食べものに相性のよい飲みものを合わせる“ペアリング”。ここ数年で、料理に合わせて飲みもののペアリングコースを提案するレストランが急速に増えました。食べものをよりおいしく楽しむための方法として、関心が高まりつつある“ペアリング”。ここでは、APeCAならではの“チョコレート・ペアリング”にフォーカス。今回はナチュラルワインショップ「awai」のスタッフ、岸部兼太郎さんにフランスのワインと日本のチョコレートのペアリングをご提案いただきました。

 

文・門前直子

取材写真・チダコウイチ

 

魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合

今回お話を伺った「awai」は、クラフトビールをそれぞれのビールに合ったグラスで提供する赤坂のビアバー「sansa」が姉妹店として昨年にオープンしたショップ。ナチュラルワインを中心に、ビールや焼酎、「sansa」で使用している木村硝子店のグラスや食品などを販売しています。

 

魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
「sansa」で使用している木村硝子店のグラスを各種販売
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
販売している食品も「sansa」で使用しているもの

「ここで扱うワインは、自分が飲んで心が動いたもの、味や香りに生産者自身の人となりが表されているもの、畑への手当てや造りに生き方や哲学が垣間見えるもの。実際に生産者のもとを訪ねながら、ゆっくり扱うワインを増やしていきたいと思っています。ワインショップという多くの先達がいる業態ではありますが、そのなかで個性を出せたらと」

 

「例えばそのひとつがセラー。日本の風土に適した保管庫として古くから用いられてきた土蔵に倣い、信頼する職人たちに依頼して土蔵のワインセラーをつくりました。土と木のセラーで定温定湿、無風の状態で大切に管理しています。ここで寝かせることによって、よりよい状態でワインをお客様にお届けすることができたら」とは、「sansa」と「awai」の店主、橋本一彦さん。

 

魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
くるみの木と発酵させた土、自然界のものでできあがったセラー。中央に設置された一枚板のカウンターが目を引く

今回は、そうして丁寧に選ばれ、管理されているワインのなかからラインナップの8割を占めるというフランスワインと、「awai」で取り扱いがある東京・富ヶ谷のスペシャルティチョコレート専門店「Minimal – Bean to Bar Chocolate -」のタブレットのペアリングを提案していただきました。

 

■PAIRING 1. 柑橘の香りを楽しむ「フルーティーなチョコレート×オレンジワイン」
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
合わせたワインはフランス・アルデッシュの「エル・マ・セレ 2020/シルヴァン・ボック」¥5,000/awai
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
合わせたチョコレートは「FRUITY」¥1,404(Minimal) ※「awai」でも購入可能

ペアリングを提案してくださったのは、フランス・ボージョレのワイナリーで住み込み修業をした経験をもつ「awai」のスタッフ、岸部兼太郎さん。「今回のペアリングについて、基本となる考え方は“調和”です。ワインとチョコレートに共通項を見つけて合わせるようにしました。共通項をもつもの同士をぶつけることで、新しいフレーバーがうまれることもあれば、どちらかの味わいや香りが際立つこともあります」

 

魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合

「フルーツが入っているわけではありませんが、ミカンのような香りや味、クエン酸系の酸味を感じるチョコレート『FRUITY』に合わせたのは、ワインにすると柑橘系の香りを放つ葡萄、ソーヴィニヨン・ブランを皮ごと発酵させたフランス・アルデッシュ産のオレンジワイン。紅茶のようなタンニン(渋みの成分)と柑橘のニュアンスがあり、このチョコレートと合わせるとレモンティーのような味わいがうまれます」

 

柑橘のような香りと風味に加えて、皮ごと醸していることから梅酒のようなふくよかさももつワインですが、チョコレートを食べてからワインを飲むと、後口に柑橘が香り、爽やかな余韻をもたらします。チョコレートとワインに共通するフルーティという部分を相乗させることで、爽やかさという点が際立ったペアリング。1本のワインのなかには、さまざまな要素が潜みます。こちらは、ペアリングによってそのなかの1点がより引き立つという好例ではないでしょうか。

■PAIRING 2. 果実味とカカオの風味がともに引き立つ「ハイカカオのチョコレート×赤のスパークリングワイン」
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
合わせたワインはフランス・ブルゴーニュの「イラ・アン・グラン・ペ・ナ 2017/ドメーヌ・ソーヴテール」¥5,500/awai
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
合わせたチョコレートは「HIGH CACAO」¥1,296(Minimal) ※「awai」でも購入可能

続くチョコレートはカカオ80%と、濃度の高いタイプ。カカオ分が高い=苦味が強くて少し食べづらいというイメージがありますが、こちらは香りにも味わいにも程よい甘さと親しみやすさがあり、非常に食べやすい印象です。

「カカオの味がくっきりと感じられますが、クセがなく丸みがある。苦すぎず、まろやかに仕上げたチョコレートですね。今回は自分が働いていたワイナリーから、ボージョレ・ヌーヴォーに使われていることでおなじみの葡萄、ガメイを使ったスパークリングワインを合わせました」

 

「ガメイというといちごキャンディのようなチャーミングなフレーバーで知られていますが、このワインはぐっと果実味が豊かなタイプ。かといって甘すぎず、酸にもキレがあります。また、カカオっぽい豆のようなニュアンスがあるのも特徴。ナチュラルワインで豆のような香りや味わいというとネガティブなイメージがありますが、ここではカカオニブやココアのようなポジティブな要素だと捉えています」

 

試してみると、両者がもつカカオのニュアンスが増幅しつつ、果実味もしっかりと感じられます。例えていうなら、赤い果実のドライフルーツが入ったタブレットのような……。どちらかが負けることなく、チョコレートもワインも際立ったペアリング。こちらも“調和”がベースにありますが、PAIRING1とは少し方向性が異なります。ひとつの要素が強調されたり、両者がどちらも際立ったり。単体ではなく、チョコレートとワインを合わせて味わうことの楽しさがありますね。

 

魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
■PAIRING 3. 両者の甘味が響き合う、リッチなペアリング「スイートチョコレート×赤ワイン」
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
合わせたワインはフランス・ローヌの「シャポー・ムロン 2020/ラ・ヴリユ・エ・ル・パピヨン」¥3,500/awai
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
合わせたチョコレートは「CLASSIC」¥1,296(Minimal) ※「awai」でも購入可能

先のカカオ分の高いチョコレートとは対照的に、次は今回使用した4種類のなかでもっとも甘く、なめらかな口溶けをもつ“ザ・王道のチョコレート”な「CLASSIC」。

 

「bean to bar入門編ともいえる、食べやすく親しみやすいチョコレートです。こちらに合わせたのは、エレガントなワインをうみだす葡萄、メルローを100%使った赤ワイン。PAIRING1で紹介したシルヴァン・ボックの弟分的な存在の造り手です。今回ご紹介するワインはすべて野生酵母を使って発酵をさせ、濾過をせず、添加物もほとんど、またはまったく使わずナチュラルに造られたもの。こちらは黒い果実を思わせる凝縮感がありつつ、酸味が穏やかでするすると飲める優しいワインです」

 

「乳酸をうむマロラクティック発酵をしているのかどうかは不明ですが、少し乳酸のような、ヨーグルトを思わせる風味があるのも特徴。ジャムのように豊かな果実味とチョコレートの甘味がマッチし、ヨーグルトのようなニュアンスがアクセントを添える。甘さと甘さをかけ合わせた、リッチなペアリングです」

 

確かに……!  飲み疲れしない優しさ、穏やかさがありながら果実味たっぷりなワイン×甘いチョコレートの組み合わせは、華やかな香りにもしっかりとした甘味にもうっとりするような満足感があります。チョコレートに黒い果実のジャムをサンドしたかのような、“W主役”感のあるペアリング。こちらもPAIRING2と同じく両者がどちらも引き立つペアリングですね。

 

魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
■PAIRING 4. ナッツの余韻が深く残る「ナッティなチョコレート×甘口ワイン」
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
合わせた甘口ワインはフランス・シュッドウエストの「ブラスト 2019/シャトー・レスティニャック」¥9,500/awai
魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合
合わせたチョコレートは「NUTTY」¥1,404(Minimal) ※「awai」でも購入可能

最後に合わせたのは、「Minimal」を代表するタブレット。甘く芳ばしい、飴がけナッツのような味わいをもつチョコレートです。

「ヘーゼルナッツ、カシューナッツ、アーモンドといったナッツの香りと風味を感じるチョコレート。親しみやすい甘さとコクがあります。こちらに合わせたのは、とろっとしたテクスチャーでドライレーズンのような凝縮感のある甘味が口のなかに広がるワイン。濃厚な甘さのなかに酸とかすかな苦味があり、ベタッとした甘口ワインではなく飲みやすいのが特徴です」

 

「甘みがあるというよりナッティな香り、味わいが際立ったチョコレートなので、チョコレートの糖分を甘口ワインで補うようなイメージで合わせました。余韻にナッツの風味が感じられる、リッチな組み合わせ。同じ“リッチ”という言葉を使いましたが、先のペアリングは甘味×甘味、こちらは甘味→余韻。異なる方向性のペアリングです」

 

なるほど……! チョコレートとワインの甘味が一体化したあと、後口にナッツのふくよかな余韻が残ります。チョコレート、ナッツ、ドライレーズンで口内調味を楽しむかのような、複雑味と奥行きのあるペアリング。価格的にも贅沢なワインなので、食後などに少しずつ大切に味わいたい組み合わせです。

 

今回はカカオ豆と砂糖だけでつくるチョコレートとワインのペアリングをご提案いただきました。副材料を含まないチョコレートだからこそ、カカオ豆のキャラクターが立ち、しっかりとした個性が感じられます。個性が際立っているからこそ、酸味がある、果実味がある、渋みがあるなど、ワインとの共通項も探りやすいといえるかもしれません。

 

共通項を見いだして“調和”をテーマにした今回のペアリングでも、調和の方向性はさまざま。調和の先に広がる味わいに予想外の展開があるのも嬉しいサプライズ。チョコレート・ペアリング第1弾に続き、今回も楽しくおいしく、興味深いペアリングをご提案いただきました。「awai」では試飲や角打ちが楽しめるほか、取り扱いのある6種類の「Minimal」のチョコレートに合うワインを提案してもらうことも可能(今年2月には「Minimal」のチョコレートにシェリーを合わせるイベントを開催されたとか)。ぜひお好みのフレーバーに合うチョコレート・ペアリングを相談してみてください。シンプルに丁寧に作られたチョコレートと丁寧に手当てされた葡萄からナチュラルに造られたワインが織りなす、美しい調和が味わえるはずです。

 

魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合

 

 

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〈About WINE SHOP〉

 

awai

 

赤坂のビアバー「sansa」が姉妹店として2021年9月9日(木)にオープン。フランスのワインを中心に、イタリア、スペイン、チェコ、ハンガリーなど各国のワインをラインナップ。そのほかクラフトビールや焼酎も少量取り扱うほか、店主が惚れ込み、「sansa」でも使用している木村硝子店のグラスや食材を販売。角打ちや試飲もできる。

※今回紹介したワイン、チョコレートはすべて「awai」で購入可能。

 

住所:東京都港区六本木6-6-2 エスポワール六本木1F

TEL:未開通(SNSより連絡可能)

営業時間:14:00〜20:00

定休日:水曜

 

https://awai.wine/

Instagram : @awai.wine

facebook : awai

 

〈教えてくれた人〉

 

「awai」「sansa」スタッフ  岸部兼太郎さん

 

バイクショップに勤務したのち、神奈川・藤沢のワインショップ「ロックス・オフ」でナチュラルワインの魅力に開眼。2016年〜2017年、フランス・ボージョレのワイナリーで研修。帰国後は都内でいくつかの飲食店での勤務を経て「sansa」に入社。「awai」でワインのセレクト&サービスを担当するほか、「sansa」ではキッチンに入ることも。

魅惑のチョコレート・ペアリング-ナチュラルワインショップ「awai」の場合

 

〈今回紹介したチョコレートはここで買えます〉

 

Minimal 富ヶ谷本店  ほか各店舗、公式オンラインショップで購入可能

 

住所:東京都渋谷区富ヶ谷2-1-9

TEL:03 6322 9998

営業時間:11:30〜19:00

無休

Instagram : @minimal_benatobarchocolate

 

公式オンラインショップ
https://mini-mal.tokyo/

 

※新型コロナウイルスの流行事情に鑑み、掲載店舗の営業時間や休日など最新情報については各店にお問い合わせください。

 

 

文・門前直子

フリーランス エディター/ライター/プランナー。ハースト婦人画報社『エル・ジャポン』『エル・ガール』「エル・オンライン」編集部を経て独立。 主にフード、ファッション、ライフスタイルのジャンルで活動。セレクトショップ「ガリャルダガランテ」「リヴェタート」でフードのセレクトやフードイベントの企画も担当。J.S.A.ワインエキスパート取得。

インスタグラム:@gkgkmgmg