オオニシ恭子先生は、著名なショコラティエもたくさんいるベルギーに30年近くお住まいでした。元々アーティストでもあったオオニシ先生が、ご自身の体調の変化から料理家に転身。ベルギーを拠点にヨーロッパでは、健康を取り戻す食の指導として、「ヨーロッパ薬膳」を現地の人たちに教えていらっしゃいました。

 

2011年の東日本大震災を機に日本に活動拠点を移すことを決意し、2013年より日本の古都・奈良に移り住み、「やまと薬膳」として、日本の食の向上、健康に貢献すべく活動を展開されています。奈良を拠点に、京都、三重、東京でもお教室を開く、多忙な毎日のオオニシ先生の三重県 伊賀でのお教室の様子を取材しました。

 

文:小池 美枝

写真:齋藤 順子

植物を食べる。料理をする。そのこと自体が、一番シンプルなサスティナブルの原点なんじゃないかしら。
場所は、三重県伊賀。
伊賀 めぐみ草庵にて。

こちらは、古民家を伝統的+モダンさを融合した地元の建築家がつくったカフェ。そのカフェで、月に一度「一汁三菜 季節の養生コース」が行われています。取材当日は、生徒さんが20名。先生のお話を真剣に聞き、時にメモを取っています。この日の献立は……

 

1. さわやか清涼水
2. そうめん椀
3. ライスサンド
4. 小松菜・ビーツ・ポテトの合わせサラダ
5. ぬか漬け
6. デザートは、キナチョコ

植物を食べる。料理をする。そのこと自体が、一番シンプルなサスティナブルの原点なんじゃないかしら。

「ビーツは、茎も、葉も、実も全部炒めてね。実は角切りにし、茎も葉もざくざくと切って、オイルで炒めていきます。そのあと、水をざーっと注いで蒸し煮。水が蒸発すると、あくが抜けるので、それまでじっくり炒めてね」

 

生徒さんたちは真剣なまなざしで先生を、ビーツを見つめています。続いて、じゃがいもの切り方。

 

「皮をむいて、細切りにして、揚げてね」

植物を食べる。料理をする。そのこと自体が、一番シンプルなサスティナブルの原点なんじゃないかしら。

「野菜の性質が違うので、それぞれ扱い方が違います」

 

どの野菜が、どんな性質だから、こんな野菜の扱いをする……。料理を通して、野菜の性質の違いを感じてもらいたいと。

植物を食べる。料理をする。そのこと自体が、一番シンプルなサスティナブルの原点なんじゃないかしら。

オオニシ先生が教えているのは、「やまと薬膳」。

 

やまと薬膳では「薬」を「艸(くさ)で楽(らく)になる」「艸を楽しむ」と解釈し、お料理、お手当、化粧、染色など生活の中でさまざまな草(野菜、野の草、ハーブなど)と触れ合うことで体を癒やし、暮らしを彩る楽しみとしていろいろに活用しています。

植物を食べるということは、
植物とのわかちあい。

植物のやさしさや、植物の性質を知って、その一部をいただく。植物の性質や違いを知ることは、人間も一人一人違うということを知ることにもなると先生は言います。まさに、先生が提唱している「自分食」。

 

「できるだけありのままに、シンプルに料理をして、だから、ある日の自分の一部にきゅうりがあるし、人参がどこかにあることもある(笑)そして、死んだら自分も土に還るの」

 

毎日料理をして、植物を分かち合いながら生きていく。その日々の営みは、まさにサスティナブルの原点かもしれない。最近始まったことじゃなく我々が料理をすることを始めた遥か古代から、このサスティナブルな営みは続いているのかもしれない。そんな感覚になりました。

 

〈本日のデザートは、キナチョコ〉

良質のたんぱく質である大豆でできているきな粉と、ポリフェノールが豊富なカカオの組み合わせ。砂糖は使わず、甘味は、米飴でつくります。

植物を食べる。料理をする。そのこと自体が、一番シンプルなサスティナブルの原点なんじゃないかしら。

きな粉と、米飴を混ぜて、1cm大のボールにします。干しブドウを1粒中に忍ばせて。まーるくまるめたら、カカオをたっぷりとまぶします。

 

「ベルギーでもよくチョコレートはいただきました。おいしいカカオは、料理にも、デザートにも、植物の仲間としてよく登場しますよ」

 

シンプルだけど、とてもおいしく、またそれぞれの個性が生きている、そんなデザートです。

植物を食べる。料理をする。そのこと自体が、一番シンプルなサスティナブルの原点なんじゃないかしら。
毎日料理をする、
その先に・・・。

先生の夢は、どこか自然あふれる広い原野にアトリエのようなキッチンをつくること。ベルギーにお住まいだった時の村の風景が大好きで時々思い出すのだそうです。

 

「そこに、アーティストとしての創作活動ができるアトリエと、もう一つの創作活動である料理ができるキッチンがつくりたいわ。様々な樹々、食べることのできるハーブや薬草、野菜を植え、そして自然豊かな野草……に囲まれたその場所にアトリエキッチンがあって、料理をする。植物たちとの暮らしができることが私の夢です」

 

サスティナブルな日々の営みである料理は、生きることの原動力にもなっていると言えるかもしれない。

 

植物を食べる。料理をする。そのこと自体が、一番シンプルなサスティナブルの原点なんじゃないかしら。

 

 

オオニシ恭子(おおにし・きょうこ)

フード*メディスナー©。食養料理研究家の桜沢リマ氏に学ぶ。1981年渡欧。以来32年にわたり、東洋的食養法を基本としながらも欧州における素材と環境を取り入れた食養法「ヨーロッパ薬膳」の普及に努める。2013年1月より、奈良・初瀬の地に移住。女性のための食養生を考え、提案する「やまと薬膳」を主宰。それぞれのライフスタイルや体調を見ながら、その環境に適応した食事法を指導。

https://yamatoyakuzen.com/

 

 

文:小池 美枝 Mie Koike

食のプロデューサー。外資系企業のブランディングの仕事に従事し、国内外、数々のイベントのプロデュース、欧米各国の食文化を経験後、食のプロデュースを始める。また中医学と出会い、国際中医薬膳師、中医薬膳茶師となり、身体だけでなく、心も健やかになる薬膳、“Yakuzen retreat”を伝えている。

https://www.artdevivre.tokyo/

 

 

写真家:齋藤順子 Yolliko Saito

パリをベースにヨーロッパ、アジア、アフリカで雑誌、書籍、広告の撮影を続けている。大西恭子氏のヨーロッパで初めての日本人弟子。

yolliko.com