「高カカオチョコを毎日食べよう」「カカオポリフェノールがアンチエイジングに効く」という話が一般的になってきて久しいが、これは慶応大の井上教授の功績といっても過言ではないだろう。

 

食品が持つ抗酸化作用を研究して12年。何をどのように摂取すれば老化や不調などの“からだの劣化”につながる活性酸素を防ぐことができるのかを調査・分析を重ねてきた井上教授から「高カカオのアーモンドチョコ8粒を毎日食べるといい」と聞いた。そのアンチエイジング効果は、試験管での実験結果でも一目瞭然だが、それより井上教授(60代)のつるつるお肌(推定肌年齢40代)に十分説得力がある。

 

私が取材終わりのその足で、高カカオアーモンドチョコを買いに走ったことはいうまでもないが、さてチョコレートとアーモンドの最強スーパーフードを一緒に食べるとどのような相乗効果が得られるのだろうか。カカオの健康・美容効果を考えるAPeCAアンチエイジング企画、第一回目。

 

文・小泉恵里

写真・チダコウイチ

 

健康効果の面からも注目を集めているチョコレートやカカオ。APeCAではカカオが持つ健康・美容効果に着目し、アンチエイジング分野でのリサーチを進行中だ。アンチエイジング企画の第一回目として、カカオの抗酸化研究の第一人者で『カカオでからだの劣化はとまる』(世界文化社)の著者でもある慶應大学医学部・井上教授にお会いした。

 

カカオでからだの劣化はとまる?! 抗酸化研究の第一人者、慶應大学医学部・井上浩義教授に聞きました

慶應大学医学部・井上浩義教授

 

 

シミ、便秘、肥満、高血圧…身体の衰えに悩める大人たちこそ、高カカオチョコを食べるべき、というのは井上教授の著書で述べられていること。肌のターンオーバーを早めたり、ボケ防止や動脈硬化予防に効果があったり。この本を読むと、まだまだ知られていないカカオのすごい効能に驚く。

 

カカオでからだの劣化はとまる?! 抗酸化研究の第一人者、慶應大学医学部・井上浩義教授に聞きました

井上教授は福岡市出身。九州大学の医学部卒業後、製薬会社で研究者として入り、その後久留米大学医学部教授となり、2008年から慶応大学医学部に移り現在にいたる。井上教授の研究室である慶応技術大学医学部化学教室は「新たな薬を作るラボとしての機能を持つ研究室です。学生たちと皆でわいわい言いながら活動しています。主に、天然物の中から抗酸化・抗糖化物質を取り出して研究しています」

 

現在、日本抗加齢医学会の評議員としても活躍中の井上教授はナッツやカカオなど食品の抗酸化研究の第一人者として知られる存在だ。井上教授がカカオを掘り下げる前に、抗酸化成分の研究をスタートしたきっかけとなった食品はナッツだったという。

ナッツ農家は肌がきれい、からスタートしたアーモンド研究

ナッツの研究を始めて12年。そのきっかけはカリフォルニアにあったそうだ。

 

「12年前、学会でカリフォルニアに行った時に、ご縁があってナッツ農家のお宅に泊めていただきました。そこで出会った農家の人たちの肌が綺麗なのに驚きました。農業や漁業をされている方は強い紫外線を浴び続けるので首に亀甲状のシワが出来るのですが、ナッツ農家の方々にはシワが一切なかった。それはどうしてかと聞いたらアーモンドを食べているからだと。帰国後に調べてみたらビタミンEが多く含まれているなど、着目すべき成分が発見されました。それがナッツの抗酸化研究のスタートでした」

 

カカオでからだの劣化はとまる?! 抗酸化研究の第一人者、慶應大学医学部・井上浩義教授に聞きました

その後、井上教授が日本テレビの人気番組「世界一受けたい授業」に出演し、アーモンドのアンチエイジング効果について話したところ、巷は一気にナッツブームになった。

 

「アーモンドだけでも2.4倍の輸入量になったそうです。アメリカ大使館から聞いたのですが、この10年間で一番伸びている農産物がナッツ類だということがわかりました。昔はおつまみとしてのナッツだったので塩味がついたものでしたが、健康効果のためには無塩が大事ということで、今では無塩のナッツが主流になりました」

 

ナッツの輸入量が2.4倍も増え、味付きナッツ主流だったナッツ系商品の流れを完全に変えたという功績には目を見張るものがある。

 

カカオでからだの劣化はとまる?! 抗酸化研究の第一人者、慶應大学医学部・井上浩義教授に聞きました
井上教授の飲み物はホットココア
1日8粒のアーモンドチョコで便通と皮膚のターンオーバーが改善される

チョコレートとの出会いは、明治とアーモンドチョコレートを共同開発したことがきっかけだったという。そこから、抗酸化作用研究の一環としてのカカオ研究が本格的にスタートした。アーモンドとチョコレート、この2つのスーパーフードを一緒に摂取すると嬉しい効果が発揮されるという結果も井上教授と明治の共同研究によって実証されている。

 

「日本人の食物繊維摂取量が世界に比べて足りていないことにも着目しました。欧米では20〜80gの食物繊維を1日の摂取目標に掲げているのに対し、日本人の目標摂取量は14gと極端に少ない。アーモンドなら、1日に25粒食べることで食物繊維が増えて便通もよくなります。けれど25粒を毎日って多いと思いますよね。その場合はアーモンドチョコにすれば1日8粒でいいんです」

 

日本人の食物繊維不足は大腸がんリスクなどとも相関する大きな課題だが、アーモンドは全てのナッツの中で最も食物繊維を多く含んでいるため、不足を補うのにも最適だ。しかし、毎日25粒も食べるのは厳しい。そこで「チョコレート自体にもたくさんの食物繊維が含まれているので、ナッツと一緒に食べればその相乗効果も期待できます。昨年論文でも、1日8粒のアーモンドチョコで便通と皮膚のターンオーバーが改善されると発表しました」

 

食物繊維が増えると便通が増える。それが肌のターンオーバーを進めるという結果なのだそう。さらに数ある抗酸化成分を含む食品のうち、高カカオチョコレートが特におすすめの理由を伺ってみると

「ポリフェノールは腸からの吸収が難しい成分ですが、油分と一緒に取ると体内に取り入れやすくなります。チョコレートには脂分も含まれているので、ポリフェノールを効果的に吸収する構造をしています。チョコレートを食べると30分ほどでポリフェノールの血中濃度が上がります。カカオポリフェノールの濃度が高くなるほど活性酸素を消去する力が高いことが学術論文で明らかになっているため、できるだけカカオが豊富に含まれた高カカオチョコレートを推奨しているのです」

 

現代人の天敵の一つとして認知されているのが活性酸素。その活性酸素の結果が糖化であり、それを防ぐ食材としてもカカオは期待されているのだ。

 

カカオでからだの劣化はとまる?! 抗酸化研究の第一人者、慶應大学医学部・井上浩義教授に聞きました

カカオの抗酸化作用を証明するデータを見せてください、とお願いしたところ井上教授の鞄の中から出てきたものは、取材日前日に研究室で実験してくれたという試験管。

 

奥のラベルには左からアルブミン(タンパク質)、グリセルアルデヒド (糖類) 、カカオEX(カカオ抽出成分)がある。そのうち、アルブミンとグリセルアルデヒドを合わせたものが手前左の試験管。タンパク質と糖を混ぜたことで色が茶褐色になり完全に糖化(活性酸素の結果)が進んでいる。それに対して、アルブミンとグリセルアルデヒドを合わせたものにカカオEXを加えただけで、手前右の試験管のようにほぼ透明=糖化を防げるという実験結果がはっきりと見えた。タンパク質や糖質を摂取しても、カカオを食べれば糖化=からだの劣化、を防げることが一目でわかる。

 

カカオでからだの劣化はとまる?! 抗酸化研究の第一人者、慶應大学医学部・井上浩義教授に聞きました
奥の試験管には左からアルブミン(タンパク質)、グリセルアルデヒド (糖類) 、カカオEX(カカオ抽出成分)
カカオでからだの劣化はとまる?! 抗酸化研究の第一人者、慶應大学医学部・井上浩義教授に聞きました
カカオ抽出成分を入れた試験管は透明のまま!糖化していないことがわかる

「チョコレートを毎日食べたら太るのではないか、とカロリーを気にする人もいるかもしれませんが、アーモンド入りチョコレートの場合、1日8粒(アーモンドは約1.1g/粒、チョコレートは約2.7g/粒)で、おにぎり約1個分のカロリー(約200kcal)です。その分、ほかの間食を控えれば問題ないと思います。高カカオチョコレートなら糖質量が少ないので安心です」と話す。

 

1日8粒のアーモンドと高カカオチョコレート、明日から始めよう。

これで体のあちこちの劣化がとまってくれるかもしれない。

 

 

PROFILE

 

井上浩義

慶應義塾大学医学部化学教室教授。医学博士、理学博士。

1989年九州大学大学院理学研究科博士課程修了、久留米大学医学部教授などを経て、2008年から現職。日本抗加齢医学会評議員、日本薬理学会学術評議員など。平成22年度文部科学大臣表彰科学技術賞、化学コミュニケーション賞2012、着任後2018年まで10年連続慶應義塾大学医学部Best Teacher Award(1位)など受賞多数。日本における油・ナッツ類研究の第一人者。著書に『知識ゼロからの健康オイル』(幻冬舎)、『知らないと危ない 毒の話』(アーク出版)、『カカオでからだの劣化はとまる』(世界文化社)など多数。