和菓子めぐるの『季節はめぐる』
写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡
文 : 森嵜周
写真 : 岩根愛
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愛さんへ
ようこそ茶道とcacaoと和菓子の世界へ
今日はお茶の先生を紹介します
習いはじめて4年目の冬を迎えます
グングン季節がかわり
いよいよ大寒を迎え寒さ極まる日
茶室に入り目を瞑っていると湯が沸く音
「そろそろやってみますか?」
お濃茶のお手前を習いました
なんとなーくそろそろがいい
なんとなーくこの人がいい
その感覚、根拠も理論もある
なんとなーくが一番正しい。
だから今日はお濃茶記念。
2022.1.20 大寒


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愛さんへ
茶道には人対人のコミュニケーションがある
人対自然のコミュニケーションがある
流し点(ながしだて)。
特に親しい方を1人か2人ほど客として
なごやかに語り合いながら茶を点てる
打ちとけた点前のこと
シンプルを極めたシビレる点前なんです
利休さんの時代
四畳半の小さな宇宙は
あなたとわたしは
いまここにしかいない
あなたとこうして出会っているこの時間は
二度と巡っては来ない
たった一度きりのもの
お稽古はいつも一期一会。




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愛さんへ
お稽古の時間
先生と過ごす時間
この時間が有限であることに
胸がギュウとなるんです
今この時間。
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愛さんへ
わりと勝手なこと考えて生きる
わりと勝手なこと言って生きる
わりと勝手なことやって生きる
直感に頼りまくって人生をハッピーにする
それでいきましょう。
またお手紙しますね。
森嵜 めぐる 拝



カカオ菓子
◇ 菓名【虎の巻】
平鍋菓子(ひらなべかし)平鍋もの
天火(オーブン)を使わず、平鍋(鉄板)や焼き型で生地を焼いて作る菓子のこと
お馴染みのトラ柄は、カカオマスを生地に溶かしこむ
中あんにはこし餡にカカオニブを練り込み粒々感をお楽しみください

◇ 菓名【新月】
2022年1月18日
ウルフムーン 地球から最も遠い(小さい)満月

錦玉羹 練り切り製
カカオマスを練り込んだこし餡を寒天で包む
◇ 菓名【初雪】
ゆべし
もち米粉に黒糖の風味をつけ
カカオ豆と胡桃

プロフィール
森嵜周
1974生まれ
多摩美術大学造形表現学部卒業
油絵を学ぶが立体や映像のほうに興味がうつる。
移ろい変わる季節、日本の風土、立体、食べて無くなってしまうものへの儚さ、それら全てが集結したものが和菓子の世界であると感じている
そこに確かにあるものの存在を知ること
自然と人間の間をとりもつ
現在進行形の感性を
和菓子を通して表現しています
岩根愛
東京都出身。1991年単身渡米、ペトロリアハイスクールに留学。帰国後、1996年に写真家として独立。
2018 年、初の作品集『KIPUKA』(青幻舎)を上梓、第44回木村伊兵衛写真賞、第44回伊奈信男賞受賞。2020年、「あしたのひかり-日本の新進作家Vol.17」(東京都写真美術館)に『あたらしい川』出展、同時に作品集『A NEW RIVER』(bookshop M)刊行。著作に『キプカへの旅』(太田出版)『ハワイ島のボンダンス』(福音館書店)
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