札幌のクラフト文化にふれたくて、3人の作家さんの工房にお邪魔した。

木彫りのクマを彫る若き職人、都内で個展があればたちまち完売という2人の注目の陶芸家。それぞれのアトリエにも、個性が詰まっていた。

 

文・小泉恵里

写真・チダコウイチ

 

「遊木民」で職人が作る木彫りクマの魅力を知る
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
遊木民 代表の川口拓二さん(写真右)と息子の川口直人さん(写真左)、遊木民を営みながら木彫り職人としても活躍している

札幌市のほぼ中心部に店舗を構える遊木民は、3代続く木彫民芸品や木工雑貨を販売する店。窓を覗き込むクマと、クラフト感溢れる木彫り看板がトレードマークだ。ドアを開けると中には人気作家の木彫りクマたちが所狭しと並んでいて、札幌木彫クマの聖地と言われている。

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
遊木民の入り口には可愛い木彫りクマ
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
店内には作家さんのクマが所狭しと並んでいる

奥の工房で私たちを出迎えてくれたのは川口拓二さんと、息子の川口直人さん。若き木彫り職人として注目を集める直人さんは東京でのイベントに向けて作品製作をしながらお話ししてくれた。

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
上野でのイベントに向けて、木彫りパンダの製作に勤しむ川口直人さん

北海道の民芸といえばシャケを咥えた木彫りクマ、と誰もが知るクマの存在。昭和50年代あたりには北海道土産の定番として一世を風靡し、工業化され大量生産されていたが、その後一気に木彫り熊の人気は影を潜めていた。一時は絶滅の危機にあった木彫り熊だが、ここ最近、若い人を中心にインテリアとしても人気が出ている。都内のセレクトショップやインテリアショップに置かれることもあり、作ればすぐに売れてしまうそうだ。遊木民はもともと木工芸品の卸問屋としてスタートし、二代目である拓二さんは職人さんの作品を修理するところからスタートして木彫り職人になったという。三代目となる直人さんも、木彫りクマ大ブームという空前の木彫りクマブームに驚きながら、忙しい日々を過ごしているそうだ。

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち

昔からの木彫り職人たちの高齢化が進み、職人の数自体が少なくなっていく中で息子の直人さんも本格的に木彫り職人としての道を進み始めて数年経ったところ。

 

「職人さんたちも高齢化が進んでいて、70歳でも若い方なんです。職人さんが作っているのを見るのが好きだったので、技を学びながら木彫りクマ作りを始めました」

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
まざまな職人の作品が並ぶ店内

直人さんが目指すのは、シンプルなクマの形。

「どこまで削ぎ落としたらクマなのかな、と考えています。余計なものを省いて表現できたらいいなと思います。彫る工程を増やして足し算で彫るのではなく、絶妙なツボだけを押さえて削り取る、引き算の彫りを目指しています」

 

丸い木を手に「これはまだ木だけど、ここまで掘るとクマに見えますよね」と、木の塊と、クマの境界線を見せてくれた。北海道の木で作るクマ。引き算の美しさを追求する川口直人さんの作品を、これからも見続けていきたい。

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
直人さんの作品。たれているポーズが特徴の「ダレ熊」は作ればすぐにSOLTOUTとなる人気者
素朴なのに凛とした空気感。やさしい粉引き、山田雅子さんの器
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち

陶芸家、山田雅子さん。札幌近郊、野幌の原土を使った粉引の作品は、やわらかく味わいのある佇まいが魅力だ。褐色の土に白化粧土を施し、札幌の雪の風景を思い起こすようなその色合い、ざらりとした素朴な風合いは使う人をおおらかに包み込むやさしさがある。

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち

2016年に生まれ育ったご自宅を改装してオープンした工房とギャラリーは、大自然の美しさを眺めながら創作活動できる、センス溢れる空間。窓際に野生の鹿が訪れ、冬は真っ白な雪景色が広がるという。

 

山田さんは北海道、札幌出身。原料は生まれ育った北海道の土にこだわり、ひとつひとつ丁寧に作品を製作している。

 

「土に惚れ込んでスタートした陶芸の世界。煉瓦にも使用される粘りのない野幌の土を試行錯誤し独自にブレンドしたオリジナルの粘土で制作しています。地元の土と結ばれていて作品を作ることは幸せなことです。自然の土を使っているので季節ごとに表情も違いますし、安定していないので苦労もありますが」

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち

山田さんの作品によく見られる鎬(しのぎ)と呼ばれる表面のしま模様は、ご自身の手によって一本一本削られたもの。手に取ると軽くてあたたかで、ざらりと素朴。けれどその素朴さには野暮ったさが全くない。

 

「実用的で普段使いのもの。気軽に使っていただけるような器を作っています」

 

モダンで、凛とした空気感。気負いなく、毎日使いたい器だ。

 

山田雅子さんのアトリエ atelier-mado

https://atelier-ma-do2010.jimdofree.com/

Instagram:@atelier_ma_do

 

 

北海道の自然の色を表現。食卓シーンを彩る、杉田 真紀さんの器
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち

北海道札幌市出身の杉田真紀さんの器は、お菓子とカフェオレ、スープとパン、そんな美味しそうな食卓が似合う。「使うときのシーン、時間帯を自分の中で想定して作っています」と杉田さんが話すように、HPやインスタグラムではおやつや食事シーンの写真が紹介されている。

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
杉田さんのアトリエ atelier & gallery mano

「できるだけシンプルなラインで、器を持った時の手になじむ感覚を大事に製作しています」という杉田さん。趣味が高じて、会社員のかたわら陶芸教室に通い、制作活動をスタートし、2009年に陶芸家として独立、atelier & gallery manoを開業した。

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
HPより

美しい色合いも魅力のひとつで、どれも北海道の自然の色を表現している。ラベンダーの色、空の水色、海の紺色。北海道育ちの杉田さんに馴染みのある自然の色が作風に生かされている。無地の器もよくみると刷毛で描いた跡や、濃淡があって手作りのぬくもりを感じる。

 

木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち
木彫りクマ、陶芸。 札幌で会った3人の作家たち

ざらりとした質感、そっと両手で包み込みたくなるほっこり丸いシルエット。器が主張しすぎることなく、 使う人の生活をカラフルに彩ってくれる可愛らしい存在だ。

 

 

 

杉田真紀さんのアトリエ atelier&gallery mano 

https://www.atelier-mano.com/

Instagram:@sugitamaki

 

 

 

文・小泉恵里

APeCAディレクターで、フリーランスのエディター・ライター。「流行通信」「WWD JAPAN」「GQ JAPAN」などでファッションエディターを勤めたのち、独立。ファッション、食、ライフスタイルの取材・執筆活動をしている。食べログマガジンでは食レポ系連載を2年半続け、リサーチしたレストランは約100店。生クリーム系スイーツは苦手だが、チョコレートは毎日食べるカカオ党。毎朝のグラノラ×カカオニブが習慣で、チョコはカカオ率高めのタイプが好み。

Instagram:@erikoizumileo