東京・九段下には、都心とは思えないほど静かで、緑に囲まれたうつくしい空間がある。1927年に竣工され、2018年には登録有形文化財に登録された旧山口萬吉邸だ。現在は「kudan house(九段ハウス)」として、会員制のビジネスイノベーション拠点となっている。

 

文・カデカワミズキ

写真・チダコウイチ

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

秋風の冷たい満月の日。さまざまなアプローチからマインドフルネスを体感するメディテーション・フェスが、この kudan house で開催された。いい意味でイベントらしさの無い会場の雰囲気を作っているのは、この邸宅そのものだろう。一軒家に集まる参加者たちは、まるでホームパーティに呼ばれた友人同士だ。

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。
会場の庭では、場を浄化するといわれるハーブ、ホワイトセージが焚かれていた

主催は株式会社 suwaru(スワル)。ネパール出身のハタヨガ(※1) 指導者、ニーマル氏が日本で瞑想(メディテーション)指導を行うために設立した会社だ。

 

(※1)ヨガ(ヨーガ)には大別するとふたつの流れがある。紀元前からの伝統を2〜3世紀にまとめた古典ヨガと、12〜13世紀以降に大成したハタヨガである。ハタヨガは「心の作用」の統御をめざすもので、古典ヨガよりもいっそう精神生理学的な面を持つ。(参照『ヨーガの哲学』立川武蔵, 2013)

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。
にこやかに撮影に応えてくださったニーマル・ラージ・ギャワリ氏

ニーマル氏は9歳からハタヨガを学び続け、世界中で指導を行うプロフェッショナル。suwaruの創立前から日本でも指導を始めていた。瞑想を中心としたニーマル氏のメソッドを教える場として suwaru が誕生したのは、代表取締役を務める石古さんとニーマル氏の出会いがあったからだ。

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。
はつらつとした笑顔で会場にいた代表取締役の石古さん。

実は石古さん、二度の脳梗塞を患っている。ニーマル氏から瞑想、アーユルヴェーダを学び、自身の健康状態が劇的に改善したという経験から、このメソッドを世に伝えていきたいと、ニーマル氏と共に suwaru を設立した。

 

近年流行りの「マインドフルネス」、その実践としてのヨガや瞑想に興味を持ちながら、きっかけを掴み損ねていた筆者。今回のイベントで初めての瞑想・ヨガ体験をさせてもらった。

 

カカオを飲み、こころを開くカカオセレモニー。
suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

窓から差し込む柔らかい光、ステンドグラスのスタンドライトの光。薄明るい部屋の中で、カカオセレモニーが始まった。

 

カカオセレモニーというもの自体、筆者は今回のイベントを通して知った。ヨガや瞑想に親しんでいる読者なら既に聞いたことがあるかもしれない。どうやら、カカオで作ったドリンクを飲むことで、その後に行う瞑想の効果を高める儀式のことのようだ。

 

日本ではまだ珍しいこの儀式も、海外ではすでに浸透しているようだ。グーグル先生に英語で話しかけると、さまざまな検索結果が得られる。古代から神的行事に扱われてきた歴史を持つカカオは、瞑想の際、ハートを開く効果があると信じられているのだ。

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

ボウル一杯のカカオドリンクが運ばれてきた。水で溶いてあるようだ。サラサラとしている。グアテマラ産のカカオをベースにしたドリンクミックスパウダーは、日本人向けの甘さにするため、現地で飲まれているものよりも、うんと砂糖を少なくしてもらっているのだそうだ。口に含むと、はっきりとした辛味を感じる。チリパウダーが入っていた。普段、食べる「チョコレート」としてカカオに親しんでいる方には驚きかもしれないが、カカオは飲み物としての歴史の方が長い。カカオは古くから、唐辛子などの香辛料と合わせて飲まれていた。

 

ドリンクには辛味だけでなく、ビターながら程よい甘味、それから、きっとカカオ自体の質が良いからだろう、ナッティーさやフルーティさまで感じられた。ボウル一杯分のカカオドリンクは、飲み干すとそれなりにお腹に溜まった。

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

カカオセレモニーの司会は、都内で複数のジュースバーを経営する Sky High 株式会社のmami さんだ。このカカオドリンクミックスも、彼女が気に入って仕入れているもの。

 

ドリンクを飲み干した参加者に、穏やかな声で語りかけていく。

 

では、みなさん。チャクラを意識してみましょう。

 

チャクラ(※2) ってどうやって意識するんだろうか、少年漫画でしか聞いたことがないな……なんて思いながら、みようみまねで進めていく。身体の中のエネルギーを意識する感じ、それを手のひらに貯める感じ……。手のひらを擦り合わせて(エネルギーを貯める)、それをハートのに持っていく(胸の中心に重ねる)mamiさんの仕草を追っていく。

 

更にmamiさんが、わたしたちに語りかける。穏やかな、自分自身との対話の時間が始まる。

 

(※ 2)チャクラは、生命エネルギーが集中している場所であり、目には見えないが自身の身体と同じような形で存在する「微細な身体」にあるものだと考えられている。(参照『ヨーガの哲学』立川武蔵, 2013)

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

これから、自分の長所を、挙げてみてください。なんでもいいんです。人や、動物や、地球に優しいところ。仕事を頑張っているところ。

 

みんなが黙る。わたしも黙って、自分の長所ってなんだろう、と考えてみる。

 

自分に感謝してください。人は、完璧ではありません。完璧でない自分を、絶対的なセルフラブで包んであげてください。頑張っているあなたを、褒めてあげてください。

 

カカオドリンクを飲んでリラックスした身体に、自己との対話を促すやさしい声がする。完璧でない自分を受け入れる、というのは大事な工程だと思う。そうすることで、人にも優しくなれると思うからだ。

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

mamiさんの導くハート瞑想でかなり気持ちがほぐれたところで、アコースティックギターの音色にのせた歌が始まる。インドのものだと言う。言葉が通じなくても、歌はいつも私たちに寄り添ってくれる温かみを持っている。

 

カカオセレモニーの最後には、ヨガの呼吸法を習った。

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

ふたつの基本的な呼吸法を教えてもらう。会場の椅子のうえで脚を組むのが、なんだかおもしろかった。この日まで、完全に「未知のもの」だった瞑想とヨガが、実にすんなりと私のこころと身体に受け入れられていった。

 

 

プロに身を委ねて、ヨガ体験。

力を抜いて身体全体を任せるだけで、正しいヨガのアサナ(ポーズ)を取ってくれる、という yogic massage(ヨギック・マッサージ)のコーナー。ヨガ経験の一切ない筆者が、体験してきた。

 

洋館の2階に作られた疊間に通され、マットの上に仰向けになるよう、指示される。力を抜く。すると……

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

お、おお?

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

おおお。この辺りでセラピストさんに「痛くないですか、すみません」と気遣われた。かなり体が伸ばされている感じはあるものの、どちらかというと気持ちいい。

ヨガはそもそも内臓を動かす健康法であるそうだが、本当に身体の中が動いているような気がする。ぐぐぐっ。うん?

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

気がつくと宙(ちゅう)に浮いていた。写真で見直してみると、とても綺麗な姿勢で浮いているので、かなりシュールだ。これが正しいアサナ(ヨガのポーズ)なのだろうか。すごい。

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

最後は両腕・両脇を伸ばしてリラックス。体験が終わって立ってみると、なんだか身体がフワフワしていて不思議な感覚だった。ヨガ、すごい。そんな単純すぎる感想が頭に浮かぶ。

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。

正直、会場に足を踏み入れてすぐは、初めての場所に緊張していた。イベントをリラックスして楽しめたのは、この邸宅そのものの佇まいと、最初に受けたカカオセレモニーの瞑想のお陰だったように思う。

 

suwaru(スワル)のメディテーション・フェスで瞑想体験。
今回、筆者が体験したのはカカオセレモニーと yogic massage のふたつだけだが、緑の中でスパが自分に合わせたスパが受けられるプログラムなど、当日の会場では他にもさまざまなプログラムがあった。

次回の suwaru メディテーション・フェス11月19日(金)、今回と同じ kudan house で開催される。予約は公式サイトで受付中だ。筆者のように、これまで全く瞑想やヨガを体験したことがない方にも、既に経験のある方にもおすすめしたい。

 

 

suwaru 公式サイト

https://www.suwaru.co.jp/

 

 

 

文・カデカワミズキ
チョコレートおたくのフリーライター。子どもの頃はチョコ嫌いだったが、ハイカカオが世に出てからはチョコ好きに。クラフトから大手まで、幅広くチョコを愛しています。現在は都内大学で哲学を専攻。「食べる」という行為を考えていきたい。
twitter:@mizuki1010uk