APeCAでのカカオ料理レシピの連載でお馴染みの薬膳料理研究家ヤマグチヒロさんと、コラムにも参加する東京農業大学醸造環境科学研究室から大西章博先生を招き、スタートした「カカオと発酵の未来」を楽しく学ぶ企画。最終回となる今回は、昨年春に仕込んだ「カカオ味噌」を味わう、実食編だ。

 

文・本間裕子
写真・チダコウイチ
カカオ味噌は
スパイスを引き立てる

「カカオと発酵の未来」について学ぶシリーズ企画。最終回となる今回は、昨年春に仕込んだ「カカオ味噌」を味わう実食編だ。料理を担当するのは薬膳料理研究家ヤマグチヒロさん。

 

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

「味噌はヴィーガンの方にも提供できるので、カレーの味が締まらない時に隠し味に加えたりと普段からよく使う調味料の一つです。とはいえカカオ味噌作りも、カカオ味噌を用いたレシピを考えるのも初めての経験。大豆よりもカカオは油分が多いため上手く発酵するものなのか不安もありましたが、大西先生のアドバイスのおかげで想像以上に美味しく出来上がって、正直驚きました。ハスク(カカオの皮)あり、なしの2種類の味噌を仕込みましたが、ハスクありの方は塩味が強くて発酵感があるものの、油が強い感じ。さらに発酵を進めると違ってくるかもしれませんが、10カ月程度の時点では、料理にはハスクなしの方が使いやすかったです」とヤマグチさんは笑顔をみせる。

 

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

カカオ味噌に合う料理を探す中で、ヤマグチさんはスパイス料理に合うことに気づいたという。「お味噌汁だったり、味噌の味をストレートに楽しむような料理には、ほんのり香るカカオが気になったのですが、中華やエスニック料理への相性は抜群。カカオ味噌が旨味をプラスしながら、スパイスを引き立てるような働きをしてくれるんです」

 

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

思考錯誤しながらも、ヤマグチさんが考案してくれたのは、「スパイスを引き立てる」というカカオ味噌の特性を生かした3つのメニュー、「一口ローストポーク オレンジカカオソース」「ミートカカオパイ 赤ワインカカオソース」「ココナッツシュリンプカカオスープ」だ。

 

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

ヤマグチさんの説明を聞きながら、大西章博先生、桂川桃子さんもお手伝い。カカオの固い殻を剥き、自分たちの一から仕込んだカカオ味噌が美しい料理へと変化していくさまは喜びもひとしお。

 

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

ヤマグチさんがお皿に盛り付け、待ちにまった実食タイムだ。

 

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

 

【一皿目:一口ローストポーク オレンジカカオソース、カカオスパイスポテトサラダ添え】

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

「オランジェットが大好きなのですが、カカオはオレンジと相性がいいということからアイデアを得て、ローストポークによくあわせるオレンジソースにカカオを加えて見ました。塊肉にもにカカオ味噌をなじまることで、ソースとより一体感のある味わいを楽しむことができると思います。付け合わせのポテトサラダは、材料がジャガイモ、カカオ味噌とキャラウェイと塩、オリーブオイルといたってシンプル。加熱していない分、カカオ味噌のカカオっぽさが一番感じられるかと思います。ワインのアテにもよさそう」(ヤマグチさん)

 

 

【二皿目:ミートカカオパイ 赤ワインカカオソース】

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

「普段からミートパイを作る際にカカオ、カカオニブを使うことがあるのでカカオ味噌で試してみたのですが、スパイスをいい塩梅で引き立ててくれるんです。複数のスパイスに味わいを上手にまとめてくれる感じがします。繋ぎ役だけではなく、やはり発酵食品らしく旨味もしっかりプラスしてくれるところもカカオ味噌の魅力ですね。ソースの味わいに奥行きが生まれました」(ヤマグチさん)

 

 

【三皿目ココナッツシュリンプカカオスープ】

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

「カカオ味噌がスパイスを引き立ててくれるという発見から、アジアっぽいスープには絶対合うと思いましたが、予想通り。カカオ味噌の味わいが加わることでエスニック料理も日本人の舌になじみやすくなると思います」(ヤマグチさん)

 

カカオ味噌は
異国料理との垣根をなくす調味料
カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

「まずお料理自体が美味しいことに感動しました。スーパーフードとして注目を集めるカカオですが、カカオ豆の中にあるタンパク質が麹が加わることで、栄養価も高まって味わいも深くなっているので、健康食品としてのさらなる可能性も感じます。そして何よりカカオ味噌がスパイス料理、異国の料理にあう鍵になるという貴重な気づきをもたらしてくれたことにも感謝です。日本独自の食文化である味噌が、カカオと結びつくことでより広い世界と繋がれるようになる。まさに世界中で愛されるカカオの個性そのものが、発酵を経て色濃くあらわれたのではないかと思います」(大西先生)

 

カカオと発酵の未来 ヤマグチヒロ × 大西章博 「手作りカカオ味噌を味わう」実食編

「麹とカカオだけだとこんなフルーティな味噌に仕上がることに驚きでした。付け合わせのカカオ味噌スパイスポテトサラダはほんのりカカオ感がるのですが、煮込み料理では味がなじむのか、それが皆無。加熱するか否かで、カカオ味噌の存在感、味わいが変化するところが面白いと思いました。カカオは多様性を備えた、懐の深い素材であることを改めて知ることができました」(桂川さん)

 

 参加者の感想を聞いて、ホッとした様子のヤマグチさん。みんなでカカオ味噌を仕込んだあと、実はひよこ豆とカカオを合わせた味噌も作ってみものの、味噌感が強まってしまって、100%カカオ味噌のような個性は出なかったのだという。

 

「カカオやカカオ二ブをよりも、カカオ味噌は料理に使いやすいと思いますし、旨味や香りをプラスし、異国料理のアクセントにもなる。新しい調味料としての可能性を感じました。カカオの殻を剥く作業は大変なので試す方は少ないかもしれませんが(笑)、ぜひ楽しんでもらいたいどなたか商品化してくれたら嬉しいですね」とヤマグチさん。

味噌にカカオを用いる使うことで、それぞれの持つ可能性を高める、カカオと発酵の関係性。世界のスタンダードな調味料になり得る可能性を秘めたカカオ味噌は、カカオと発酵の未来を考える大きな手がかりになりそうだ。

 

 

 

レシピ:一口ローストポーク オレンジカカオ味噌ソース(2人分) 

 

ローストポーク 

【材料】

·豚肩ロース(塊肉)100g

·カカオ味噌 10g

·オレガノ 2

·塩 適量 

 

【作り方】

1.豚肩ロースに塩を振り、キッチンペーパーを巻いて30分置いて、お肉の臭みをとりる。

2.豚肩ロースの余分な水分を拭き取ったら、カカオ味噌を満遍なく塗る。 

3.フライパンで【2】の肉を両面しっかり焼き目をつける。

4.120度のオーブンで60分火を入れ、オーブンから取り出したらアルミホイルを巻いて、15分程度落ち着かせる。 

5.お肉が乾くのを防ぐため、提供する直前に好みの大きさに切り、器に盛る。

 

オレンジカカオ白ワインソース(2人分) 

【材料】

·白ワイン 30g 

·カカオ味噌 8g 

·蜂蜜 12g 

·オレンジ果肉 4g 

· 1g 

 

【作り方】

1.オレンジ果肉は小さくカットしておく。

2.ローストポークを焼いたフライパンをそのまま使う。豚の脂が残っているフライパンを 熱し、白ワインを入れてアルコールを飛ばします。 

3.2】にカカオ味噌、蜂蜜、塩、オレンジ果肉を入れて5分ほど煮詰めたら完成。 

 

レシピ:ミートカカオパイ 赤ワインカカオソース(2人分)

 

ミートカカオ味噌パイ

【材料】

·冷凍パイシート(150g 1 

·合い挽き挽肉 140g 

·セロリ 16g 

·マッシュルーム 15g 

·玉ねぎ 40g

·ニンニク 4g

 ·ディル 1g

·カカオ味噌 16g 

·蜂蜜 8g 

·みりん 12g 

·ホールクミン 2g 

·チリパウダー 0.2g 

·塩 適量 

·オリーブオイル 大さじ

·水溶き卵黄 卵1個分 

 

【作り方】

1.まずは、タネ作りから。 ニンニク、玉ねぎ、マッシュルーム、セロリをみじん切りにして別々のお皿に置いておく。

2.フライパンにオリーブオイルを敷き、よく熱してからニンニクを入れて香りを出す。

3.玉ねぎ、マッシュルーム、セロリの順に入れしんなりするまで炒める。

4.合い挽き肉に少し塩を入れて混ぜ、【3】のフライパンに入れよく炒める。 

5.全体的に火が通ってきたら、ディル以外の調味料、スパイスを全て入れてしっかりと混ぜ炒め る。 

6.火を止めて、ディルを入れて混ぜたら、タネを別の器に入れ少し寝かせて余分な熱を取る。

7.タネを寝かせている間にパイシートを切り、めん棒で伸ばす。一般的なパイシート1枚から16枚、8個が目安。 

8.カットしたパイシートの全ての縁に水溶き卵黄を塗り、真ん中にタネをのせ、上からパイシート を被せてフォークで全ての縁を押さえて閉じる。

9.パイの表面に水溶き卵黄を塗る。 

10.180度に熱したオーブンで5~8分焼いたら出来上がり。 

 

赤ワインカカオ味噌ソース 

【材料】

·赤ワイン 30g 

·ニンニク 1g 

·カカオ味噌 12g 

·蜂蜜 7g 

·カルダモンパウダー 0.2g 

 

【作り方】

1.タネを作った脂の残るフライパンに赤ワインを入れて火をつけ、アルコールを飛ばす。 

2.ニンニク、カカオ味噌、蜂蜜、カルダモンを入れて5分ほど煮詰めて完成。 

 

 

レシピ:ココナッツシュリンプカカオ味噌スープ(2人分) 

 

【材料】

·有頭えび 2 

·玉ねぎ 20g 

·マッシュルーム 5g 

·セロリ 10g 

·ニンニク 1g 

·ココナッツミルク 30g 

·カカオ味噌 15g 

·オリーブオイル 大さじ

·日本酒 40g 

· 100g 

·塩 適量 

·ディル 適量 

 

【作り方】

1.有頭えびの頭と殻を取り、身とわけておく。

2.玉ねぎ、マッシュルーム、セロリ、ニンニクはスライスしておく。 

3.鍋にオリーブオイルを入れ、有頭えびの頭と殻の部分をしっかり炒める。

4.3】の鍋に日本酒を入れてぐつぐつ沸騰させる。 

5.4】の鍋を一度ザルで濾して、有頭えびの頭と殻を取り除く。

6.5】の漉したスープの入った鍋に、2の材料全てと水、ココナッツミルク入れて15分ほど煮る。 

7.6】の鍋に調味料を入れて馴染ませる。

8.ディルを散らして完成。 

 

レシピ④カカオ味噌スパイスポテトサラダ (つけ合わせ)

 

【材料】

·ジャガイモ 1

·オリーブオイル 大さじ

·カカオ味噌 5g 

·キャラウェイホール 0.5g 

·塩 適量 

 

【作り方】

1.ジャガイモを水から弱火で茹でる。

2.茹で上がったジャガイモの皮を剥き、ボウルに入れて潰す。 

3.潰しながらオリーブオイルを回しかける。

4.調味料、スパイスを入れてよく混ぜて完成。ジャガイモは熱いうちに混ぜないと固まってしまうので注意。

 

 

 

PROFILE

 

 

ヤマグチヒロ / HIRO YAMAGUCHI(薬膳料理研究家)

合同会社Food Officeハチドリ代表。10代の時に、友人の栄養問題による体調不良をきっかけに食の知識に関心をもち現代社会がもたらす様々な体調不良の原因となる『食の現実』を知る。それ以降、より人間が健康に幸せになるための『薬膳』という考え方による食生活の提案と研究活動を行なっている。現在は、企業·飲食店へのレシピ提供、商品開発、ケータリング提供、出張シェフ、料理動画製作、家庭向け食育講義、農家支援イベント、震災支援イベント、地方創生イベント、オリジナルブランドの薬膳温活ヴィーガンカレーの卸販売業などを手掛ける。中国薬膳研究会認定国際薬膳調理師免許取得。

https://yamaguchhr.base.shop

 

 

大西章博 / AKIHIRO OHNISHI(東京農業大学大学院農学研究科醸造学専攻准教授)

東京農業大学農学研究科生物環境調節学専攻博士後期課程修了。微生物研究や醸造発酵、ファージセラピーを専門としながら、カカオ豆に対するロマンを掲げ、カカオ豆の発酵からカカオ外交まで、カカオでの国防を目標としながら日々研究を重ねている。彼の研究は広域に微生物、菌の活躍を扇動している。

http://dbs.nodai.ac.jp/html/226_ja.html

 

 

桂川桃子 / MOMOKO KATSURAGAWA画家、ライブペインター)

長きにわたり大手アパレルブランドのデザイナーとして活躍。2015年にデザイナーとして働いたTOMORROWLANDを退職。画家として独立をはたす。ライブペインターとして様々なイベントやブランドとコラボし短時間で音楽と同時に終わる巨大アートは見る人の心をひきつける。近年はオーガニックで環境に優しい塗料を使い唯一無二のアートを展開している。

Instagram:momoco12131

 

 

 

 

文・本間裕子

編集者・ライター。大学卒業後、(株)INFASパブリケーションズに入社。ファッション週刊紙「WWD JAPAN」、コレクションマガジン「FASHION NEWS」の編集を経て、美容週刊誌「WWD BEAUTY」に創刊時より携わる。退社後、フリーランスの編集・ライターとして、化粧品、食料品メーカーをメインクライアントに、ブランディング、広告制作等に携わる。甘いものは得意ではないが、カカオは大好きでコーヒー、赤ワイン、ラムに合わせて日常的に食している。料理家など食に携わる人たちとの交流が深い。

Instagram:@uozazaza