カカオ産地別チョコレートを食べ比べ。健康効果たっぷりのハイカカオで幸せを感じよう

私たちの生活に身近なチョコレート。かつては砂糖やミルクがたっぷり入った甘いものが主流でした。しかし近年では原材料のカカオに含まれる成分に注目が集まり、健康効果が期待できるカカオ含有率70%以上の「ハイカカオチョコレート」の人気が高まっています。
また、ワインやコーヒーと同様に、カカオも産地や豆の品種により異なる風味や味わいが楽しめることも広く知られるようになりました。
今回はカカオの歴史や特徴に触れながら、その土地ごとに育てられるシングルオリジン・チョコレートを食べ比べてみたいと思います。

チョコレートの原材料であるカカオ。その歴史は古く、マヤ文明の時代からすでにメキシコ南部などで栽培されていました。当時は大切な儀式用に、乾燥させたカカオ豆をすり潰し、とうもろこしの粉や唐辛子とともに水で溶かして飲んでいたそう。そのほか、滋養強壮剤としても使われており、貨幣代わりに取引されることも。カカオの学名であるギリシャ語の「テオブロマ(神の食べ物)」も、こうした役割から名付けられたのかもしれません。

カカオにはさまざまな栄養素が含まれています。代表的なのは「カフェイン」と「テオブロミン」。紅茶やコーヒーにも含まれているカフェインは、ハイカカオになればなるほど多く含まれます。また「テオブロミン」は、チョコレートの苦みのもとになるカカオ特有の成分。カフェインに似た性質を持っており、集中力を高める、血行促進、リラックス効果などが期待できます。また、抗酸化作用のある「ポリフェノール」や、腸内環境を整える「カカオプロテイン」も豊富。美容やアンチエイジング効果も見込めます。

そのほか、ドラッグとよく似た性質の「フェネチルアミン」、マリファナと似た「アナンダマイド」が含まれています。さらに、カカオの香り成分には高揚感や多幸感をもたらす「エンドルフィン」という脳内ホルモンを放出させる働きもあり。
チョコレートを食べると何となく幸せな気持ちになるのは、このような成分が効果的に作用しているからなのでしょうね。
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◆参考資料
・日本チョコレート・ココア協会
チョコレートの香りの生理心理効果(P5)
www.chocolate-cocoa.com/symposium/pdf/sympo_03b.pdf
デビッド・ベントン「チョコレートの魅力:それは心理的なものか生理的なものか?
www.chocolate-cocoa.com/symposium/pdf/sympo_16d.pd
・健康ポータルサイト「HelC+」
ドクター直伝「脳を活性化させるチョコの食べ方」
https://www.health.ne.jp/library/detail?slug=hcl_5000_w5000459
熱帯植物であるカカオは、赤道を挟んで南北緯度20度以内、年間平均気温が27℃以上という高温多湿な地域で育ちます。
では、それぞれの地域で育ったカカオで作るチョコレートは、味や風味に違いはあるのでしょうか?

イタリアのチョコレートブランド「ドモーリ」社が販売しているシングルオリジン(単一産地)のアソートセットを実際に食べ比べてみましょう。
用意したのは、シングルオリジン ナポリタン(カカオ産地別チョコレート6種)。
チョコレート探検家・チョコレートくんが手掛けるブランド「ショコラ ドゥ シマ」で購入したものです。

カカオの品種は、エクアドルのみ固有種(アリバカカオというナショナル種)ですが、そのほかの国は「トリニタリオ種」に統一されていいます。

原材料はカカオマスと砂糖のみ。カカオマスとは、発酵させたカカオ豆を焙煎し、皮を取り除いて細かくすり潰しペースト状にしたもののことです。カカオ含有率はどれも70%に固定されており、余分なものは一切入っていません。そのため、特徴がより分かりやすいのではないでしょうか。

ここからは産地別に詳しく見ていきましょう。

南アメリカ西部に位置する「ペルー」。世界から見たカカオ生産量ランキングは年間約12万トンの8位。1位のコートジボワールが222万トンほどなので、かなりの差がありますが、フローラルな香りが際立つため、近年人気が高まっています。

口の中でゆっくり溶かしてみると、キャラメルを思わせるまろやかな甘みと、紅茶のような華やかな香りが広がります。苦味や酸味は少なめで、ローストしたような焙煎香が余韻に残ります。甘めの風味なので、ホットミルクと合わせたくなりました。

南米の北西部に位置する「エクアドル」。多数のカカオ品種が栽培されていますが、特徴的なのは、エクアドルにしかない固有品種”アリバ種”があること。
カカオの原生種に近い品質を持ち、独特な香りがあることから「フレーバービーンズ」とも呼ばれています。

食べてみると、花の蜜を思わせるような甘酸っぱい風味。苦味は少なめで、ジャスミンのようなエキゾチックな香りが余韻に長く残ります。

東アフリカに位置する「タンザニア」。カカオ生産量は世界22位。およそ1.5万トンと希少種ですが、土壌や気候がカカオ栽培に適しており、表情の豊かなアロマが楽しめるとして多数のクラフトメーカーが注目しています。

これまでのペルーやエクアドルとは明らかに違います。香りはほんのりフローラルですが、深煎りしたコーヒー豆のような、ナッツのような力強い風味。渋みにつながるような苦味や酸味があり、どっしりとした男性的なイメージです。

南アメリカ北部に位置する「ベネズエラ」。生産量ランキングは16位の2.5万トンですが、希少種と言われる品種「クリオロ種」の栽培が盛んで、世界全体生産量の3分の1をベネズエラが占めています。
本品のベネズエラチョコレートはトリニタリオ種ですが、別途「クリオロ種」が楽しめる商品もあります。

こちらを味見してみると、ナッツのような香ばしさとクリームのようなコク深さあり。スッキリとした酸味があり、他のチョコレートより口どけが良いようにも感じられました。

アフリカ東海岸にある、世界で4番目に大きな島国「マダガスカル」。近年の年間カカオ生産量は1.1万トンと非常に少ないのですが、北西部のサンビラーノ渓谷や中央部のアンバンジャ地区の熱帯林で高品質なカカオ栽培が行われており、世界のトップシェフやクラフトチョコレートメーカーからの注文を受けています。

味わいはかなり個性的。ベリーのような果実の酸味が際立っており、フルーティーで華やかな香りと、ほのかな苦味が余韻として長く残ります。カカオがフルーツであることを思い出させてくれるような一枚です。

南米北部に位置する「コロンビア」。生産量ランキングは約6万トンの10位ですが、国を挙げてカカオ栽培に取り組んでおり、同じ品種でも地域により特徴が少しずつ異なるそう。

本品のコロンビアチョコレートは、とろりとしたなめらかな口当たり。シナモンのような独特の香りを感じました。また、赤ワインを思わせるようなしっとりとした渋みが感じられます。赤ワインと合わせたくなるような一枚です。

ひとくちにチョコレートといっても、生産地別で味わってみると、それぞれに個性があることが分かりました。これは、砂糖が少なめのハイカカオチョコレートだからこその違いですね。ドモーリ社の本品なら国別の6種が一度に楽しめるので、気軽に自分好みのチョコレートを探せそうです。また、カカオ品種別などでの食べ比べも楽しそうですね。
また、先にあげたチョコレートの成分は、カカオ含有率が高いチョコレートになるほど高濃度で含まれています。新型コロナウイルスの影響で先行きが見えず、不安な気持ちが募る今だからこそ、ハイカカオチョコレートで幸せな気分を得てみてはいかがでしょうか。
文・写真:田窪 綾
■掲載商品:ドモーリ シングルオリジン ナポリタン(カカオ産地別チョコレート6種)860円+送料
(購入先:ショコラ ドゥ シマ)
https://chocolatducima.com/collections/domori/products/cacaoorigin6
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■参考資料
日本チョコレート・ココア協会 世界国別カカオ豆生産量推移
http://www.chocolate-cocoa.com/statistics/cacao/product_w.html
GLOBAL NOTE 世界のカカオ生産量 国別ランキング・推移
https://www.globalnote.jp/post-5654.html
ショコラナビ カカオの産地ごとの味と特徴とは?
https://suit-chocolate.com/sannti/#i-4