東京から北海道・美瑛町に移り住み、新たにレストラン「SSAW BIEI」から北の大地の魅力を発信するたかはしよしこさん。料理に生まれた変化や、日々刺激を受けているという食材について話を聞いた。

 

文・本間裕子

写真・チダコウイチ

 

食材が導いてくれる料理を

食材の個性をしっかり捉えた季節感のある料理に定評のある、料理家たかはしよしこさん。「SSAW BIEI」最大の魅力は、よしこさんのフィルターを通して北の大地の豊かさを味わえることだろう。レストランで使用される食材は基本的に全て美瑛町をはじめ、北海道で手に入れられるもの。東京のお店では全国から厳選した食材を集めていたものの、移住してからは取り寄せを全部やめて、地元にあるものだけで料理をつくることを一年間チャレンジした結果、地産地消が実現した。

 

「準備期間は、目の前にある美味しさを懸命に追いかけていたら季節が一周していた感じ。それは、写真が美しい一瞬を切り取ろうとする感じに似ています。オープン前に地元に根付いた生活を送ることができて、今となっては本当に良かったと思います」とよしこさん。

 

北海道・美瑛町〈SSAW BIEI〉が スケッチする 彩り豊かな美瑛の四季【後編】

「つくりたいものを自由につくる楽しさもあるのですが、やっぱり私にとっては真の喜びではないんですよね。お客さまが何を求めているかを徹底的に考えて、喜んでくれるであろう形に仕上げるという過程が大好きなんです。それは食材に対しても同じこと。もし私の料理に創意工夫というものがあるとしたら、それは素晴らしい食材が刺激し、導いてくれているのだと思います」。大切に育てられた食材が持つ可能性を信じ、本当に必要な手順だけを重ねて作られる料理は、食べるものの五感を刺激し、心にも美味しさを届けてくれる。

 

北海道・美瑛町〈SSAW BIEI〉が スケッチする 彩り豊かな美瑛の四季【後編】

生産者さんから直接手に入れた素晴らしい野菜をみると、心の底からにワクワクし、料理をするという形で自然のサイクルの一旦を担えていることに喜びを感じているという。今まで国内外、さまざまな場所を訪れてきたよしこさんだが、北海道の食材のおいしさは抜群だと胸を張る。

 

「野菜はみずみずしくて味が濃いし、水や土も含め、すばらしい食の資源がここにはあるのだと日々感じています。色々な土地を赴任したという娘の小学校の先生も『美瑛の給食が一番美味しい』というほど。農薬や化学肥料を一切使わず、有機農法で野菜を栽培している美瑛町の『百姓や』さんは、東京時代から使わせていただいていますが、採れたてはやはり格別の美味しさで、本当に毎日のように感動しています」

 

地産地消で叶える滋味深い一皿

大切に育てられた食材を無駄にしたくないという想いから「SSAW BIEI」は、基本的におまかせコースのみ。季節のランチプレートのメニューは、随時インスタグラムに掲示される。色彩感覚に富むよしこさんの華やかで美しい盛りつけも気分を盛り上げてくれる。

 

北海道・美瑛町〈SSAW BIEI〉が スケッチする 彩り豊かな美瑛の四季【後編】
北海道・美瑛町〈SSAW BIEI〉が スケッチする 彩り豊かな美瑛の四季【後編】

ナチュラルワインに造詣が深く、「一食も無駄にしたくない」というほど食への関心が強い夫・景さんも心強いアドバイザーだ。滋味深い美味しさを好む景さんは、格別に美味しかった家庭での一皿を『殿堂入り』と題したノートにイラストで残し、家族の食の記録となっている。そこから派生して生まれたメニューもあるという。

 

今や「SSAW BIEI」のアイコン的メニューとなっている「丘のスープ」も景さんが発案したもの。前田真三の写真へのオマージュとなるスープは、季節ごとに異なる組み合わせで目を楽しませてくれる。

 

北海道・美瑛町〈SSAW BIEI〉が スケッチする 彩り豊かな美瑛の四季【後編】

「本当にとんでもないものを考えてくれたなって(笑)。季節に応じた組み合わせを考えるのはもちろん、美しくハーフ&ハーフにつぐのも大変だし、何度も温めながらちょうどいい塩梅をキープするために気を緩めることもできない。でも、お客様が喜んでくれて写真におさめてくれるので報われています(笑)」

 

北海道・美瑛町〈SSAW BIEI〉が スケッチする 彩り豊かな美瑛の四季【後編】

「北海道には何度も訪れていましたが、やっぱり暮らしの中で四季を体験してはじめて、素晴らしさも厳しさもわかったような気がします。もともと寒いのが大の苦手なのですが、厳しい季節にも楽しみがあったり、過ごし方の工夫があったりと想像以上の気づきがあり、料理のアイデアも生まれました。そういった自分自身の体でわかったことが、自分の糧になってくれる気がしています」

 

食材の声に耳を傾け、今しか味わえない美味しさを追いかける。よしこさんの料理は北の大地でまだまだ進化していきそうだ。

 

 

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北海道・美瑛町〈SSAW BIEI〉が スケッチする 彩り豊かな美瑛の四季【前編】

 

 

 

【SSAW BIEI】

住所:北海道上川郡美瑛町字拓進

電話:080-4076-4413

定休日:火・水・木

ランチ(要予約)は11時〜と13時〜

カフェは予約不要で15時〜16時30分ラストオーダー

※メニューや営業日時は随時Instagramに掲示される

HP:https://s-s-a-w.com

Instagram:@ssaw_biei

 

 

PROFILE

 

たかはしよしこ

料理家。生産者と食べる人の架け橋となるように心がけて活躍。 運営するレストラン「SSAW BIEI」には、日々刻々と変わる四季の素材を追いかけながら、メニューを組み立て、シンプルに料理し、味を迎えにいくという思いが込められている。

 

 

文・本間裕子

編集者・ライター。大学卒業後、(株)INFASパブリケーションズに入社。ファッション週刊紙「WWD JAPAN」、コレクションマガジン「FASHION NEWS」の編集を経て、美容週刊誌「WWD BEAUTY」に創刊時より携わる。退社後、フリーランスの編集・ライターとして、化粧品、食料品メーカーをメインクライアントに、ブランディング、広告制作等に携わる。甘いものは得意ではないが、カカオは大好きでコーヒー、赤ワイン、ラムに合わせて日常的に食している。料理家など食に携わる人たちとの交流が深い。

 

インスタグラム:@uozazaza