ、脳みそにぎゅーん、と浸透していくのが感じられる」という筆致のグルーヴ感こそ、「スイーツ」ではなく、生命に息吹き込む植物としてのチョコレートを思い出させます。

 

 確かにカカオは薬として滋養をもたらす面もありますよね。皆さんも、勝負どきは、ばりっといって、ぎゅーんと脳に甘さを送りこんでみてはいかがでしょう?。

 

カカオ本の連鎖 vol.2 西加奈子『ごはんぐるり』