神戸市中央区。150年以上の歴史を誇る港町に、新しいミュージアムがオープンした。

 

「フェリシモチョコレートミュージアム」は、ユニークな通販事業で知られる株式会社フェリシモが、神戸市の手掛ける再開発事業にともなって、この新しいウォーターフロントエリアに創設した本社ビルの2階に作られた。

 

文・写真:カデカワミズキ

 

 

 

「Stage Felissimo(ステージ・フェリシモ)」と名付けたフェリシモの本社ビルには、「これまでにそしてこれからの未来で関わるすべての人々にとって、しあわせ創造の舞台となるようにしたい」という思いが込められているという。

 

「しあわせ」というキーワードは、今回訪れた「フェリシモチョコレートミュージアム」の基盤にもなっていた。新本社ビルの2階に作られたこのミュージアムでは、1万2000点を超えるチョコレートのパッケージからその一部を順次展示している。10月22日開館予定のところ、先立って内覧会が行われ、筆者はそこに招待された。

 

館長を務めるフェリシモの代表取締役、矢崎和彦さんが、開会式の挨拶で、こんなことを述べた。

神戸の街に世界一のチョコレート博物館を。フェリシモチョコレートミュージアムが開館

「チョコレートは人をしあわせにする食べ物です。また、贈り物になりやすい、という特徴もある。そこには、人をしあわせにするために(チョコレートという)しあわせを包み込んだパッケージがあります」

 

チョコレートそのものではないけれど、チョコレートのパッケージを見ることで、デザインはもちろん、そこに込められた作り手たちの想いを感じてほしい。チョコレートが贈り、贈られるときのしあわせを想像してほしい。そんな想いが伝わってくる。

 

フェリシモチョコレートミュージアムのある2階までは、白くて真っ白な階段を上がっていった。「すでに美術館のようだ」と感じながらミュージアムの中まで入っていくと、真っ暗な部屋の中で、カカオの香りが充溢した不思議なインスタレーションに出会った。暗がりの中から、ほのかな明かりに包まれたカカオハスク(カカオ豆の皮)が見える。

神戸の街に世界一のチョコレート博物館を。フェリシモチョコレートミュージアムが開館 神戸の街に世界一のチョコレート博物館を。フェリシモチョコレートミュージアムが開館
神戸の街に世界一のチョコレート博物館を。フェリシモチョコレートミュージアムが開館
作品はアーティストの木村浩一郎氏のオブジェとのコラボレーション。

カカオハスクの土台となっているのは、アーティストの木村浩一郎氏によるオブジェだ。不思議な質感は「MIYAVIE」というポリエチレンなどの樹脂を加工した新素材によるもの。木村氏はこのMIYAVIEを使い、家具やアクセサリーなどさまざまな作品を制作している。フェリシモは「エッジィでクールな氏のオブジェと、プリミティブなカカオハスクの対比が面白い」と考え、今回オブジェの制作を依頼したという。

 

この小さな部屋を過ぎると、チョコレートパッケージの展示室となる。あえて低く作られた入り口は、大人なら体を屈めないと抜けられないようになっている。子供の頃にかえって、秘密基地に入っていくような気分だ。

神戸の街に世界一のチョコレート博物館を。フェリシモチョコレートミュージアムが開館

「creative walk(クリエイティブ・ウォーク)」と名付けられた廊下では、常設展として兵庫の有名パティスリー「パティシエ エス コヤマ」のチョコレートパッケージを年代順に展示している。パッケージデザインに強いこだわりをもつ小山進シェフのこだわりが伺える展示だ。

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会場にいらしていた小山シェフ本人にお話を伺ってみた。シェフは「グラフィックデザイナーとパティシエ、どちらになるか迷ったほど」デザインが好きだという。

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チョコレートそのものにもデザインがある。小山さんは、チョコレートのデザインとパッケージデザインのアイデアがほとんど同時に浮かぶのだそうだ。頭の中にしっかりとイメージがあるため、頭の中のイメージを形にしてくれるデザイナーさんと仕事をする。

 

また、大事にしているのは見た目だけではない。頑丈で厚みのあるエス コヤマのパッケージには、温度や湿度の変化に敏感なチョコレートの保管状態をよくする機能性も考えられていると話す。

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廊下を抜けると「art square(アート・スクエア)」と名付けられた、企画展示用のエリアがある。記念すべき初回企画には、イタリアのアーティスト、Valerio Berruti (ヴァリレオ・ベッルーティ)氏が選ばれた。

 

カカオ豆を輸送する際に使用されるジュート(麻袋)をキャンバス代わりに作品を制作していたことをきっかけに、企画展ではチョコレートをテーマにした作品制作を依頼したという。

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チョコレートの包み紙に描かれた子どもたち。企画展タイトルの「AMAI」はイタリア語の「愛おしむ」と日本語の「甘い」をかけたものだ。チョコレートも、子どもたちも「甘く、愛おしいもの」であるという意味を込めたのだという。

 

お隣のエリア「imagination picnic(イマジネーション・ピクニック)」には、体験型が作品もある。板チョコの巨大模型だ。こんなふうに、手にとって楽しめる。チョコレート大好きな筆者、思わず「家に欲しい!」と一言。写真に写ってくださったのは、フェリシモのチョコレートバイヤー、みりさんだ。

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つま先から頭まで全身チョコレートコーデのバイヤーみりさん(右)

広々とした明るい空間で一息ついたところで、数えきれないチョコレートパッケージが展示されるエリア「symphonic forest(シンフォニック・フォレスト)」へ。ここではコレクションの収蔵・展示を同時に行う「収蔵展示」の形をとっている。足元から天井まで、所狭しと展示されるパッケージは圧巻だ。有名ブランドはもちろんのこと、みたこともないような小さな海外のお店のパッケージから、明治や森永、ロッテなど日本の市販チョコまで並んでいる。

神戸の街に世界一のチョコレート博物館を。フェリシモチョコレートミュージアムが開館
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シンフォニック・フォレストのパッケージ展示室の中央には、もうひとつの企画展用エリア「island gallery(アイランド・ギャラリー)」が存在する。初回の企画展には、世界的な機械式腕時計ブランドのフランク ミュラーが選ばれた。時計だけでなく、2017年に誕生した「フランクミュラー・パティスリー」のお菓子や、食器が展示された。

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オリジナルのお猪口に入った大吟醸ガナッシュ
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フランク ミュラーの食器を使用したテーブルセッティング

フランク ミュラーのパティスリーは、同ブランドの作る腕時計が「時」を楽しむためのアイテムであるように、しあわせな時間を過ごして欲しい、という想いから始まった。

 

さて、楽しい展示もそろそろ終わりだ。出口に向けて歩いていくと「magic spells(マジック・スペルズ)」と題されたコーナーがある。ここには、文学作品などに登場するチョコレートに関するセリフ、チョコレート作りに携わる職人や、チョコレートを愛する人たちからのメッセージが寄せられている。

神戸の街に世界一のチョコレート博物館を。フェリシモチョコレートミュージアムが開館

展示を見終えたあとは、ショップで記念品やお土産、フェリシモチョコレートミュージアムのオリジナルグッズなどを見られる。

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フェリシモチョコレートミュージアムのオリジナルバッグには、チョコ型チャームがついてくる。

お土産でおすすめしたいのが、毎年、フェリシモの手掛ける「幸福のチョコレート」で一番人気のチョコレート、フランス・ロワール地方のショコラティエ、ケルトン ダルドワーズの通称「青チョコ」だ。ミュージアムではオリジナルのロゴプリント入りで販売されている。

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青く色づけられたホワイトチョコの中には、ナッツを飴がけして砕いた「ヌガティン」と呼ばれるものが入っている。ザクザクと噛みごたえがあり、しあわせな気分になりたい日のおやつにうってつけ。

フェリシモチョコレートミュージアムでは、今後もパッケージの収集と寄贈の受付を継続し、世界一のチョコレートミュージアムを目指していくという。

 

ミュージアムは10月22日開館予定で、29日には近場に劇場型アクアリウム「アトア」がオープンする。神戸の新しいウォーターフロントエリアが、チョコレートミュージアムとともに発展していくのが楽しみだ。

 

 

フェリシモチョコレートミュージアム公式サイト

https://www.felissimo.co.jp/chocolatemuseum/

 

 

 

カデカワミズキ

チョコレートおたくのフリーライター。子どもの頃はチョコ嫌いだったが、ハイカカオが世に出てからはチョコ好きに。クラフトから大手まで、幅広くチョコを愛しています。現在は都内大学で哲学を専攻。「食べる」という行為を考えていきたい。

twitter:@mizuki1010uk