高知県といえば、大半の人が思い浮かべるキーワードが「鰹」「よさこい」「坂本龍馬」ではないだろうか。坂本龍馬生誕地のほど近くに小さなチョコレート工房があるのをご存知だろうか? チョコレート+土佐弁というキャッチーなネーミングのチョコレート専門店『CHOCOZEYO(チョコゼヨ)』は、高知県初のビーントゥーバー。始めるきっかけが、撮影コーディネーターの仕事とボディビルだったという、チョコレート業界人としては異色の経歴を持つオーナーの森田滝夫さんにお話を伺った。

 

文・西村依莉

写真・チダコウイチ

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

元々僕は撮影コーディネーターの仕事をやっていたんです。古くは『どうぶつ奇想天外』に始まり、『アナザースカイ』や『世界の果てまでイッテQ』など、海外ロケのブッキングや現地でのコーディネーターをしながら、行く先々で色んな文化に触れては日本で紹介する、ということもやっていました。10年ほど前に、アメリカでビーントゥーバーというスタイルの業種を知り『これは日本で流行るだろうな』と、興味を持っていました。いろんな場所へ行くたびに、新しいものにアンテナを張っていて、ビーントゥーバーもそうやって注目したもののひとつです。他にもそうやって情報を集めたものは色々ありますが、今やっていることだと、バインミーもそうですね。この店の近くでバインミーショップをやっているんですけど、4〜5年前から東京でも流行り始めて、高田馬場や恵比寿に店ができて。

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

ちなみにうちの店のバインミーのパンは恵比寿の店から取り寄せてます。冷凍で取り寄せてリベイクした方が美味しいんですよ。それ以外は地産地消の食材で、挟んでいるものは鳥も豚もパクチーも、高知で採れるものを使ってます。ソースもマヨネーズも手作りで、基本オーガニック。白砂糖も使わないようにしてて、基本的に黒糖を使っています。僕は健康オタクで、基本的に「食べて元気になりましょう、食べて体を作りましょう」という思いがあるんですよね。だからチョコレートも、食べて元気になろう、食べてヘルシーになろうというところから始まってるんです。

 

アフリカのカカオ農園には、コーディネートの仕事で何度も訪れたことがあって、話を聞いて「カカオ豆を自分でも輸入できるから、日本でも作れるな」と思ったんです。初めは東京か、その近郊で始めようと思ったんですけど、何かとコストがかかる。そんな頃に親も高齢になって、よく地元に帰ってくるようになったし、高知にはビーントゥーバーがなかったから、ここでやってみようかな、と思って始めました。

 

うちで使っている豆はマダガスカル産がメインで、あと少しタンザニア産のものも。今は行けなくなってしまったけど、自分で現地に行って交渉して仕入れるようにしています。マダガスカルは結構健康な豆が多いんですよ。そんなに量は多くないんだけど、アフリカってコートジボーワールやガーナが2大カカオ産地で、ナイジェリアがそれに続くんですよね。日本はガーナ、ヨーロッパではコートジボワールと西アフリカの方のカカオ豆を使うことが多い。西アフリカの豆は大量生産で作られていることが多いので、農薬を使っているんですよね。僕は健康のためにチョコレートを作りたかった。そのためにはやはり有機栽培で食の安全性が保障されている原料を探すことがとても大切だと思っていて。仕事柄行くことが多かった縁もあって、マダガスカルの豆がすごくいい、というところへ行き着いたんです。品質の良さは世界でも認められていて、ほとんどがヨーロッパに輸出されています。うちではマダガスカルのカカオ農家から直接仕入れています。

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

マダガスカルの豆はクセがあるんです。酸味があって、ちょっとフルーティでツウ好みな味のタブレットがうちの主力商品。テリーヌ・ド・ショコラや、かき氷などデザートに使っているのはタンザニアの豆。タンザニアの方が原価が安いんですね。僕の撮影コーディネーター仲間が送ってくれるんです。船便だと時間がかかるし、運んでいる間に害虫やカビ対策で農薬を散布されるので、成田へ空輸してもらい、検疫を受けて、高知に運んで、この工房で作っています。

 

『CHOCOZEYO』の製法は、ニューヨークの「ファイン&ロー」に倣っていて、ロー(生)とロースト(焙煎)と混ぜて作っています。この製法で作っているの、日本ではうちだけじゃないかな? ローは健康にはいいかもしれないけど、味的にはローストしてる方が美味しいんですよね。健康信者になっちゃうと「絶対ローはいいものなんだ」「ローはいいものだから美味しいんだ」ってそれしか頭になくなっちゃいがちですよね。でも、そんなことはなくて、ただ、マーケティングとして東京方面で売るなら人と同じことをしててもダメなんで、ローという部分を残してるんですけどね。成分的にはローの部分でいいものが残ってるけど、焙煎したらそれはそれで、メイラード反応といって、もっと抗酸化作用が強くなったりするので、栄養や体のことを考えたら焙煎は悪いことではないんですよ。カカオをチョコレートにするためには、2回発酵をするんですけど、エタノール発酵のあと、酢酸発酵といって熱か50度くらいまで上がるんですけど、ローの定義からうと48度以下で作らなきゃならないというのがあるので、ローチョコレートの定義が曖昧になって来ますよね。僕はシンプルイズベストで、体にいいものを極めていこうと思っているので、ローの体にいい部分と焙煎することでよくなる部分のハイブリット型でやっています。

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

食べて健康になる、をモットーに生きてると、甘いものを食べたくても食べられないじゃないですか。僕はボディビルディングをやっているんですけど、大会前の減量中、甘いものが食べたくても食べられないストレスといつも戦っていました。チョコレートって人を幸せにする食べ物だと思うんです。鍛えてるからって、幸せになるものを食べられないのは嫌じゃないですか? だから自分で食べたくて、チョコレート工場を作ったんです。間食で自分たちが作ったシュガーフリーのチョコレートとアーモンドを食べて、栄養価を摂りながら味も楽しむ。僕にとってチョコレートは嗜好品じゃなくて健康食品なんです。オメガ3入りチョコレートだから“健康になるための食べ物”という意識で作ってます。

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

本業は東京にある旅行会社と撮影コーディネーターがメイン。あと、接骨院を手がけるライセンスを持っているので、広尾で接骨院も経営してます。パーソナルトレーニングを併用した接骨院になるんですけど。そこで『CHOCOZEYO』をダイエットができるチョコレート、というコンセプトで販売したいと思っています。

 

元々、東京のホテルオークラのバーで働いていて、お客さんの紹介でクイーンエリザベスⅡ世という船のバーで働きながら世界を周るようになりました。料理の勉強はその時に出会った友人やオークラ時代の同期に教えてもらって身につけていましたが、今はYouTubeに何でも動画があるから、結構新しく知りたいことは、YouTubeを見て覚えたことが多いですね。いろんな本場の動画を見て覚えるんです。バインミーならベトナムとか。言葉がちょっとわからなくても、料理だから動画を見れてばかなりわかるし、レシピがあれば翻訳だってできるでしょ? ハワイのチョコレートメーカーの『HAWAII MANOA』を知るきっかけもYouTubeだったんですよ。今みたいに大きくなる前で、ビーントゥーバーで調べてたら出て来て。その頃はマノアさんも規模感がうちと似ていたので習いに行って、すごく親切にしてもらいました。なんとなく作り方はわかってたので、ポイントポイントで質問したら色々教えてくれるんです。どうしてローチョコを作らないの?と聞いたら「ハワイは虫が多いからローは難しい。あと衛生面でも難しいからやらない」と教えてくれたり。ローは殺菌できないから雑菌が多いんですよね。そんな話や「コーチングマシンは小さいものをいくつも買うより大きいものをひとつでいい」とか。やっているからこそのアドバイスをいただきました。

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー
地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

こう言っちゃ何ですが、僕のチョコレートはいろんなところのパクリ(笑)。マノアさんに倣ったり、ファイン&ローさんに倣ったり。コンセプトがいいなと思ったところへ学びに行くんです。だから、『CHOCOZEYO』のシュガーフリーはファイン&ローさんの作り方がベースなんですけど、甘味料を高知産のステビアに変えたりして独自のものにアレンジしていきました。ステビアは高知県仁淀村で作ってるものを使っています。そのままかじって食べられるんですけど、これを入れて甘みを出してるんです。ヤーコンは信州産で、メスキートはペルーの無農薬栽培のもの。これらを乾燥させてパウダー状にして使ってます。配合のバランスがあるんですけど、ステビアの配合が結構苦労しましたね。ステビアは草なので、入れすぎると草っぽいクセが残るんですよ。

 

甘味がないので食べにくい、と言う方に僕がおすすめするのはアーモンドと食べること。ボリューム感があるからお腹を満たしてくれるし、アーモンドチョコを食べてる感覚で満足度が高いんですよ。これをポリポリ食べながらトレーニングをして、栄養素をしっかりとって、良質な筋肉を作るんです(笑)。

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

砂糖を使っているチョコレートは高知県黒潮町の黒糖を使っています。黒糖から作るのはさすがに面倒だからやりません。水分が豊富なので、一度乾燥させなきゃならない。乾燥させてパウダー状にするという1工程増えるので、みんなキビ糖に走りやすいですね。うちが使っているシンプルなバランスのチョコはこれで、マダガスカルの豆7割と、黒潮町の『上樫森』さんの高知の黒糖を使った酸味のあるチョコレートです。黒潮町はとても豊かな生産地だけど、今、きび糖の産地としても頑張っているところ。『上樫森』さんは伝統的な釜炊き製法で黒糖を作っているんです。他に高知県産のものだと、柚子や生姜を使ったもの、無農薬のほうじ茶を入れたもの、海塩のフレーバーを作っています。

 

それからラズベリーにバオバブ、ヘンプもあります。今ヘンプオイルが注目されているので、ヨガをやっている人とかに好評なんですよ。結構まろやかな味わいで食べやすいです。

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

『CHOCOZEYO』のパッケージのイラストは高知に移住した料理家の有元くるみさんに描いてもらったワオキツネザル。たまたま見た知人の名刺のデザインを気に入って、「これをデザインした人にパッケージのイラストを描いて欲しい!」と紹介してもらったら、引き受けてくれて。まさかこんな形でご縁が繋がるとは思っていなかったので、ラッキーでしたね。紙はザンビアのバナナ繊維からできている紙をフェアトレードしたものを使っています。チョコレートの包み紙は、生分解性のグリーンプラ。発展途上の国なんかに行って、チョコレートをあげると、現地の人ってその辺にポイポイ捨てちゃうんですよ(笑)。だからその辺に捨てちゃっても、ちゃんと自然に返っていく素材を探して採用しました。“外側は地球に優しく、中身は体に優しく”というのが『CHOCOZEYO』のコンセプトです。

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー
地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー
地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

高知で平飼いをして鶏の卵を使ったテリーヌ(500円)。ねっとり濃厚でフルーティーな香りが鼻に抜ける。日本酒のお供としても成立する美味しさ。実際に『CHOCOZEYO』のテリーヌをデザート提供している居酒屋も。

 

地球に優しく、体にも優しく。世界中のおいしいとこ取りをした高知のビーントゥーバー『CHOCOZEYO』森田滝夫さんインタビュー

チョコレート、ミルク、黒糖を混ぜたものを凍らせ、削ったチョコレートのかき氷(500円)。さっぱりしているけれど水っぽくなく、チョコレートの香りをしっかり堪能できる。カカオニブをかけて食感の違いを楽しむ。

 

 

 

チョコレート工房 CHOCOZEYO

高知県高知市上町1-11-1 イトウマンション1F

12:00~18:00

TEL:088-821-8820

携帯:070-3970-9995(バインミー 升形)

営業日:金曜&土曜日が一般販売、店主が高知に戻って来た時は常時営業

https://www.chocozeyo.com

 

 

 

文 : 西村依莉

編集者・ライター。1960〜70年代を中心とした昭和期のカルチャーと猫やファッション、ライフスタイルをテーマに書籍や雑誌、WEBで活動中。近刊に『スペースエイジ・インテリア』(グラフィック社)、『桂浜水族館公式BOOK ハマスイのゆかいないきもの』(実業之日本社)など。

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