唯一無二のチョコレートを生み出している「USHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)」。そのインスピレーションソースとなっているのは、間違いなく“人”だ。代表、中村真也さん案内のもと、尾道で活動する魅力的な作り手を訪ねた。

 

文・本間裕子

写真・チダコウイチ

 

レモンは皮が命〜れもんだにのうえん〜
USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

しまなみ海道の真ん中あたりに位置する生口島は、島の約半分が急傾斜になっているため、日当たりがよく、瀬戸内海でも指折りの柑橘類の産地として知られる。特にレモンは国内生産量の約4分の1を占め、日本一を誇るほど。多くのレモン畑は瀬戸田地区にあり、ここで1927年に国内初のレモン栽培が開始されたことから、国産レモン発祥の地とも呼ばれている。

 

そんな生口島の一角に、自然栽培のレモンをつくり続ける農家「れもんだにのうえん」はある。

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

今回ご案内いただいたのは、「れもんだにのうえん」の三代目となる永井英夫さん。お祖父様の代で築かれた農園がお父様の代に引き継がれ、さらには今、お姉さんとお弟さんのお二人が中心となり、愛情たっぷりの自然農法で無農薬レモンを作り続けている。

 

40年前に250本の苗木から始まり、現在は350本ほどにまで拡大。当初肥料となる鶏糞を使ってい他ものの、鶏の摂取する抗生物質が気にかかり、無肥料に。農薬・肥料不使用で数カ月にわたり出荷している。

 

「生物多様性栽培を実践する永井さんは、虫一匹殺さない。蜘蛛の巣も壊さないように畑を歩く姿を見て、コラボレーションをお願いしました」と中村さん。ウシオ チョコラトルでは、「れもんだにのうえん」で育てられた自然農法のレモンを、柑橘類の花の純粋蜂蜜に漬け込み天日干ししたものを練り込んだチョコレート「自然栽培レモンチョコレート」を発売。柑橘とチョコレートの最高なフュージョン、そしてクセになるグミのような食感にファンも多い。

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

「自然栽培のレモンは、皮まで美味しく食べられるのが魅力だと思っています。厚めに感じる皮の白い部分も、そのまま美味しく食べられるので捨てるところがないんです。かといって他の農法を否定したくは無いので、“レモンは皮が命”という標語を通じることで、自然栽培のレモンの魅力を伝えられたらと思っています」と永井さん。

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

「れもんだにのうえん」で育てられたレモンの皮は苦味が少なく、レモンが持っている旨味が凝縮。ただ酸っぱいだけではない、奥深いレモンの味わいを教えてくれる。

広島県の在来品種づくりを〜みなと組〜

尾道市の向島で、広島県の在来品種を中心に夏野菜とハーブティーづくりに挑戦しているのが「みなと組」だ。

 

みなと組の発起人となる加藤靖崇さんは、高校卒業後、台湾の大学で農業経済学を専攻したが、学ぶほどに机上ではなく実際に畑で農家として生きていきたかったことに気づいたのだという。

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

「生まれ育った尾道でやりたいという思いはあったものの、何を栽培したいのかは決まっていませんでした。全国の農家を訪ねて泊まり込みで体験させていただいたり、現場の農家さんから話を聞いて何を栽培すべきか考えていました」と加藤さん。

 

そんな中、加藤さんにとっての大きな転機が訪れる。「向島で30年ほど前にアーモンドを育てていた農家さんがいたと聞いたんです。世界のアーモンド生産量の8割以上をアメリカが占めていて、その他にはヨーロッパの国々、特にイタリアのシチリア地方などが産地として有名。実は瀬戸内地方は地中海性気候とも言われ、アーモンド栽培には最適なんです」

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

三年前にアーモンドの苗木60本を定植。アーモンドは収穫まで5年かかるので、来るべき収穫の日のためにアーモンドを育てながら在来野菜を中心とした夏野菜作りに取り組んでいる。最近では因島でレモングラスやホーリーバジル、トゥルシーなどのハーブ栽培も始め、「みんなとハーブティー」と銘打ったオリジナルのハーブティーも製品化している。そんな加藤さんにとって、中村さんは頼れる兄貴的存在。一緒に自然農法を実践する農家を一緒に訪ねたり、情報を交換している。

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

「まだ20代前半の若い彼らが農業に興味を持ち、発信してくれていることが嬉しいし心強い。みなと組のアーモンドでチョコレートを作るのが今から楽しみなんです」(中村さん)

廃材で染めた帆布バッグ〜立花テキスタイル研究所〜

かつて尾道は帆布生産で栄えていた。しかし、化学繊維の台頭にともない需要が減り、最盛期には10軒程あった帆布工場も現在では一軒のみ。最後の一つ、尾道帆布工場は向島にある。

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

尾道帆布工場は昭和9年に創業をはじめて以来、一貫して同じ製法で帆布の生産している。綿糸を縒るところから 整反にいたるまでの工程すべてを行う工場は現在では全国的にも珍しく、生産する帆布の厚さが豊富なこともこの工場の特長と言える。そんな尾道帆布工場に魅了され、移住したのが新里カオリさんだ。

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

「尾道は大学院生のときに旅行で訪れたのが初めてでした。広島市現代美術館で開催されていた展示に友人を誘って来たのですが、見終わったころに友人のお母さんから電話がかかってきて、『カオリちゃん、絶対好きだから尾道に寄った方がいいわよ。案内してくれる人も紹介するから!』と言われたんです」

 

友人のお母さんによる遠隔ナビゲートのもと、尾道に降り立った新里さん。そこで対面した女性に大学院でテキスタイルを勉強していることを伝えると、尾道帆布工場へと案内してくれたのだという。

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

「もう時が止まってしまったかのような空間に衝撃を受けました。テキスタイルの勉強のためイタリア留学を予定していたのですが、外国に行っている場合ではないなと。ちょうど帆布でバッグを作りたいという話が出始めた頃で、私は東京から通う形で染工場に注文を出したりする技術と広報を担当することになりました」

 

新里さんが企画した帆布バッグは、尾道の新しいお土産として順調な売れ行きみせ、4年目で店舗をオープンさせるほどまでに。「もう少し自分の個人的なテーマでものづくりをしたい」という思いが沸々と湧いてきた新里さんは、次なる展開を目指し、尾道に移住を決める。そして尾道帆布工場に間借りする形で、「立花テキスタイル研究所」を立ち上げた。

 

これだけものが溢れる時代にものを作り出す意味を考え、最終的にたどり着いたのが「地域で出る天然のものや地域の廃材だけで染める」ということ。「地味な色ばかりで、なんでもっときれいな色を出さないのかって思われる方もいるかもしれなませんが一過性のトレンドではなく産業として地域に根付かせたいと思っているんです」

 

USHIO CHOCOLATL代表・中村真也さんと巡る 尾道の魅力的な作り手たち

廃材で染色するというコンセプトは時代の流れとマッチし、今や大企業からの相談が絶えない。また、これからの教育の在り方で中村さんと意気投合し、ウシオ チョコラトルに新たに生まれるスペースでワークショップなどを行なっていく予定だ。

 

 

れもんだに のうえん

広島県尾道市瀬戸田町垂水1739ー2

HP:https://remondaninouen.jimdofree.com

Instagram:@remondaninouen

 

みなと組

HP:https://minatogumi.myshopify.com

Instagram:@minatogumi

 

立花テキスタイル研究所

HP:https://tachitex.com

Instagram:@tachibanatex

 

 

 

 

文・本間裕子

編集者・ライター。大学卒業後、(株)INFASパブリケーションズに入社。ファッション週刊紙「WWD JAPAN」、コレクションマガジン「FASHION NEWS」の編集を経て、美容週刊誌「WWD BEAUTY」に創刊時より携わる。退社後、フリーランスの編集・ライターとして、化粧品、食料品メーカーをメインクライアントに、ブランディング、広告制作等に携わる。甘いものは得意ではないが、カカオは大好きでコーヒー、赤ワイン、ラムに合わせて日常的に食している。料理家など食に携わる人たちとの交流が深い。

Instagram:@uozazaza