うだるような暑さに目が眩む日々の、少し前。この度最終回となるチョコレート散歩に出かけていった。

 

写真・チダコウイチ、カデカワミズキ

文・カデカワミズキ

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

パスカル・ル・ガック。

 

チョコレート界では言わずと知れたトップショコラティエの一人、パスカル・ル・ガック氏がその名を冠したブランドである。世界で店舗があるのはパリ郊外のサン=ジェルマン=アン=レーと、ここ東京だけだ。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

お店に入ると、まずはチョコレート製のトラが我々を迎えてくれる。こちらのお店で働かれている、松田みどりさんというチョコレート細工の得意なショコラティエールさんが作られているものだ。チョコレート細工は時々変えられているようだ。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

パスカル・ル・ガック東京で有名なのは、見た目にも味にも華やかなパフェ。しかし、チョコレート散歩では「今日、このお店に行ってみようかな」と思い立った日に食べられるものを紹介したい。そう思って、パフェに近い作りのケーキ「フルーリーフレーズ」をセレクトした。

 

※2022年6月現在、パフェは予約制とのこと。

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

小ぶりで可愛らしくも、堂々たる佇まい。チョコレートの花びらは冠のようで、クリームは襟元を飾る大きなフリルのようだ。顔を近づけると、イチゴのいい香りがする。「お菓子のイチゴ」ではなく「果物のイチゴ」を感じさせる、良い香りだ。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

断面を切るとその構造の複雑さに驚く。小さな球形の中に、いくつもの層が重ねられている。上から、粒の食感を残したイチゴのコンポート、ライチのジュレ、イチゴのムースに包まれたアーモンド生地、ピスタチオのムース。トップにはフランボワーズ風味の生クリーム。フランボワーズとライチの組み合わせはイスパハンを思わせる。イチゴを主体に置き、脇役としてピスタチオを使う組み合わせこそ珍しくないものの、各パーツのバランスから生まれる味わいは唯一無二のもの。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

パーツごとの味わいが鮮烈なのに、全体のまとまりは柔らかく、印象は非常に繊細だ。とても完成度が高い。お店に来る方には、ぜひパフェだけでなく、こちらのケーキも味わってほしいと思った。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

カフェでケーキをいただいている間、お店にはチョコレートやお菓子の持ち帰りを頼む人々の姿が見えた。ビジネス街が近いためか、スーツ姿の方も多い。パスカル・ル・ガックのボンボンショコラは、シンプルに美味しい。種類がかなり多いが、どれを食べても、外れることがない。個性的に見えるフレーバーも、食べてみると、どこか穏やかな味わい。自分で食べるにも、人様にお渡しするにも、安心感のある美味しさだ。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

お店を出て、次の目的地へと向かう。赤坂見附駅方面に歩くこと10分ほど。目当ての店が見えた。MAMANO CHOCOLATE(ママノチョコレート)だ。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

こちらのお店では、エクアドル産のアリバカカオから作られたチョコレートのみを使用している。「アリバ」というのはカカオの品種で、フローラルな香りがしやすく風味の良さで知られる。ママノチョコレートでは、現地の生産者団体と連携してチョコレート作りを行っている。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

店内に入ると、店員さんがにこやかに接客してくれた。小さなお店なので、初めて入るときは勇気がいるかもしれないが、ここの店員さんはいつも優しいので安心してほしい。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

お店の商品は持ち帰り専用。こちらの「パレットショコラ」はおやつにおすすめの一品。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

エクアドルで作られた、カカオのピアスなんかも販売されていた。カカオマニアの方に是非つけていただきたい面白い商品だ。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

定番商品は、大粒の生チョコレート。今日はこれを自宅に持って帰ることにしよう。生チョコには、ブランデーの効いたタイプと、お酒を使用せずにダークチョコレートに牛乳を加えてミルキーに仕上げたタイプがある。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by チダコウイチ

どちらも、とても口当たりがよく、カカオの香りや味わいも感じられ、おすすめできる。自宅撮影に紛れ込んでしまったネコチャン。チョコレートは我慢してね。

 

夜になって、再び街を歩く。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by カデカワミズキ

最後に紹介したかったのは、バーなのだ。

 

アペカでも以前にインタビューした須藤シェフの作るBar専用チョコレートブランド、アトリエAirgead(アールガッド)のチョコレートを取り扱うお店、Bar和ごころ赤坂。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by カデカワミズキ

場所は赤坂見附駅を出てすぐ。アクセスはいいがビルの3階に入っているために、見つけるのがやや難しい。隠れ家のような場所だが、店内は「女性も一人で入りやすいように」と明るめの照明で作られている。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by カデカワミズキ

ずらりと並んだボトルに品揃えの良さが見て取れる。「和ごころ」という店名なだけあって、日本産のお酒も各種取り揃えている。アールガッドのチョコレートを頼むと、専用の箱に収まった色とりどりのボンボンショコラが出てきた。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by カデカワミズキ

悩んだ末、イチゴのボンボンショコラを注文。バーテンダーさんが、選んだチョコレートに合わせてピッタリのお酒を選んでくれる。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by カデカワミズキ

イチゴのボンボンショコラに合わせられたのは、マルスの岩井トラディション ワインカスクフィニッシュの炭酸割り。赤ワイン樽で一年以上追加熟成されたブレンデッドウイスキーからは、果実味が感じられる。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
お店の器は有田焼で統一されている Photo by カデカワミズキ

ボンボンショコラ単体ではイチゴの風味よりビターチョコレートの風味が勝るように感じられたが、ウイスキーを合わせると、果実味がパッと花開き、一気にイチゴの風味が口中に広がる。なんと素敵なペアリングではないか。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by カデカワミズキ

続いて頼んだのは、柚子とハーブのチョコレート。ペアリングには、和歌山県のクラフトジン、香立ーKODACHー。スギやヒノキの入ったジンは、驚くほど心地よい香りで、森林浴をしているかのような気分になる。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by カデカワミズキ

柚子とハーブのボンボンショコラは、ミルクチョコレートベース。ジンに温州みかんとレモンの皮が入っているので、その風味が合わさるとチョコレートの中の柚子が引き立ってくる。

 

チョコレート散歩その③「赤坂のチョコレートたち」
Photo by カデカワミズキ

食後には、温かい出汁が提供された。冷たいドリンクを飲んだ身体に、その温かさが北湖っり染みる。うん、今宵はいい夢が見られそうだ。

 

チョコレート散歩は今日で最後。行きたいお店は見つかっただろうか。貴方にとっての新たな出会いとなりますように。貴方がよい休日を過ごせますように。おいしいチョコレートが、貴方の心と身体を癒しますように。

 

それでは、また、どこかで。

 

 

〈関連記事〉

▶ チョコレート散歩その①「晴れた日の日本橋で」

▶ チョコレート散歩その②「新丸ビル、東京駅、銀座」

 

 

 

文・カデカワミズキ

チョコレートおたくのフリーライター。子どもの頃はチョコ嫌いだったが、ハイカカオが世に出てからはチョコ好きに。クラフトから大手まで、幅広くチョコを愛しています。現在は都内大学で哲学を専攻。「食べる」という行為を考えていきたい。

twitter:@mizuki1010uk