広告やCDジャケット、アーティストのビジュアルなど、さまざまな媒体のデザインを手掛けているアートディレクターの千原徹也さん。彼が主宰するデザインオフィス〈れもんらいふ〉がプロデュースした喫茶店〈喫茶檸檬〉が、山梨県富士吉田市にオープンして話題を呼んでいます。東京のクリエイティブと富士吉田の資源が融合させたお店で、美味しいチョコレートを使ったスイーツもあるということで、千原さんにお話を聞きに行ってきました。前編から続く今回は、こだわりの料理と千原さんの思いをご紹介します。

 

取材・文:小松翔伍

写真:チダコウイチ

 

目指すは地元に根付いた喫茶店

晴れた平日の昼下がり、ゆるやかな時間が流れる〈喫茶檸檬〉。

コの字型のキッチンにはカウンターが設けられ、そこでスタッフと世間話をする男性。友人と談笑する2人組の女性。メニューを見ながら悩んでいるカップル。それぞれが〈喫茶檸檬〉を楽しんでいる様子が伝わってきます。

 

富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編
富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編
[珈琲牛乳]¥550

[富士ガトーショコラ]を味わっていると、頼んだ食事が運ばれてきました。

まずは、〈猿田彦珈琲〉とコラボレーションした[珈琲牛乳]。共同で開発したブレンドを使用していて、深煎りの香ばしさと牛乳の甘みが調和した自慢の一杯。他にも、コラボレーションの喫茶檸檬ブレンドを使用した[ホットコーヒー]や[水出しアイスコーヒー]、[カフェ・オ・レ ホット]、[コーヒーフロート]など、〈猿田彦珈琲〉の特別な味を楽しむことができます。

 

富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編
[レタスサラダ]¥950
富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編
[富士の介 西京焼き]¥780

次に運ばれてきたのは、[レタスサラダ]と[富士の介 西京焼き]。レタスは近所の佐藤農園さんから仕入れているそうです。富士の介とは、キングサーモンとニジマスを交配した山梨県特産のブランド魚。上品な脂ときめ細やかな身質が特徴で、徐々に人気が高まっているとのこと。それ以外にも[佐藤農園の野菜のバーニャカウダ]や[甲州地鶏の唐揚げ]など、地元の味覚を堪能することができます。そして、それらの料理とのマリアージュを楽しめる、山梨のナチュールワインも多数ラインナップ。夜は、〈喫茶檸檬〉と“西裏”の飲屋街をハシゴするのは決まりです。

 

富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編
[檸檬拉麺]¥800

そして、〈喫茶檸檬〉の食事で指折りの人気を誇る[檸檬拉麺]。鶏ガラしょうゆベースのスープに、輪切りのレモンが敷き詰められたラーメンです。すっきりとした香りとさっぱりとした酸味が鶏ガラしょうゆと掛け合わさった味わいが絶妙で、思わず「美味しい!」とポロリ。これらの料理を考案したのは、西麻布とニューヨークに店を構えるビストロ〈HOUSE〉のオーナーシェフ谷祐二さん。他にも、着物をデザインするキモノデザイナーの斉藤上太郎さんがプロデュースした[檸檬アイス](当たりつき!)が販売されるなど、各シーンの最前線で活躍する方々が携わっているのです。それに加えて、〈喫茶檸檬〉のスタッフで考えた[おでん]などもメニューにあり、みんなで作り上げているクリエイティビティを感じられます。

 

富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編
〈喫茶檸檬〉のオリジナルアイテムも販売。[機織りTシャツ(XL)]¥4,800と[銭湯タオル]¥1,500。
富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編
お土産にぴったりなグラスも販売。(左)[アイスドリンク用グラス]¥2,000、(右)[ビールグラス]¥2,200

飲食業の経験がない千原さんは、〈喫茶檸檬〉を立ち上げてこのように感じているそうです。「僕はデザインの仕事しかして来なかったから、毎日の売り上げが明確に出るのが不思議な気持ちなんです。デザイン業は入金と出金が分かりにくいから、日々の売り上げが曖昧なんですよ。こんなお客さんが来たとか、こんなことがあったとか、日報を書いて送ってくれるから1日1日仕事が新鮮です。月に何度かお店に来ているから、その時に改善点を話し合うのも楽しいです。日報を見ていたら、毎日をちゃんと振り返ることの大切さを改めて気づきました。デザインとは違う仕事をうまく両立できると、いい刺激になると思います。だからこのお店が忙しい時は、東京の事務所のスタッフも来てもらい手伝っています」。

 

富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編

〈喫茶檸檬〉を富士吉田に根付かせるために、こんな取り組みも。「まずは地域に馴染むのが大事。地元の人と年月を掛けて仲良くなって、それからクリエイティブを投入していかなきゃいけないと思うんです。突然オープンして東京と同じ目線でお店を運営しても、東京に対するアピールにしかならなくて、地元の人が蚊帳の外になってしまいますからね。だから僕も合間を縫って来るようにしていますし、地元の人と食事をしたり、商店会の会議に参加したりもしています。そして、うちのデザイナーに移住してもらい、ハブになってもらっています」。

 

富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編
〈れもんらいふ〉のデザイナーの夕月さん。

〈喫茶檸檬〉のオープンとともに富士吉田に移住した、〈れもんらいふ〉のデザイナーの夕月さん。東京で生まれ育ったため、慣れない環境に当初は戸惑いを感じたものの、今では楽しんでいるそうです。「生活が一変したけど、毎日が新鮮です。地元の方々がすごく優しくて、いつも気に掛けてくれるんです。東京だと隣に住んでいる人も知らなかったけど、ここはみんなに助けてもらっています」。

 

富士吉田の魅力を再発見。アートディレクターの千原徹也さんが手掛ける喫茶店。後編

そして最後に千原さんは今後の展望を語ってくれた。「まだ、いろいろと試行錯誤しているところです。例えば、メニューもそう。もっと自分たちで考えたレシピを追加していきたいですね。この前、とあるBean to Barブランドの社長と話していて、カカオニブなどを使った特別メニューを〈喫茶檸檬〉で出そうって話があがったから、実現できればいいなと思っています。そして、もっともっと喫茶店らしくしていきたいです。形を崩していくと、いいお店になるはず。それが〈喫茶檸檬〉の色になって、町のみんながこのお店を好きになってくれるといいですね。それがきちんとできたら、東京のクリエイターなどを招致して、トークイベントを開催したいです。あと、富士吉田の魅力をもっと知ってもらいたいので、東京で〈喫茶檸檬〉のポップアップを開催することも考えています」。

 

 

喫茶檸檬

https://lemonlife.jp/kissalemon/

 

 

 

小松翔伍

ライター/エディター雑誌やウェブメディアで、ファッションを中心としたカルチャー、音楽などの記事を手掛けているフリーランスのライター/エディター。カルチャーから派生した動画コンテンツのディレクションにも携わる。海・山・川の大自然に溶け込む休日を送るが、根本的に出不精で腰が重いのが悩み