北海道・美瑛町は小麦の産地として知られる。レベルの高いパン屋が数多くある中にあって、美瑛に移り住んだ料理家のたかはしよしこさんが「滋味深い美味しさ」と絶賛するのが、「小さなパン店 リッカロッカ」だ。同店を営む、市川夫妻にパン作りのこだわりと美瑛に魅力について尋ねた。

 

文・本間裕子

写真・チダコウイチ

 

美瑛産の小麦の味わいを生かしたパンを
パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」
パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」

旭川市と富良野市の間に位置する美瑛町の、まるで絵本の一ページのような景色の中に「小さなパン店リッカロッカ」はある。

店を営むのは北海道出身の市川さんご夫婦。奥さまである直生さんは、幼い頃にペンションを営む両親と共に、この場所に引っ越してきた。幼心にも小学校の帰り道に見る夕焼けや、美瑛のすばらしい景色に日々癒されていたという。

 

パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」

子供の頃からお菓子作りが好きだった直生さんは、高校を卒業後は製菓学校に進学。「手が温かいからパン作りの方が向いているのでは」と先生からアドバイスを受け、「パンであれば地元美瑛産の小麦の魅力を伝えることができるかもしれない」と興味を持つようになったという。結婚を控えていた浩章さんが調理の勉強を始めたタイミングだったこともあり、「大好きな美瑛の魅力を伝えられるパン屋を開こう」と方向性を定め、直生さんの地元である美瑛にUターンするかたちで移住。2016年4月末にJR美馬牛駅から歩いてすぐの場所に、「小さなパン店 リッカロッカ」はオープンした。

 

地産地消で叶える体にやさしいパン

パン作りは独学。小麦粉は美瑛産のゆめちからブレンドを用い、油分や卵は加えず、シンプルな味わいのパンにこだわった。お店をオープンするまでの準備期間に出産、子育てを経験することで「美味しいだけでなく、体にもやさしいパンを目指したい」という思いがより一層強くなったという。

 

人気商品はもっちりとした食感のベーグル。「作りたてはもちろん、翌日に蒸して食べるのがおすすめ」とよしこさんも太鼓判を押す。友人が美瑛を訪ねて来た際には、朝食に振る舞うことも多いという。

 

パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」

「南富良野にある『フォーチュンベーグル』産のベーグルを食べた時、その食感、味がどれも忘れないほどの美味しさで衝撃を受けたんです。美瑛産小麦、酵母、塩、てんさい糖のシンプルな材料で、配合や発酵時間を変えながら、試作を重ね今のレシピに辿り着きました」と直生さん。少ない酵母量で時間をかけて発酵させ、塩分は最低限に抑えられている。

 

また、約25種類もあるパンの具材は、北海道産の素材にこだわっている。「リッカロッカのまわりには畑が広がっています。毎年小麦やトウモロコシ、豆などの種が蒔かれ成長する姿を見ながら過ごしています。作物を育てる農家さんのご苦労を目にしたり、お聞きしたりする機会も多く、小麦をはじめ、パンの具材となる野菜や豆も、その美味しさを損なうことなく、最大限に生かしたパンを作りたいと思っています」と浩章さん。美瑛産の豆や野菜、牛乳、有機ドライフルーツ、道産チーズなど、具材も美味しいパンは、毎日食べても安心で、すみずみまでやさしさが、食べると幸せな気持ちになれる。

 

パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」
パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」

小学生の男の子3人を育てながらの作業のため、生地作りを浩章さんが、成形、焼成、商品開発を直生さんが行う分業スタイルだ。パン屋の朝は早いもの。11時のオープンに間に合わせるため、直生さんは夜中2時に起きて作業を始める。

 

パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」

「朝早くからの作業は辛いものですが、作業をしながらふと窓の外を見ると、白々と夜が明け、雲が流れ、息を呑むような真っ赤な朝焼けや淡いピンクのグラデーションに空一面が彩られるようなことがあるんです。こんな素晴らしい風景に出会えるのは、美瑛でパン屋さんをしているからだと、日々自然の偉大さに感謝しています」。

 

たかはしよしこさん家族が美瑛に移住してくれたことも大きな喜びで、日々刺激を受けている。夏季限定で「エジプト塩」を用いたチョコシェイク、「辛エジプト塩」を用いたクリームチーズなどもラインナップし好評だ。「SSAW BIEI」目的に美瑛町を訪れた方も、数多く足を運んでくくれるという。

 

パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」

長く厳しい冬はオンライン販売に専念し、11月から5月初旬までは店舗は休業。今年は5月11日より再開する予定だ。「私たちがパンを作ることが美瑛の魅力を伝えることに繋がっていけたら嬉しいです」と直生さん。美瑛の小さなパン店は、長い冬を乗り越えてひとまわり大きくなり、今年ももうすぐ開店だ。

 

パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」
パン作りを通じ美瑛の豊かさを伝えたい 「小さなパン店 リッカロッカ」

 

 

「小さなパン店 リッカロッカ」

住所:北海道上川郡美瑛町美馬牛南1-5-50

電話:0166(73)4865

店舗営業日:水曜日から土曜日まで

営業時間:11:00〜15:00 ※パンがなくなり次第終了。

HP:https://likkalokka.seesaa.net

Instagram:@likkalokka_biei

 

 

 

文・本間裕子

編集者・ライター。大学卒業後、(株)INFASパブリケーションズに入社。ファッション週刊紙「WWD JAPAN」、コレクションマガジン「FASHION NEWS」の編集を経て、美容週刊誌「WWD BEAUTY」に創刊時より携わる。退社後、フリーランスの編集・ライターとして、化粧品、食料品メーカーをメインクライアントに、ブランディング、広告制作等に携わる。甘いものは得意ではないが、カカオは大好きでコーヒー、赤ワイン、ラムに合わせて日常的に食している。料理家など食に携わる人たちとの交流が深い。

 

インスタグラム:@uozazaza