夏のある日、茅ヶ崎の海岸に、この夏オープンするワーキングスペース「Cの辺り」で、その姉妹は笑顔で迎えてくれました。姉妹とは、精進料理のユニット「iori」を主宰しているお姉さんが園部曉美さん(写真右)、妹さんは中園五月さん(写真左)。二人で精進料理を始めてから23年になります。

 

文:小池 美枝

写真:齋藤 順子

精進料理ってどんな料理?

精進料理というと、和食で、お寺でいただくもの?というイメージがありますが実際どんな定義があるのでしょうか。

 

「精進料理(しょうじんりょうり)とは、仏教の戒に基づいて、殺生や煩悩への刺激を避けることを主な目的された料理。国によって、また宗教によって、差異はありますが、一番の特徴は、動物性の食材は食べない。 仏教による『五戒』のひとつで、動物の殺生が禁じられているので、殺生する動物は基本的に食べず、野菜や穀類、たんぱく質は、主に豆類で摂るようにしています。

もう一つの大きな特徴は、五葷(ごくん)は、食べない。五葷(ごくん)とは、にんにく、ねぎ、にら、玉ねぎ、らっきょう。匂いが強く、煩悩を刺激するからということだそうですが、ネギ科ネギ属などに属する、この5つの食材は使いません。一般的に精のつく食材といわれるものが多いですね」

 

とはいえ、お二人のお料理は、一般的な精進料理のイメージを超えて、和洋折衷、バリエーションに富んでいます。そんなお二人は、今回は「海辺のランチ」をテーマに、カカオをつかった精進料理をいくつかご紹介くださいました。

 

お二人は、7人姉弟妹の一番上のお二人。小さい頃は、ご飯のお手伝いは、一番上の園部さん、下の弟や妹の世話は二番目の中園さんだったので、二人で一緒に料理をすることはほとんどなかったそう。

精進料理との出会いは、23年前
“ 神様に聞いてみたら、精進だった ” 精進料理とカカオの出会い。 未来へつづく、サスティナブルな精進的カカオの食べ方。

23年前のある日、中園さんは精進料理に出会う。お肉を食べないってどうなんだろう? お酒を飲まないってどうなんだろう? まず1年間続けてみたら、中園さんの心も身体にも足りないものはなかった。かえって心が落ち着いたと言います。

 

そこで、お姉さんの園部さんにも精進料理を始めて見ないかと誘ってみた。園部さんも始めてみたら、心がやさしくなった。何より、好きなものが違った姉妹が、結婚してそれぞれの生活をしていた姉妹が、「精進料理」という絆で再び深く結びついたのでした。

Open the door!精進料理にカカオがプラスされると、今まで見えなかった精進料理に出会った
“ 神様に聞いてみたら、精進だった ” 精進料理とカカオの出会い。 未来へつづく、サスティナブルな精進的カカオの食べ方。

カカオと精進料理との相性はいかに? 最初は、お二人ともカカオ=チョコレートのイメージがあったようで、スイーツ?甘いもの?

 

ところが、カカオを口に含んでみると、二人の世界は広がったといいます。もともと、お二人の精進料理も、とても広い世界観のお料理。和食や、一般的な精進料理の枠をこえて、和洋折衷、老若男女、見た目にもアクティブなイメージのするお料理です。そこに新たな差し色が加わった、そんなイメージのするお料理を3品。

カカオバターで焼いたバナナとパンでつくったサンドイッチ
“ 神様に聞いてみたら、精進だった ” 精進料理とカカオの出会い。 未来へつづく、サスティナブルな精進的カカオの食べ方。

フライパンにカカオバターを溶かし、バナナを焼く。そのフライパンでパンも焼いてはさんだとってもシンプルなサンドイッチ。カカオバターでパンを焼くと、パリッとさくっと。パンがなにより、カカオの香りがして香ばしい。食事として召し上がっても、シナモンや甘みをつけたらおやつにも。お二人は、クミンもあうかも、今度やってみようとおっしゃっていました。

丸ごとトマトのサラダ ピスタチオと、カカオニブのドレッシング
“ 神様に聞いてみたら、精進だった ” 精進料理とカカオの出会い。 未来へつづく、サスティナブルな精進的カカオの食べ方。

この季節、まるごとトマトを食べるのが醍醐味なので、そのトマトのためのドレッシング。オリーブオイルに、ごま油、酢、ピスタチオ、そしてカカオニブ。湯むきしたトマトのふんわり柔らかい食感に、カリっとピスタチオと、カカオニブ。噛んだときのカカオニブのほろ苦さと、オリーブオイルにほのかに香るカカオの香りが食欲をそそります。

黒豆と、カカオマスのポタージュ
“ 神様に聞いてみたら、精進だった ” 精進料理とカカオの出会い。 未来へつづく、サスティナブルな精進的カカオの食べ方。

使うのは、黒豆、平茸、塩、水、そしてカカオマス。黒豆と、平茸の滋味あふれる山の味に、カカオマスのこっくり感がマリアージュした滋味あふれるスープ。黒豆もカカオも豆だから、相性がいいのかしら・・・そんなことをおっしゃっていましたが本当においしいスープでした。固めに仕上げて、デザートっぽく冷やしていただいてもおいしそうです。

サスティナブルな食事の観点からみた、カカオ

精進料理もひとつのサスティナブルな食事ともいえますが、お二人が精進を始めたひとつのきっかけが、動物を殺したくない、でした。ですので、殺さなくてもよい、卵(無精卵)や、お乳からとれるバターなどはいただきますとおっしゃっていました。

 

栄養学的にも、やはりたんぱく質はとても大切なので、卵も豆もいただきます。そんな観点からみると、カカオはバターなどのようにお料理のコクをひきだしてくれるオイルとして、さらに、豆としての存在感もある、精進料理にとって頼もしい食材にもなりそうです。

 

取材後、「あのトマトのドレッシング、ますますカカオニブの香りがうつっておいしくなってきました!」と、ご連絡もあり、じわじわ・・・と風味が引き出される、そんなところもなんともサスティナブルとも言えるかもしれません。

テレビでもご活躍のお二人

現在、毎週TV神奈川の番組にも出演のお二人。わたしたちだけメイクしてもらえないの~と笑うお二人ですが、それもそのはず、お肌はつやつやです。月に一回の出演が、今では毎週の出演になったとか。精進料理の魅力が多くファンを増やしているようです。

精進料理との出会いが変えたもの

23年間、精進料理をつくって、食べてきて、今、その精進料理との出会いは、単に料理方法ということではないと言います。園部さんは、「人って生まれて、死ぬために生まれてくるじゃないですか。生まれたきた意味って何だろう、死ってなんだろうと考えたとき、何か人それぞれに使命があって生まれてくるのかなと思いました。その使命に気づいたら、人は何があっても右往左往しないんじゃないかな。与えられた環境で日々生きていく。そんな風に考えられるようになりました。昔は、何で掃除毎日しなきゃいけないの?とか思ってました(笑)」。

“ 神様に聞いてみたら、精進だった ” 精進料理とカカオの出会い。 未来へつづく、サスティナブルな精進的カカオの食べ方。

中園さんは、「精進料理は、神様からの伝言だったのかなって思う。人としてどう生きるか、それは頭で考えるより、何かを長く続けることで、自分から生まれる日々の行動だったり、言葉にその答えや気づきがあるように思いました。私の場合は、手放しと受容かな。たいていのことは受け容れるということと、今だからできることに集中することで、今だから手放せることもあって。新しい本物の自分に出会うための手放しと、新しい自分の受け入れ。そんな気がします」。

“ 神様に聞いてみたら、精進だった ” 精進料理とカカオの出会い。 未来へつづく、サスティナブルな精進的カカオの食べ方。

そんなお二人は、とてもきらきらしていて、その笑顔はきっと幼少のころからかわってないように思えます。

お二人の幼少時のチョコレートの思い出はありますか?

そう伺うと、「おじいちゃんは、お小遣いがはいると、孫(姉妹)にチョコレートを買ってくれたんです。当時は、今のようにいろいろな種類のチョコレートはなくて、シンプルな板チョコだったと思うけれど、それがおいしかったのよねって、顔を見合わせて微笑みました。おじいちゃんもチョコレートを孫に買ってあげるということがうれしかったみたいで、いつもニコニコしていたし、私たち姉妹もチョコレートを買ってもらうというのが特別なプレゼントのようなそんな気持ちで・・・。今は、私たちが孫にプレゼントする側になったけど、やっぱりうれしいかも。チョコレートって、不思議な幸せ感がありますよね」と、お二人。

 

日常の中の、小さな幸せ。日々生きていくうえで、もしかしたら一番大切なことを感じさせてくれるアイテムの一つなのかもしれない。そして、それは、時代を超えて、いつもそばにあるもの・・・。

地域に根差したコミュニティつくりは、これからの生き方の一つ

撮影場所の「Cの辺り」は、茅ヶ崎海岸のCのモニュメントがあるすぐそばに新しくできた海の見えるワーキングスペース。コンセプトは、地域の図書館。地域に住む人たちが、思い思いの世界観を表現する場所としてそこはつくられており、茅ケ崎に住んでいる中園さんの場所も準備中。

 

「縁あって住んでいるんだもの。地域に根差して生活していきたいですよね。お金じゃない、”モノとモノの交換”や、”モノと労働力の交換”をしながら人と人が関わって生きていくって、古いようで新しいと思う。だから、協力してサポートしていきたい」

 

食べるものもいつの日かそうなっていくのだろうか・・・。「Cの辺り」・・・。海を見ながらワーケーションができる地域の図書館には、いつまでも変わらないであろうとても緩やかな空気が流れていました。

“ 神様に聞いてみたら、精進だった ” 精進料理とカカオの出会い。 未来へつづく、サスティナブルな精進的カカオの食べ方。

 

 

精進料理「iori」

神奈川・茅ヶ崎を拠点に料理教室「精進料理の会」を主宰する園部曉美(姉)さんと中園五月さん(妹)のユニット。著書に「おばあちゃんの精進ご飯」「おばあちゃんの精進ごはん その2」(ともにインプレス)。

 

 

文:小池 美枝 Mie Koike

食のプロデューサー。外資系企業のブランディングの仕事に従事し、国内外、数々のイベントのプロデュース、欧米各国の食文化を経験後、食のプロデュースを始める。また中医学と出会い、国際中医薬膳師、中医薬膳茶師となり、身体だけでなく、心も健やかになる薬膳、“Yakuzen retreat”を伝えている。

https://www.artdevivre.tokyo/

 

 

写真:齋藤順子 Yolliko Saito

パリをベースにヨーロッパ、アジア、アフリカで雑誌、書籍、広告の撮影を続けている。大西恭子氏のヨーロッパで初めての日本人弟子。JPS日本写真家協会会員。

yolliko.com