東京の工房でBAR専用のチョコレートを製作しながら、地元・青森県弘前市でチョコレート専門店『浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)』を経営するショコラティエの須藤銀雅さん。それぞれの場所から得られる刺激やインスピレーション、そして癒し。前編では、須藤さんがチョコレートを作る上で大切にしていることや、イマジネーションは一体どのようにして培われているかを語ってもらってきた。後編では、須藤さんが勧める青森のすてきな場所や、地元で事業をする魅力を伺う。

 

文:西村依莉

写真:チダコウイチ

 

青森と東京で活躍するショコラティエ・須藤銀雅さんが案内する青森県弘前のいいところ(後編)
青森と東京で活躍するショコラティエ・須藤銀雅さんが案内する青森県弘前のいいところ(後編)

――弘前のお話ももう少しお伺いしたいんですが、『浪漫須貯古齢糖』の他に、アイスクリーム屋さんもあるんですね。

 

はい、『中三』という青森の老舗デパートの地下に『カカオスタンド』というお店を今年オープンしました。アイスクリームは『浪漫須貯古齢糖』でも食べられるんですが、弘前の街の中心にある『中三』に出店したことで、より気軽に地元の人に楽しんでもらえるかなと思っています。『コロンビア』『マダガスカル』と言う風にカカオの産地別のフレーバーの他に、『木苺バルサミコ』や『ピスタチオ』などカカオのアイスと相性のいいフレーバーもあるのでぜひ組み合わせを楽しんで欲しいです。そうそう、うちのアイスクリームは、コーンも『浪漫須貯古齢糖』で毎日一つ一つ手作りしていて、カカオニブをトッピングしたり、アイス以外の部分でもこだわっているんです。

 

――弘前の新名物になりそうですね!

 

そうなるといいですが(笑)。中三には『中みそ』という味噌ラーメンのお店があって、ニンニクが効いた味噌ラーメンなんですけど、弘前市民のソウルフードなんですよ。『中みそ』を食べた後のデザートとして、『カカオスタンド』のアイスクリームを楽しんでもらえると良いなと思います。

 

青森と東京で活躍するショコラティエ・須藤銀雅さんが案内する青森県弘前のいいところ(後編)
青森と東京で活躍するショコラティエ・須藤銀雅さんが案内する青森県弘前のいいところ(後編)

――そういえば、カカオのクラフトビールも作ってらっしゃいましたね。

 

はい、地元のブルワリー『Be Easy Brewing(ビーイージーブルーイング)』とコラボして、カカオハスクを使ったビールを作りました。チョコレート系のビールを作る時、カカオニブ(カカオの豆の中身)を使うのが一般的なんですけど、それだとあまり味が出にくいので、カカオハスク(皮)という香りが強い部位があって、本当だったら捨てちゃう部分なんですけど、それを使ってみませんか?と言って作ってみたらすごくおいしかったんで商品化された、と言う感じです。このお店はカカオのビール以外にもフレーバーの種類がたくさんあって、どれも美味しいです。それから弘前市内にはシードルの蒸留所が多くて、もちろん日本酒もおいしい。とにかくお酒が楽しめる場所だと思います。弘前へ行った際は、ぜひ『浪漫須貯古齢糖』のチョコレートと一緒にお酒も楽しんでほしいです。

 

青森と東京で活躍するショコラティエ・須藤銀雅さんが案内する青森県弘前のいいところ(後編)
青森と東京で活躍するショコラティエ・須藤銀雅さんが案内する青森県弘前のいいところ(後編)
『Be Easy Brewing』のビール工房の様子。ここでカカオハスクを使ったクラフトビール『好きだんず』が生まれた。

今、青森の四季をテーマにしたチョコレートの商品開発をしているんです。弘前らしい食材を使って、春夏秋冬の4枚のチョコを作ろうとしています。チョコレートってパウダー状であれば、チョコレートの元を作っているコンチングマシーンにパウダーを入れてもうまく混ざってくれるんです。そこで酒粕パウダーを混ぜてみたり、春夏秋冬を感じる食材をパウダー化したものを混ぜて商品化しようとしているんです。春は桜の塩漬け、夏はカシスと、食べると喉でパチパチするパウダーを混ぜて夏祭りっぽいイメージで。秋はドライのリンゴで、冬は日本酒と言うことで、酒粕パウダー。これは元々弘前大学の学生さんがパッケージをデザインするという実習があって、その中身となるチョコレートなんですよね。なので、それらしいデザインのパッケージが完成するはずです。

 

――学生の課題の中身を本物のショコラティエの方に依頼するって贅沢な授業ですね〜! そんな風に地元とコラボレーションをするようになったきっかけって何だったんでしょうか?

 

「東京で1人でチョコレート作りをしていた時は、自分が楽しければそれでいいか、という感覚だったんです。BARに行くのも好きだし、お店の人たちからも感謝されて、一般販売もせずにクローズドの世界が居心地良く感じていたんですけど。ある時、2017年頃かな、僕の母校が過疎化で廃校になってしまったんです。閉校式にも行って、その時に、地元を放っていたらダメだなと思って。自分は今楽しいけど、肝心の地元の方を放っておくのは良くない、と感じたんですよ。その頃って、カカオ豆を選んで焙煎してチョコレートにする、ビーントゥーバーが日本全国で流行りつつあったけど、東北にはほぼなかったんです。青森ではもちろんゼロだったし。これだけ流行ってきているし、僕がやらなくても青森でも誰かがやり始めるんだろうな、と思っていたけど、どうせ誰かがやるなら自分でやっちゃおう! と思い立ち、弘前で『浪漫須貯古齢糖』を始めたんです」

 

青森と東京で活躍するショコラティエ・須藤銀雅さんが案内する青森県弘前のいいところ(後編)
『浪漫須貯古齢糖』の店内。お店の雰囲気を作っているアンティークの什器がチョコレートのよう。

――いざ地元で事業を起ち上げられて、いかがでしたか?

 

弘前には僕と同じように小さな規模で始めた事業者の人が多くて、そういう異種専門店の人たちと繋がることができたので、すごくよかったです。彼らと飲みに行って刺激を受けることはたくさんあります。チーズ専門店とか燻製のお店とか、ちょっとニッチなお店が結構あるんですよ。東京にいたら繋がりにくそうな他ジャンルの人の話を聞いて『チョコにチーズを入れてみるのもいいかも!』とヒントをもらったり。事業に関しても、ものづくりに関しても、それぞれの考え方があって、すごく面白いんです。専門性を持った人たちとカジュアルに話せる機会に恵まれいてる点は、東京では得られない刺激です。それから、大きな機関も巻き込んでいろんなことをやりやすい。カカオについてもっと深く研究開発したいと思った時に、市役所に大学の研究者を紹介してもらえて、香気成分の研究をより深く進めたり、先程のような四季の味のチョコレートを作ることができました。

 

――弘前ではお休みの日によく行く場所はありますか?

 

実家が弘前の中心部から少し離れているので、弘前の店に出勤する時はホテルから通って、休みに実家に帰っているんですけど、すごく好きな場所が岩木山にある岩木山神社です。うちがここの家系にあたるんですよ。実家もここからすごく近くて、夏に帰省すると全然神社に人がいなくて静かですごく神秘的ないい雰囲気。眺めも良くて、ちょっとした弘前の穴場だと思います。地元では『お岩木さま』って親しまれてる神社で、岩木山がご神体の結構大きな神社なんですよ。僕にとってのパワースポットですね。新宿中央公園もそうなんですけど、自然に触れる時間が好きなんです。緑のある場所でリフレッシュするのが気持ちよくて、リラックスしていたら思いつくこともあるので、大切な時間ですね。

 

青森と東京で活躍するショコラティエ・須藤銀雅さんが案内する青森県弘前のいいところ(後編)
青森と東京で活躍するショコラティエ・須藤銀雅さんが案内する青森県弘前のいいところ(後編)
夏に岩木山神社へ行ってみたが、お盆が近かったからか、好天に恵まれたからか、大盛況。人がたくさんいても気持ちの良い場所だったので、須藤さんが言うように人がいないともっと空気が澄んで神秘的な雰囲気を味わえたに違いない。

浪漫須貯古齢糖(ロマンスチョコレート)

青森県弘前市亀甲町5番

0172-88-9015

https://romance-cacao.shop-pro.jp

 

CACAO STAND(カカオスタンド)

青森県弘前市土手町49-1 B1F

 

Be Easy Brewing(ビーイージーブルーイング)
青森県弘前市松ケ枝5-7-9
0172-78-1222
https://www.beeasybrewing.com

 

岩木山神社

青森県弘前市大字百沢字寺27

0172-83-2135

https://iwakiyamajinja.or.jp

 

 

 

文 : 西村依莉

編集者・ライター。1960~70年代を中心とした昭和期のカルチャーと猫やファッション、ライフスタイルをテーマに書籍や雑誌、WEBで活動中。近刊に『スペースエイジ・インテリア』(グラフィック社)、『桂浜水族館公式BOOK ハマスイのゆかいないきもの』(実業之日本社)など。

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