2018年、尾道にホテルやカフェ、ショップなどを有する複合施設「LOG」が誕生した。手掛けたのは世界的に注目されるインドの建築集団スタジオ・ムンバイ。「LOG」のコンセプトやこだわりについて、支配人の小林紀子さんに話を聞いた。

 

文・本間裕子

写真・チダコウイチ

 

経年変化を楽しめる建物に

2018年12月、尾道の千光寺に続く石段の途中に、昭和38年に建てられたアパートをリノベーションした複合施設、「LOG」が誕生した。再生を手掛けたのは、「ONOMICHI U2」などを運営する地元企業のせとうちホールディングス (現TLB株式会社)。そして建築は、ビジョイ・ジェイン氏が率いるインドの建築集団、スタジオ・ムンバイがインド国外で取り組む初めてのプロジェクトとして指揮を執った。

 

尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」

地上3階、延床面積1180㎡の建物は、1階にショップ、2階にカフェ&バーとギャラリー、3階に客室とライブラリーを備える。アパート時の部屋数は24戸あったにもかかわらず、オープンスペースを広くとったことから、客室はわずか6室のみに。天井・壁・床の全面に手漉き和紙が貼りめぐらされてまるで繭の中にいるような不思議な温かさが感じられる。

 

尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」

また、LOGを特徴づけるのが、なんといってもその色だろう。繭の色のようなベッドルーム、青いプライベートダイニング、緑のライブラリーと、部屋ごとに室内の色合いが変わり、身をおくだけで心地よいさざなみを起こしてくれる。経年変化を見越した外壁の色は決定するまでに3ヶ月を要したというから驚きだ。

 

尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」
尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」
尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」
尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」
尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」

「旅行で訪れた方だけでなく、地元が暮らす人々が足を運び、憩いの場として開かれた空間になることをを目指しています。宿泊も可能な多目的空間というのが特徴的かもしれません。オープンした際に、ビジョイさんが『ここの空間は年々良くなっていくだろうね』とおしゃっていて、いまも毎日のように連絡を取り合って、変化していく様子を共有させてもらっています」と小林さん。

 

尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」

LOGのプロジェクトには、地元の職人たちとチームを組んで進行させるというスタジオ・ムンバイの方針に倣い、多くのクリエイター、作り手が協働している。多様性を大事にし、コミュニケーションを重ねるなかで偶発的に生まれるものを大事にするビジョイさんのスタイルは、国籍や文化的背景が異なっていても“その土地らしさ”を追求、表現ができるということを教えてくれる。

 

尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」
歳月をかけて街に馴染でいく

旅行者にとって、宿の食事も楽しみのひとつ。LOGのダイニングで供されるメニューは、料理家の細川亜衣さんが監修している。地元食材を使った季節感あふれる料理は、心と体がリセットされる心地良い美味しさで、旅の目的と言っていいほど。予約時に伝えれば、ベジタリアンやヴィーガンにも可能な限り応えてくれるというのが嬉しいポイントだ。

 

宿泊客に供される食事は、スタッフが地域の畑や港を訪れ、今が旬の食材を取り入れてメニューを組み立てており、季節ごとに毎年メニューも変わる。新鮮な野菜と果物をふんだんに用いた料理は、季節感に溢れ、五感を刺激。光が差し込むダイニングルームには凛とした心地良い空気が流れ、料理のスパイスになっている。地元の尾道造酢と組んでオリジナルの調味料を生み出すなど、新たなものづくりにも取り組んでいる。

 

尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」
尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」

「LOGとは『Lantern Onomichi Garden』の頭文字から名付けました。ゆっくり時間をかけて尾道の山側にランタンのようなあかりをともしていきたいとのう思いが込められています。素敵な物語が生まれる場所として尾道の景色の一部となり、街になじんでいけるよう取り組んでいきますす」

 

尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」

尾道という土地が持つ個性がLOGという唯一無二の空間とあいまって、そこを訪れた人の気持ちに小さな明かりを灯す。尾道の魅力を再構築したLOGの取り組みは、街と建物がともに年を重ねていく豊かさを教えてくれる。

 

尾道にあかりをともす文化発信拠点「LOG」

 

 

 

LOG

住所:広島県尾道市東土堂町11-12

電話:0848-24-6669

HP:https://l-og.jp/

Instagram:@log_onomichi

 

 

 

文・本間裕子

編集者・ライター。大学卒業後、(株)INFASパブリケーションズに入社。ファッション週刊紙「WWD JAPAN」、コレクションマガジン「FASHION NEWS」の編集を経て、美容週刊誌「WWD BEAUTY」に創刊時より携わる。退社後、フリーランスの編集・ライターとして、化粧品、食料品メーカーをメインクライアントに、ブランディング、広告制作等に携わる。甘いものは得意ではないが、カカオは大好きでコーヒー、赤ワイン、ラムに合わせて日常的に食している。料理家など食に携わる人たちとの交流が深い。

Instagram:@uozazaza