高知県を取材して回ったのは昨年の夏の終わりだった。

台風のメッカらしく、降り立ったその日からなんだか暗雲立ち込める天気。

雲行きは怪しいけれど、じっとりとした潮っぽさをはらんだ空気はまさに高知。緊急事態宣言が長く続く東京を抜け出したが、高知も“まんぼう”中。それでもいくらか解放された気分。空はどんよりしているけれど、これから始まるチョコレート取材と銘打った飽食の旅に、心は踊る。

 

文・西村依莉

写真・チダコウイチ

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

そもそも、なぜ高知だったのか?

筆者は高知県土佐清水市出身で、地元のことを調べていると、昔からやっている喫茶店が今ビーントゥーバーチョコレートを作って売り出しているという記事を見た。

高知県ってそんな需要があるの? と興味を持ち、調べていくうちに、市内にもビーントゥーバーやショコラティエの移住者を見つけたり、ローチョコレートを製作している人を紹介してもらったりと、高知チョコレート旅の機運が高まったのだった。

 

同行するチダさんは初めての高知。これは絶対に「また来たい」と思わせる旅にしなければ……! 個人的な高知おすすめスポットを練り込みつつ、取材先のアポイントを入れて大まかな旅程を組んだ。個人的なおすすめスポットとはつまり、個人的に行きたい場所である。オーソドックスな観光スポットをお探しの場合は、『るるぶ』や『ことりっぷ』などを見てください。

 

まず最初に向かったのは「日本サンゴセンター」。高知県は日本のサンゴ漁の発祥地であり、国内で産出される宝石サンゴの原木の入札は全て高知県で行なわれているとかで、サンゴ店やサンゴ漁師がやたら多い。近年、コロナ禍以前は真っ赤なサンゴを買いに中国人観光客がたくさん来ていたそうだ。そんなわけで、月の名所・桂浜の近く、高知市種崎にサンゴに特化した観光施設がある。この建物がなかなかかっこよく、どうしてもこの目で見たかった。隣に鰹のタタキが食べられるドライブイン的な場所があることをいいことに、空港からそのまま誘導。だがしかし、定休日で「日本サンゴセンター」には入れず、モンドな建物の外観と入り口のかっこいいロゴを写真に収めたのみで終わったのだった。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

すぐ隣にある「くじらのいっぷく」もちょっと見どころのある建物。船を模した外観から「鰹のタタキを食べるぞ!」という気持ちを高めてくれる。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
土佐丼なるものを食べた。藁焼の鰹をご飯にのせたものだけど、そんなの高知に住んでていた頃、食べたことなかった。観光地の食事とはそういうものである(鰹は美味しい)。

食事の後は「CHOCOZEYO」で取材。チョコレートの取材で本格的なマッスル話が聞けるとは思わず、楽しかったです。詳しくは記事をどうぞ。

取材を終えたら街を散策。帯屋町とその周辺の歓楽街を歩きながら、懐かしい南国と飲み屋の匂いを楽しんだ。

 

2日目、朝から向かったのは沢田マンション。「日本の九龍城」と呼ばれるアウトサイダー名建築だ。建築関係の仕事をしていたわけでもなんでもない、全くの素人が独自に建てた鉄筋コンクリート造の建物で、増築を繰り返したいびつな外観は要塞のようだ、と例えられたりするが、実際は白い壁に緑豊かなバルコニー、密集感はあるけど解放的な雰囲気が地中海沿いの建物のように思えるのは愛県心からの贔屓目だろうか。マンション内は各部屋ゆるやかにつながっていて、入居者のコミュニティができあがっているという。外部の人間でも見学案内をしてくれたりして、何かとオープン。屋上には庭園(豚も飼っている模様)、地下には駐車場があり、本当に素人が作り上げたのか、と感動する。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

沢田マンション

高知県高知市薊野北町1丁目10−3

https://sawadamansion.net

 

 

美味しいコーヒーが飲みたくて立ち寄った「カワクボコーヒー」。

築50年の古民家をDIYでリノベーションしたコーヒースタンド。店の名前は店主の苗字ではなく、豆をブレンドしている方から名前をもらったんだとか。基本的に壁に向かって座るスタイルで、コロナ時代にぴったりだと思う。2階では「コップ堂」と称して古物のガラス食器を販売していた。カレーやデザート類も美味しそう。帰省した時は食事もしたい。

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

カワクボコーヒー

高知県高知市大川筋1丁目7−31

https://www.instagram.com/kawakubocoffee/

 

 

移動まで少し時間があったので、カワクボコーヒーで教えてもらった天然素材の雑貨や家具、洋服を扱うセレクトショップ「海花 布土木(はな ふどき)」へ。

 

ギャラリーショップとしても機能していて、この時は高知県内で作陶している陶芸家の長野大輔さんの作品展の会期中。灰釉や錆釉の器がずらりと並び、渋い雰囲気だったが、開催するイベントごとに店の雰囲気が変わるそう。この時はたまたま県内在住の作家の展示だったけれど、オーナーのアンテナが反応した国内外のクラフトを展示販売している。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

海花 布土木(はな ふどき)

高知県高知市はりまや町2-8-8 あんどうビル2F

https://www.hanafudoki.jp

https://www.instagram.com/hanafudoki/

 

 

その後は取材のために四万十町窪川へ移動。取材前に宿「美馬旅館」へチェックイン。窪川は遍路旅の宿泊ポイントだが、台風の平日だったからか、シルバーウィーク前だったからか、この日の客は我々だけ。明治24年創業の由緒正しき旅館を、贅沢にも貸切状態で堪能させてもらった。

 

大部屋、中部屋、小部屋どれも一名料金が変わらないとあって、大部屋に一人ずつ。なんて贅沢! 経年が味わい深い木の建具のかっこよさや、中庭の植栽が楽しめるコの字造りの純和風建築、赤いカーペット敷の廊下。どこを取っても見応え抜群だけど、個人的に洗面所とトイレがかわいらしくてツボだった。昭和50年代ごろに一リフォームしたんじゃないかな?という感じだが、建物の雰囲気からかけ離れたリフォームではないのに清潔感があって、ただ古いだけでなく現役で愛されている古い旅館という感じがしてとてもよかった。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
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夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

美馬旅館

高知県高岡郡四万十町本町3-4

https://www.mimaryokan.jp/honkan.html

 

 

脱法ショコラのサトコさんとの待ち合わせは、蔦が絡まる老舗喫茶店の「淳」。1964年創業の喫茶通には知られた店だ。窪川は古くから旅の中継地とあって、遠くから来た客によるメモリアルノートや手紙を入れたファイルがあり、古いポスターやカメラが趣味だった先代が撮った写真が壁いっぱいに飾ってある。外観内観共にその雰囲気に圧倒されるが、全国からコーヒー好きが訪れるという自家焙煎のコーヒーとサトコさんおすすめのからしの効いたサンドイッチが印象に残った。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

純喫茶淳

高知県高岡郡四万十町茂串町6-6

 

 

取材の後はサトコさんによる地元案内。「純喫茶淳」からほど近くにある「岩本寺」は四国八十八ヶ所霊場三十七番目の札所で、本堂の天井にはめ込んである「板絵」でも知られる。高知県内外のプロ、アマ約400人が575枚の板絵を描いているのだが、仏教的モチーフだけでなく、中にはマリリン・モンローの絵もあって、なんだか自由でとても大らかな雰囲気。地元の人に親しみを持って愛されているのが伝わってくる。お寺でもあるけど、アートを身近に楽しめる場所でもある。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

岩本寺

高知県高岡郡四万十町茂串町3−13

https://88shikokuhenro.jp/37iwamotoji/

 

 

晩御飯もサトコさんのアテンド。地元民の胃袋を支えて50年以上という鉄板焼の店「満州軒」。窪川は「四万十ポーク」という美味しい豚肉の産地で、ここでは新鮮な四万十ポークを楽しめる。サトコさんの話の続きを聞きながら豚肉と新鮮なホルモンの盛り合わせに舌鼓を打つ。「すごい量!」と驚いたが、あっという間に食べ切ってしまった。鉄板焼きの店だが実は「ジャン麺」が名物と聞いたので、次に来た時は絶対に食べなくては。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

満州軒

高知県高岡郡四万十町古市町1−19

 

 

3日目は移動と取材で1日が過ぎて行った。横長の高知県は移動時間が長い。台風とバッティングしたこともあり、景色も今ひとつ楽しめず、取材の他はひたすら車を走らせている1日だった。

 

4日目は台風一過で快晴。前日のうちに四国最南端の町・土佐清水市へ移動していた。筆者はこの小さな町が地元なので、4年ぶりの帰省を果たし、チダさんとは一旦解散。チダさんが泊まったビジネスホテルの部屋は港に面していて、ちょっといい眺めだったそう。ここからはチダさんの土佐清水観光日記だ。起きてから朝食を食べる店を探しがてら、小さな町を散策。途中、見つけた喫茶店がこの日の取材先と知らずに入り、ホットサンドのモーニングをオーダーした。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

待ち合わせまでまだまだ時間があったので、散策の続き。しかしあっという間に歩き終えて、車で10分ほどの場所にある「ジョン万次郎記念館」へ行ってみる。唯一の土佐清水市出身の歴史上の人物なので、やたらジョンマン推しの町だ。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

筆者はランチタイムから合流し、昼御飯は地元民から長年愛される町中華「北京」へ。ここに来たら、注文は天津飯一択だ。ぷりぷりの海老に白い餡が特徴の土佐清水民のソウルフード。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

北京

高知県土佐清水市寿町5−16

 

 

取材後は土佐清水が誇るスペースエイジ名建築「足摺海底館」へ。土佐清水市の竜串エリアは、近年スノーピークのキャンプ場に水族館「SATOUMI」が続々オープンしてちょっと話題の観光エリアになっているようだが、やっぱり一番素敵なのは海の底を室内から眺められる「海底館」と、その近くにある60年代の名建築「海のギャラリー」だと思う。残念ながら取材後に訪れたため、閉館時間過ぎてしまい、中には入れず。だけど外観だけでも、わざわざこの最果ての町に見に来る価値は大アリです!

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
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夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

足摺海底館

高知県土佐清水市三崎4032

http://www.a-sea.net

 

海のギャラリー

〒787-0452 土佐清水市竜串23-8

https://www.shimizu-kankou.com/spot/uminogallery/

 

 

ここからは翌日、土佐清水で休暇を満喫したチダさんの写真。

港に浮かぶ島にある「鹿島神社」、生い茂る植物の種類が亜熱帯状態の足摺岬、四国八十八ヶ所霊場三十八番札所「金剛福寺」、遠浅の海岸が美しい「大岐の浜」。

そして隣町の四万十市へ移動して、四万十川の天然鰻。

 

夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
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夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜
夏の終わりの南国チョコレート紀行〜高知市から四国最南端へ〜

高知の旅を楽しんでくれた様子が伺えてとても嬉しい。この取材を行ったのは、昨年の9月。台風に直撃はしたものの、晴れた日の高知はまだ真夏だった。あれから8ヶ月たったが、きっと高知は再びもう夏だ。日差しは痛いくらいに強いけれど、バカンス気分で旅をするにはとてもいいところだと思う。この旅の記録が、誰かが高知へ行くきっかけになると嬉しい。

 

ちなみに、当初の密かな目標だった「チダさんに『また来たい』と思わせる」ことについてどうだったのかというと。なんと年末、チダさんは高知県を再訪してくれていた。それもはるばる土佐清水まで!

 

チダさんにとって「また会いたい」と思う素敵な出会いがあり、「また来たい」と思う場所がたくさんあった旅だったということだと受け止めてる。

 

 

 

 

文 : 西村依莉

編集者・ライター。1960〜70年代を中心とした昭和期のカルチャーと猫やファッション、ライフスタイルをテーマに書籍や雑誌、WEBで活動中。近刊に『スペースエイジ・インテリア』(グラフィック社)、『桂浜水族館公式BOOK ハマスイのゆかいないきもの』(実業之日本社)など。

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