「USHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)」の代表、中村真也さんへのインタビュー2回目では、そのこだわりについてフォーカス。チョコレートの枠組みに収まり切らない自由で楽しい表現を実現するために中村さんが大切にしていることについて迫った。

 

文・本間裕子
写真・チダコウイチ
大切なことは漫画から学んだ

「USHIO CHOCOLATL(ウシオチョコラトル)」の代表、中村真也さんは、オルタナティブな精神を宿した人だ。既存のフォーマットに倣うのではなく、何事もまず自分の頭で考えて、納得できたものだけを選択して自分のスタイルを確立している。

中村さんが菜食主義だが、それも思想や好き嫌い所以ではなく、自分で考えた結果のこと。「福岡の焼き鳥屋さんで働いていたとき、急にナマコを切ることができなくなってしまったんです。ナマコの腹を切り裂いた時、まな板の上のナマコと自分の身体が入れ変わった錯覚に陥り、具合が悪くってしまったんですよね。それをきっかけに、自分で殺せない動植物を食べることはできないな、という考えに至りました。便宜上、菜食主義と言っていますが、自分では殺せないモノは食べない主義者ですね」と中村さん。最近は自分の手で鶏を絞める経験をしたため、鶏は食べるようになったという。

 

代表・中村真也さんに探る USHIO CHOCOLATLのチョコレートが楽しい理由(中編)

また、中高時代から音楽や漫画はじめさまざまなカルチャーに夢中になってきたことも、独自のスタイルを追求する姿勢に色濃く反映されている。

「人生の大切なことの多くを漫画から学んだと思います。ベスト3を挙げるなら『美味しんぼ』『サンクチュアリ』、そして『寄生獣』。自らを社主と名乗っているのも、『美味しんぼ』に影響されてのことなんです」と笑う。

 

代表・中村真也さんに探る USHIO CHOCOLATLのチョコレートが楽しい理由(中編)

温浴施設愛好家として知られる大阪の桶美さんに出会ったことで温冷浴の気持ち良さにハマり、ほぼ毎日通っているのが奥尾道にある「はらだの湯」。温泉に浸かりながら、アイデアを練る一人脳内会議が日課だ。

 

代表・中村真也さんに探る USHIO CHOCOLATLのチョコレートが楽しい理由(中編)

また最近では、料理人の友人など計4名で在来作物ディガー集団なる『バルバッジア』を組み、それぞれの土地で守られ繋がり続けてきた在来作物を未来を描く郷土料理へと進化させる活動など、「ウシオチョコラトル」の枠組みを離れた活動も増えている。「僕はショコラティエではないし、チョコレートのことだけ考えていても面白いものは作れないと思っているんです。積極的に外に出ていろいろな価値観や才能に触れることが、ウシオのユニークネスに繋がればと思いで飛び回っています」という。

 

代表・中村真也さんに探る USHIO CHOCOLATLのチョコレートが楽しい理由(中編)

そんな中村さんが創造した会社だからこそ、個性豊かなスタッフが自ずと集まり、福利厚生もユニークだ。社員の健康を考え、グラスフェッドWPIホエイプロテインなる「TAMPACK」は飲み放題。また、尾道で知り合ったスピリチュアル・カウンセラーに社員のカウンセリングをこれから定期的に導入したいと考えている。「最初はみんな微妙な顔をしていたんですが、その表現の豊かさに惹き込まれてしまって今では楽しみにしてくれています」。

令和の時代にあって社員旅行も敢行。北海道に移住した元社員を訪ねつつ、有機農業や発酵の伝道師として知られる「ラララファーム」に体験学習に行ったのも良い思い出だという。

 

徹底的に楽しめど決して楽はしない

「ウシオチョコラトル」を語る上で欠かせないのが、ユニークなコラボレーションの数々だろう。六角形のチョコレートというデザイン性の高さ、また近年での知名度のアップと共にコラボレーションの依頼も格段に増えたが、パッケージのみの提供は断り、中身もその都度オリジナルを開発するというこだわりを貫いている。オファー先からは、「中身まで変えてもらえるんですか?」と驚かれることも多いという。

「もちろん毎回ストーリーやコンセプトを理解し、美味しさとしてチョコレートに落とし込むのは大変な作業ではありますが、そこを楽してしまったら自分達の存在意義がなくなってしまう気がするんです。いただく御礼の手紙や感想のメールは、スタッフの励みになっていますね」と中村さん。コラボレーションを通じ、人や企業と互いを深く知ることで、その後の繋がりも増えてきているという。

数あるコラボレーションの中でも印象に残るものは?と尋ねたところ、『月刊ムー』と即答。

 

代表・中村真也さんに探る USHIO CHOCOLATLのチョコレートが楽しい理由(中編)

「もう閉じてしまったんですが、広島空港内にウシオの姉妹ブランドとして「Foo chocolaters(フーチョコレーターズ)」という店舗があったんです。ダイレクトトレードのカシューナッツとカカオを使ったヴィーガン対応のチョコレートを用い、さまざまな宗教の人が食べられるように、乳製品などの動物原料は一切使っていなかったのですが、空港の職員さん知り合いを経由して『石川県の羽咋市のJAを自然栽培を推奨する組織に変えた高野誠鮮さんが、第三セクターでこんな面白いことをやっている若い人たちがいるって褒めてくださっていたよ』と教えてくれたんです。ちょっとググって見たら、UFOリサーチャーにして日蓮宗僧侶、スーパー公務員とか、数々の伝説を持つ本当にすごい方じゃないですか。科学ジャーナリストという肩書きもお持ちだし、そういったことにやたら詳しいスタッフの虹子ちゃんに『ウシオのこと褒めて下さってたみたいなんだけれど、高野誠鮮さんって知ってる?』って聞いたら『え、毎晩YOUTUBE観てます!』って想像以上の反応が返ってきて(笑)。その後、SNSを介して御礼を伝えたところ、かなりディープなイベント『UFO・宇宙人&自然栽培フェスティバル』に誘って下さって、そこで『月刊ムー』編集部の方と知り合い、コラボレーションに至りました。複雑ですよね」と中村さんは笑う。

 

気になる中身は高野誠鮮さんのお弟子さんが育てた自然栽培米を、高野さんに御祈祷していただいてからポン菓子にし、自然栽培のグァテマラ産のチョコレートに混ぜ込み、能登の揚浜式の塩で調味したもの。世界広しといえど、伝説の名盤のごとく、間違いなく唯一無二のチョコレートだろう。「ウシオチョコラトル」はどこまでも自由で、どこまでも表現を楽しんでいる。

 

また、音楽好きな中村さん。細野晴臣コンサートツアーで、『細野ブレンド』 なるチョコレートを担当したのも良い思い出だという。

 

「鳥取県の大山HUTでのライブに伺い、打ち上げに参加してご挨拶させていただいたのですが、握手しながら『チョコレートっていう曲作ってください』って伝えたら、一呼吸おいて『いいね』って言って下さったんです。細野さんはそのまま退場されたのですが、わざわざ振り返って僕の方を見ながら『それ、本当にいいね』ってもう一度言って下さって嬉しかったですね」。

 

徹底的に楽しめど、決して楽はしない。チョコレート作りに対する真摯な姿勢と、先入観や固定概念にとらわれない自由な発想。チョコレートを一つのカルチャーと捉え、新しい世界の見方を教えてくれる「ウシオチョコラトル」。続く後編では、中村さんのライフワーク、そして「ウシオチョコラトル」の今後の展開について尋ねた。

 

 

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USHIO CHOCOLATL

住所:広島県尾道市向島町立花2200 立花自然活用村 2階

電話:09073911746

営業時間:午前9時〜午後5

HP:https://ushiochocolatl.stores.jp

Instagram:@ushiochocolatl

 

 

 

文・本間裕子

編集者・ライター。大学卒業後、(株)INFASパブリケーションズに入社。ファッション週刊紙「WWD JAPAN」、コレクションマガジン「FASHION NEWS」の編集を経て、美容週刊誌「WWD BEAUTY」に創刊時より携わる。退社後、フリーランスの編集・ライターとして、化粧品、食料品メーカーをメインクライアントに、ブランディング、広告制作等に携わる。甘いものは得意ではないが、カカオは大好きでコーヒー、赤ワイン、ラムに合わせて日常的に食している。料理家など食に携わる人たちとの交流が深い。

 

インスタグラム:@uozazaza