2014年8月沖縄初の”ビーントゥーバー”スタイルのチョコレート専門店として誕生したTIMELESS CHOCOLATE(タイムレスチョコレート)。最近移転オープンした新店舗に、オーナーの林正幸さんを訪ねた。

 

「カカオ豆と沖縄のサトウキビという自然のものだけを使って、とにかくこれ以上引き算できないっていうところまで突き詰めてチョコレートを作っています。例えば1万年後であっても1億年前だったとしても同じものを提供できる。そんな“タイムレス”な価値を届けたい」。

 

カカオとサトウキビへの熱い想いを語り尽くしてくれた。

 

文・セソコマサユキ

写真・チダコウイチ

 

 

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
新店舗から眺める「美浜アメリカンビレッジ」。移転とともに、タイムレスチョコレートは新しいステージへ
カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
盟友である陶芸家 今村能章さんから美浜店オープン時にもらった“人類最初の器”とカカオ

沖縄本島中部に位置する北谷町にある「美浜アメリカンビレッジ」は、東京ドーム5個分という広大な敷地の中に、観覧車や飲食店、土産物店などが、アメリカ西海岸を思わせる街並みに軒を連ねるシーサイドリゾートだ。普段なら地元の若者から観光客など多種多様な人々で賑わうこの街に沖縄初のビーントゥーバーチョコレートの店としてオープンしたのが「TIMELESS CHOCOLATE(タイムレスチョコレート)」。オープンから5年を経た2021年5月、宮城海岸近くに移転した。海岸線に伸びる遊歩道では、マリンスポーツを楽しむ人やジョギングをする人、ただゆっくりと夕日を眺める人などさまざまな人が憩い、場所柄外国人も多く、異国情緒が漂う。

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
目の前には海が広がる絶好のロケーション

移転先の「TIMELESS CHOCOLATE HARBOR VIEW」は、海沿いのホテルの中にあった。緩やかにカーブする階段を登り店内に入ると、アメリカンビレッジのころと変わらない、どこかレトロで、スタイリッシュで、ロックな雰囲気。宜野湾市にある古道具店「STOMP」などで買い揃えたという「自分たちが好きな1930年から70年ぐらいまでのアンティーク」の家具や照明が空間を彩っている。

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
ホテルのロビーを改装し、黒を基調としたTIMELESS CHOCOLATEらしい空間に

オーナーの林正幸さんは神奈川県横浜市の出身。サンフランシスコに留学してコーヒーカルチャーに魅了され、一度帰国してセレクトショップや飲食店の経営をしたのちに世界放浪の旅へ。東南アジアをはじめ、イギリス、ジャマイカなど世界中を旅したのち、「信号よりカフェが多い」というメルボルンで本格的にコーヒーを学んだ。

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
彼らが作るチョコレートの原料は、カカオと、砂糖だけ

その後、「コーヒーは豆や焙煎にこだわるのに、それに合わせる砂糖にはなぜ拘らないんだろう。ワインとチーズのようなマリアージュを、コーヒーと砂糖で提案したい」と、黒糖を極めるためにサトウキビの産地、沖縄へ。那覇市にあるCOFFEE potohotoで焙煎士の山田哲士さんに出会い、その才能と情熱を目の当たりにして、「自分がやるべきはコーヒーではない」と感じた林さんは砂糖を原料とし、「焙煎」という共通する工程を持つチョコレートの道に進むことに。メルボルンから5万円だけを持って沖縄に移住。友人宅に居候し、家庭用のミキサーとオーブンで初めてチョコレートを作ったのが「TIMELESS CHOCOLATE」の始まりだった。

 

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
タキシードの袖が印象的なパッケージは、男性も手に取りたくなるデザイン

店内に迎え入れてくれた林さん、早速お馴染みのマシンガントークが始まった。サトウキビのこと、カカオのこと、これからのTIMELESS CHOCOLATEのこと。いつものように、だけど、いつ聞いたって林さんの話は飽きることがない。だって、少し間があけば、いつも新しい何かが始まっているから。

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
語り出すと止めどなく情熱が溢れてくる、TIMELESS CHOCOLATEオーナー 林 正幸さん

「チョコレートのイメージがあるんですけど、カカオってフルーツなんですよ、じゃあそのフルーツにはどんな栄養があって、どんな食べ方があってっていうのは、僕らが伝えられることだと思うんです。食べ物やドリンクもあれば買い物もできる、日常に寄り添うチョコ屋”はどのような姿であるべきか。僕らはこの場所で何年かかけて答えを出したいなって思っていて」。

ぜひ、食べて欲しいです、とスタッフが、新メニューの「サラダボウル」を持ってきてくれた。一見、普通のボリューミーなサラダだけど、聞けば、カカオの果肉を使ったドレッシングや、ファラフェルと全体に振り掛けられたデュカにはカカオニブを使い、ビーツソースにはカカオのスプリンクルを。キャロットラペには自家製のカカオマスタードが和えてあるなどカカオ尽くし。

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
しっかりお腹が満たされる「サラダボウル」には、さまざまに加工されたカカオが入る

「木から種までどういう風に成長していって、それをどういうふうに使うか。そして土に還るという循環的な要素を、このカフェの中で出していきたい。その集大成の一つがこのサラダボウルだと思っているんです。沖縄を感じつつ、世界のヴィーガンの事情も考慮してつくっていて、コクとか、酸味とか、バランスを取っているのが全部カカオ。これが僕たちの日常にあるカカオ”の提案なんです」。

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
左から「CACAO FRUITS SODA」、「GRAND SLAM」、「VEGAN CHOCOLATE DRINK」

VEGAN CHOCOLATE DRINK」(650円)は、カカオとサトウキビだけで作ったチョコレートに、オーガニックのソイミルクを加えたもの。「CACAO FRUITS SODA」(650円)は、その名の通りフレッシュなカカオを果肉ごと楽しめる。「GRAND SLAM」(650円)は今帰仁村のAtelier cafe bar 誠平とのコラボで、カカオなども入れたコーディアルで作るスパイスチャイ。

カカオがフルーツ、ということにすら馴染みが薄く目新しく感じるのに、そのメニューの多彩さにも驚く。新店舗に来て、「チョコレート屋」という概念が軽く吹き飛ばされてしまった。

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
これでもか、というほどカカオを堪能し尽くせる「カカオヘブン」

さらに、ココナッツミルクでコクを加えたカカオの果肉がしっかり入っていて、その上にチョコレートはもちろん、自家製グラノーラやカカオスプリンクルなど、TIMELESS CHOCOLATEのほとんどの商品が載った贅沢な「カカオヘブン」も衝撃の一皿。軽く凍らされて爽やかなライチのような味わいのカカオの果肉と、チョコレートなどさまざまに形を変えたカカオは、相性という言葉では物足りないぐらいにフィットしていて、口の中で目まぐるしく味わいを変化させて飽きさせない。

 

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
次なる挑戦は北谷町砂辺、沖縄市へ。あらたな試みにも意欲を見せてくれた林さん。お客さんと会話中、おどけた表情を見せる。

「毎日毎日進化していて、僕たちはエンターテイナーでいたいっていうのがすごくあるんです。そのなかで、テーマになるのがフレッシュ”と引き算”。それとローカルへのリスペクト。常に、あたらしいことを生み出していきたいと思っています」。

9月には、北谷町砂辺馬場公園向かいに焼き菓子を中心としたお店がオープンする予定だ。沖縄市にある工房は、年内にカカオの酵母を使ったパンや焼き菓子のお店に生まれ変わる。石垣島ではカカオの栽培に挑戦中だ。原料にこだわりシンプルに。いつまでも変わらない価値を生み出す、TIMELESS CHOCOLATEの歩みは、まだまだ止まりそうもない。

 

カカオを通して日常を豊かにする 「TIMELESS CHOCOLATE」というエンターテイナー
周辺には、どこかゆったりとした、ローカルな海辺の街の空気が漂う

 

 

TIMELESS CHOCOLATE

沖縄県中頭郡北谷町港14-14

電  話:098 923 2880
営業時間:9:00〜19:00

HTTPS://TIMELESSCHOCOLATE.COM/

Instagram @timelesschocolate

 

 

 

セソコマサユキ Masayuki Sesoko

沖縄在住の編集者。東京で雑誌・書籍の編集、イベントの企画運営等に携わったのち、2012年6月に沖縄に移住。著書に「あたらしい沖縄旅行」(WAVE出版)「、あたらしい移住のカタチ」(マイナビ出版)、「石垣 宮古 ストーリーのある島旅案内」(JTBパブリッシング)などがある。沖縄CLIP編集長。沖縄を楽しむメディア&コミュニティ「SQUA」主宰。島のものづくりを伝える「島の装い。展」ディレクター。

http://masayukisesoko.com

Instagram @sesokomasayuki