大きく書かれた“CACAO”の文字とポップで可愛いパッケージデザインがネットで目に留まり、Teatis(ティーティス)のことを知った。Good-startと書かれているので美容系のお洒落サプリなのかと調べてみると、アメリカの糖尿病患者向けの粉末飲料だということがわかり、ますます興味が湧いた。

 

スタイリッシュなビジュアル、アメリカで起業、名だたる投資家たちからの1億円を超える多額な投資。これは一体どんな人が、どんな思いでスタートしたビジネスなのだろう。Founder&CEOの高頭博志さんと、共同経営者である奥様を訪ねてみた。「糖尿患者さんの親友のような存在になりたい」と語る2人が思い描く世界はワクワク感と優しさであふれていた。

 

文・小泉恵里

人物撮影・チダコウイチ

写真提供・Teatis Inc.

 

日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」

2021年、Teatisは米国で糖尿病向けの食品メーカーとしてスタートした。現在の取扱い商品は、血糖値を下げる効果のあるスーパーフードパウダー(抹茶風味とレモンジンジャー風味)と、糖質量やカロリーを含むさまざまな栄養素を管理できる完全食(チョコレート風味)の2種類。どちらも現在はアメリカのみの販売で、海藻由来の成分が糖質量や血糖値を管理できるとあって糖尿病の人や糖尿病予備群の人たちの間で話題になっている。

 

CEOの高頭博志さんは東京都出身の現在32才。今までの経歴はというと、テック系ビジネスを開拓し続け、その業界では有名な人。2014年に ネット広告Momentum を設立し、国内初のアド不正検知サービスをローンチ。2017年に KDDI傘下の Syn. ホールディングスに売却した。以来、人々の社会生活向上に寄与するようなスタートアップに出資し続けている連続投資家だ。

 

日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」
Teatis Inc. CEO高頭博志さん
前妻を亡くした経験で、食事療法の大切さを知る

今年に入って糖尿病向けの食品メーカー Teatis を創業した高頭さんだが、アドテックから健康食品という異業界への転身はかなりのレアケース。それは、高頭さんが前妻の闘病をサポートしていた経験が背景にあるという。

 

「前妻が治療の難しいがんを患い、闘病中は僕が食事療法でサポートしていました。毎日食事を作ることも大変でしたが、それ以上に栄養価の数値管理をすることが困難なことでした。そのような経験を経て、疾患を持つ人でも必要な栄養を簡単に摂れるものがあれば良いなと考え始めました」と高頭さん。

 

日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」
スーパーフード配合粉末飲料

健康をキーワードに、何か社会をよくすることが出来ないかと考えた時に頭に浮かんだのは、膨大な数の米国人が糖尿病を患っているということ。アメリカでは健康代替え食品だけで$15B(約1.5兆円)の市場が存在しているが、完全食の製品には、多くの糖質(加糖)、炭水化物、脂質が含まれており、糖尿病の人に向くものが存在していない。そこで、糖尿病患者向けにもっといいものが作れるはずだ、とこのビジネスに着目した。

 

日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」
日本の豊かな食文化をサステナブルな方法で

日本人が完全食を作るのだから、日本の食文化を生かせないかと模索し始めた高頭さん。

 

「日本の豊かな食文化が参考になるのではないかと思ったんです。日本の農産物の中から健康食品になる原料を探そうと日本中をまわる中で、漁業の網漁の時に獲れる大量の海藻に出会いました。魚と一緒に獲れた海藻はそのまま廃棄されるか、海に戻されるだけ。これをなんとか利用できないかと調べてみたら海藻に含まれる海藻ポリフェノールという成分に、血糖値を下げる効果があることが分かったのです」

 

日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」
© Courtesy of Acadian Seaplants Limited
日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」
© Courtesy of Acadian Seaplants Limited

日本人はお茶を飲み、海藻を身近に食べている。世界から見えばまだ未活用のものを活かしていきたい、というのが起業の軸にあるそうだ。「日本が誇る食文化を世界に知らしめたい」と話す。

 

日本で見つけた食材を使って飲料や完全食を商品化していく中で、キッコーマン特別総合病院・特任院長の久保田先生や、米国で栄養系スタートアップを経営している医師Kalista氏など複数の専門家にバックアップしてもらったそうだ。

 

「僕たちが目指しているのは、患者さんたちの生活習慣を変えることです。理性や知識をもって健康的な生活習慣に変わられる人もいますが、それはほんの一部の層です。楽しさやエンターテインメント性を持たせることでより多くの人の食習慣が変わると思うのです」

 

だからこそTeatisは、見た目もイメージも、もちろん美味しさにもこだわっている。

 

日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」

「ポップで楽しい。そして、いつもお客さんに寄り添っていきたい。糖尿患者さんたちの親友でありたいね、と2人でいつも話しています。フレンドリーでありながら、科学に基づいている。そういう存在でありたいです」と奥さんのyukoさんは続く。「糖尿病は複雑な社会問題もあり、自分の病気を恥ずかしいと隠している人も多いんです。けれど、病気と付き合いながらも楽しそうに生活していることを表現したかった。糖尿病の問題が解決した世界をイラストレーションにしました。これはうちの目指すべきビジョンの体現でもあります」とTeatisが目指す世界観のビジュアルを見せてくれた。

 

日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」
糖尿病患者さんたちのコンプレックスや偏見がなくなり、病気とうまく付き合いながら楽しく生活する様をイメージしたTeatisのコンセプトをイラストにしたもの

CACAOの完全食は「美味しいもので皆が喜んで飲むもの、という発想でチョコレート味のシェイクを開発するに至りました」と高頭さん。糖尿病患者さんには管理栄養士がついていて、1日の摂取カロリーは2,000カロリーで制限されている。炭水化物や糖質の摂取は厳しく指導を受けている中で、チョコレートの甘いドリンクを飲むのはご法度になってしまう。でも、Teatisの完全食なら血糖値を気にせずに楽しむことができる、とアメリカの患者さんたちから喜ばれているそうだ。

 

日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」

「アメリカは医療費が上がってきています。薬を使った治療はサステナブルなヘルスケアではない。それよりも、食生活を見直して健康的にすることで病気を改善していくことが必要です」

 

アメリカには3回しか行ったことがなく、海外生活経験もないという高頭さん。それがいきなりニューヨークで企業とは、なんとも思い切りがいい。

 

「小さなマーケットで作ったプロダクトを大きな場所に持って行くのは難しい。

僕はプロダクトを作ることが好きなので、はじめから大きな場所でチャレンジしようと思い、憧れのニューヨークに会社を作りました。トレンドの中心でもあり、そしてなによりも僕たちはモダンアートが大好きなので、モダンアートの発信地でもあるニューヨークに行きたかったという理由も大きいです」

 

アメリカでの正式ローンチを前に、約4,000万円の資金調達をエンジェル投資家たちから集めたことでも話題になったTeatis。出資者には、健康系 D2C で深い知見を持つ野口卓也氏(バルクオム代表取締役 CEO)のほか、島田達朗氏(コネヒト元 CTO)、内田悠一氏(メルカリ)らが名を連ねる。その後さらに米国市場での成長を推し進めるために、70万ドル(約7700万円)を調達し、資金調達総額は100万ドル(約1億1000万円)を超えた。どうしてこんなに沢山の資金が集まったのかを聞いてみたら

 

「何かいいことをしようとしているというのが伝わったのかな」と高頭さん。投資してくれたのは、どなたも昔からの親しい友人たちなのだという。

 

さらにTeatisは最近、食事や生活週間について30分間相談できるオンラインサービスTeatis RD on demandを立ち上げた。全米の管理栄養士がTeatisとネットワークを取ることで、患者さんとマッチングして活用できる仕組みだ。食生活を変え、3食のうちのどこかをteatisに置き換えるマンツーマンの指導が気軽に受けられる、とアメリカではすでに好評だ。

 

日本人起業家、アメリカで1.2億人の糖尿病患者を救う! 医師監修のスーパーフード配合粉末飲料・完全食「Teatis」
オンラインサービスTeatis RD on demandのイメージ

「コンサルティング、プログラム、パーソナライズされた商品。まずは糖尿病の患者さんからスタートして、次は健康意識がある全ての方に向けて広げていきたいです。アメリカの大きなマーケットから、小さなマーケットに。利用者からのフィードバックを受けて、改善を繰り返しながら成長していきたいです」と高頭さん。

 

ある程度の年齢を超えると、誰しもが糖質摂取をなるべく抑えたいと思うもの。健康や美容が気になる私たちの側にTeatisが来てくれる日も、近いかもしれない。

 

 

 

PROFILE

高頭博志

Teatis Inc. Founder & CEO

1989年生まれ。2013年に慶應義塾大学文学部を卒業。学生時代に日本初のクラウドファンディングサービス、READYFORを中心メンバーとして立ち上げる。その後グリー株式会社新規事業部門入社。主に教育関連新規事業の立ち上げや、グリープラットフォーム内の広告媒体設計業務に携わる。2014年にMomentum(モメンタム)を創業し、アドテク領域のバーティカルSaaS事業を展開。2017年にKDDIに売却し、グループ傘下にジョイン。2021年、米国で糖尿病向けの食品メーカーを創業。