郷愁を誘う空気が漂う街並みで知られる広島県・尾道が、ここ数年、瀬戸内屈指の観光の街として大きな注目を集めている。その象徴ともいえるのが、2014年に誕生したサイクリストフレンドリーな複合施設「ONOMICHI U2」だ。そのコンセプト、そして尾道の魅力について同施設の井上恵理子・支配人に話を聞いた。

 

文・本間裕子

写真・チダコウイチ

サイクリストたちの魅力的な受け皿に

時が止まったかのような路地裏や急な坂道から見下ろす瀬戸内の海など、ただ身をおくだけで映画の登場人物になったかのような気分にさせてくれる街、尾道。そんな尾道が観光地として、また移住先として人気を集めている。

 

尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」

そのきっかけとなったのは、1999年に広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ全長約60kmの自動車専用道路「しまなみ海道」が開通したことから。本州と四国を結ぶこの海道は数々のメディアで紹介され、海外からも観光客を集め、アメリカCNNの世界7大サイクリングロードに選ばれるなど、「サイクリストの聖地」と呼ばれるほどまでになった。

 

そしてここ数年では、新たな名所が続々と登場し、尾道の魅力を発信している。その筆頭格が2014年にオープンした「ONOMICHI U2」だ。広島出身の建築家、谷尻誠が率いるサポーズデザインオフィスが設計を手がけ、古い海運倉庫をまるごとリノベーションした複合施設は、いまでは国内外から人々が集う人気スポットとして確固たる地位を築いている。

 

尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」

「この建物は1943年に建てられた海運倉庫でしたが、活用案の公募を経て『ONOMICHI U2』に生まれ変わりました。しまなみ海道をめざして国内外から数多くのサイクリストたちが訪れてくれるのに、その受け皿となる施設が尾道になかったことから、『HOTEL CYCLE』をメインに据えるというコンセプトになりました。そしてサイクリストや観光で訪れた方だけでなく、地元の人たちが日常的に利用できる場にしたいという想いから、衣食住のコンテンツも揃えているのが特徴ではないかと思います」と井上支配人。

 

「U2」という名称は、倉庫の名称だった「県営上屋2号」から「上屋」の「U」と「2号」の「2」を取ったもの。空間の中央を貫く動線を商店街の道に見立て、さまざまなお店が建ち並ぶ尾道の街を表現した空間構成となっている。海運倉庫のコンクリートの躯体や大きな鉄の扉はそのままに、ほっと安らげる温かなムードは、広島を愛するサポーズデザインオフィスの真骨頂といえるだろう。

 

尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」
尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」

外観は「県営上屋2号」の文字をはじめ、倉庫の佇まいをそのまま残したデザイン。海側にはテラス席があり、サイクリングや旅の途中の休憩スポットとして利用することが可能だ。道路側には、シャワールーム・トイレ・コインロッカーが設置されている。内装は古民家や造船の街にちなんだ、鉄板をはじめ、木や石など、尾道の街にある素材が使われている。

 

尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」
尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」
尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」

「HOTEL CYCLE」は、自転車と一緒にチェックインして客室内に持ち込むことができる宿泊施設。室内には自転車を吊るせるスペースや自転車のメンテナンスができる共有スペースもある。地元食材の料理を提供するレストラン「The RESTAURANT」は、宿泊客の朝食会場も兼ねている。他にもベーカリーやカフェ、カウンターバー、自転車ブランド、GIANTの各種自転車を揃え、レンタサイクルも行う「GIANT STORE Onomichi」などで構成。自転車の購入はもちろん、自転車やウェアのレンタルもできるので、サイクリストでなくとも自転車で尾道を観光することができるのが嬉しい。

 

尾道らしさを日々追求
尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」

「JR尾道駅の東側には観光スポットや商店街があるのに対し、西側は閑散としていたため、『ONOMICHI U2』が東と西を繋いで尾道の街全体を活性化していくという役割も担っています。私も尾道出身なのですが、『ONOMICHI U2』が誕生したことによって人の流れが変わったことを実感していますね。目に入る風景がすべて絵になる街なので、早朝や夕方に海沿いのデッキを歩くたびにここで働けていることの喜びを感じています」

 

尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」

「『ONOMICHI U2』では、常に“尾道らしさ”とは何かを考え、大切にしていきたいと思っています。ショップで取り扱うものもすべて自分たちで考えており、有機栽培の野菜や尾道さつき作業所のチョコレートなど、地場産品を数多く取り扱っているのも、そういった想いから。街を活性化させ、地元の方にも改めて尾道の魅力を感じていただけるような場に育てていきたいですね」

 

尾道らしさに出会える複合施設「ONOMICHI U2」

 

 

 

ONOMICHI U2

住所 広島県尾道市西御所町5-11JR尾道駅より徒歩5分)

電話 0848-21-0550

HP : https://onomichi-u2.com

Instagram : @onomichi_u2

 

 

 

文・本間裕子

編集者・ライター。大学卒業後、(株)INFASパブリケーションズに入社。ファッション週刊紙「WWD JAPAN」、コレクションマガジン「FASHION NEWS」の編集を経て、美容週刊誌「WWD BEAUTY」に創刊時より携わる。退社後、フリーランスの編集・ライターとして、化粧品、食料品メーカーをメインクライアントに、ブランディング、広告制作等に携わる。甘いものは得意ではないが、カカオは大好きでコーヒー、赤ワイン、ラムに合わせて日常的に食している。料理家など食に携わる人たちとの交流が深い。

Instagram:@uozazaza