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カカオの本の連鎖 vol.1『チョコレートパン』長新太

 あなたは長新太を知っていますか?

世のなかには素敵な絵本がたくさんありますが、長新太の描く世界はとことん不条理でナンセンス。なのに、とぼけた温かみがあって、子供だけでなく大人をも魅了する引力に充ちています。

 1927年生まれの彼は、映画館の看板屋や漫画家、イラストレーターなど色んな仕事をひらひら横滑りしていきながら、最後は絵本や児童文学の世界に不時着した人。1959年に絵を描いた『おしゃべりなたまごやき』(作:寺村輝夫)以来、『ごろごろにゃーん』、『キャベツくん』、『みみずのオッサン』など、ユニークな作品を生み出し続けました。

 そんな長新太による「カカオ本」が『チョコレートパン』という1冊。

荒野にひろがるチョコレートの池めがけ、まあるいパンたちがトコトコ行進してきて、ぽちゃん。浸かった彼らは美味しそうなチョコレートパンになって、また荒野に帰っていくのですが、なんだか周りの者たちもその池に入りたくてウズウズしてくるという物語。

 オレンジ色の大地に茶色い池、黄やピンクの山々など独特の色彩と、淡々と不可思議なことが起こる長新太ワールドは、この本でも健在です。なかでも、誰もチョコレートの池に入っていない「しーん」とした見開きページの美しさは、彼でないと描けない間合い。あまーい絵本の話なのにぴりりとします。実は甘いだけじゃないカカオの魅力みたいなページですね。

 

カカオの本の連鎖 vol.1『チョコレートパン』長新太
カカオの本の連鎖 vol.1『チョコレートパン』長新太