個性的なパッケージが目を引く、「BARQUE CHOCOLATE(バークチョコレート)」。このチョコレートは、尾道にある社会福祉施設、尾道さつき作業所で誕生したチョコレートだ。地域の想いが詰まったチョコレートについて、尾道さつき作業所の管理者、藤井美香さんに話を聞いた。

 

文・本間裕子

写真・チダコウイチ

 

一般企業に負けない品質を追求

尾道さつき作業所の母体である社会福祉法人尾道さつき会は、1978年に地域での生活を願う障がいのある方やその保護者、教育関係者等の熱い想いによって開設された。その後、尾道さつき作業所を構え、食品作業や委託清掃作業などを、仕事を通して誰もが社会参加できるよう就労支援を行なっている。

 

地域の想いが詰まったチョコレート 尾道さつき作業所

尾道さつき作業所のチョコレート作りは、複合施設「ONOMICHI U2」のグループ会社、ディスカバーリンクせとうちカンパニーからの商品開発の依頼に始まる。「地元を盛り上げるためにも、ぜひ依頼に応えたいと思いました。せっかくなら、福祉施設で作っているからではなく、品質がいいからという理由で選んでもらえるようなチョコレートを目指したい。私たちにできる付加価値とはなんだろう?と考えた結果、Bean to Barにたどり着きました」と藤井さん。

 

地域の想いが詰まったチョコレート 尾道さつき作業所

目指す方向性は定まったら専門家の指導のもと知識と技術の習得から始め、施設利用者が関われる作業行程を模索。チョコレートの製造はテンパリング後の型への流し込みの時間以外は時間の調整がしやすいために福祉作業に適しているという気づきも得られた。試行錯誤を繰り返し、色鮮やかなパッケージの「BARQUE CHOCOLATE」が誕生した。

 

チョコレート作りを通じ地元と繋がる

施設の利用者の方が関わる工程は、主に焙煎済のカカオ豆の殻剥きとチョコレートの包装工程。通常のbean to barの工房では半自動の機械で殻を飛ばしているが、尾道作業所ではすべて手剝きで一つ一つカカオ豆を剝いている。

 

「完成までは想像以上に苦労の連続でしたが、殻剥きの作業など重度の障がいのある施設利用者も関われる行程があり、集中力を必要とする没我的作業は得意とするところ。施設利用者の根気強さにいつも驚かされています。また、パッケージデザインには、施設利用者に柑橘やカカオを題材に描いてもらったイラストを使って、デザイナーが商品コンセプトに合うように仕上げているのですが、『カラフルでかわいい』ととても好評。お客さまが商品を手に取ってくれる一つの要因ともなっていると伺っています。パッケージデザインに採用された施設利用者にとっても、この経験が自信となっているようです」。

 

現在では商品ラインナップも増え、オンラインショップもオープン。より多くの方の元へと届くようになった。

 

地域の想いが詰まったチョコレート 尾道さつき作業所
地域の想いが詰まったチョコレート 尾道さつき作業所
地域の想いが詰まったチョコレート 尾道さつき作業所

「ONOMICHI U2」との共同開発で生まれたチョコレートは人気を呼び、今や「USHIO CHOCOKATL」と並ぶ尾道初のBean to Barとして注目を集めるまでに。ダイニングやカフェ&バー、ショップ、ガーデンなどを併設する宿泊施設「LOG」では、尾道さつき作業所の利用者と職員と一緒に、カカオ豆からの手作りチョコレート作りを定期的に開催し、人気のワークショップとなっている。

 

「チョコレート作りを通じ、地元の企業、生産者との繋がりを深め、福祉施設の取り組みを理解していただけるようになったのを感じています。チョコレートの製造は福祉作業に適していて、製法を工夫することで付加価値が生まれ、生活基盤となる工賃の向上も目指すことができる。尾道さつき作業所の取り組みが広く認知され、Bean to Barチョコレート作りが福祉作業施設の業界での新しい事業として広まっていけばいいなと願っています」。

 

施設利用者のポテンシャルを引き出し、地域の人々に愛されるモノづくりを考える。フランス語で小舟を意味する「BARQUE」。たくさんの想いを乗せたチョコレートは、穏やかな瀬戸内の海を抜け大海原へと自由に進んでいく。

 

地域の想いが詰まったチョコレート 尾道さつき作業所

 

尾道さつき作業所

ONLINE SHOP:https://satsuki-onomichi.stores.jp

 

 

 

 

文・本間裕子

編集者・ライター。大学卒業後、(株)INFASパブリケーションズに入社。ファッション週刊紙「WWD JAPAN」、コレクションマガジン「FASHION NEWS」の編集を経て、美容週刊誌「WWD BEAUTY」に創刊時より携わる。退社後、フリーランスの編集・ライターとして、化粧品、食料品メーカーをメインクライアントに、ブランディング、広告制作等に携わる。甘いものは得意ではないが、カカオは大好きでコーヒー、赤ワイン、ラムに合わせて日常的に食している。料理家など食に携わる人たちとの交流が深い。

Instagram:@uozazaza