沖縄本島の中部・うるま市から両側に海を眺めることのできる「海中道路」を渡る。浜比嘉島(はまひがじま)を横に眺め、平安座島(へんざじま)を通り過ぎ、辿り着いたのは宮城島という人口1,000人に満たない小さな島。

 

今日、お会いする友利成来(セイラ)さんと、その東海岸にある「果報バンタ」で待ち合わせた。バンタとは崖のこと。車を停めて少し歩けば切り立った崖があり、その崖の上からは、これでもかというほどに青い沖縄の海が見渡せる。日差しは強いけれど風が心地よく、目に映る景色が心を澄みやかにしてくれる。

 

文・セソコマサユキ

写真・チダコウイチ

 

 

地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
県内屈指の絶景ポイント、宮城島にある「果報バンタ」

現れたセイラさんは「ローバハルチョコレート(Raw Bahalu Chocolate)」というチョコレートブランドの主宰者。さらに、五感を感じて生きることを学ぶ「congruence」、心が躍るサステナブルな商品を販売する「Universal Values」、海洋ゴミ問題を解決する運動「World clean up day Okinawa」の立ち上げなどさまざまな活動を行なっている。

 

「総称すると、私は“ハッピークリエイター”なんです」とセイラさん。彼女のインスタグラム @2sseira.2を見てほしい。彼女が発信するメッセージや写真を眺めていると、不思議と心がやわらかくなってくる。それはきっと、そこに綴られている彼女の眼差しや言葉、想いに、愛が満ちているから。パートナーの晋作さんと一緒に活動しているセイラさんは、インスタグラムで見せる印象通りの、屈託のない明るい笑顔を見せてくれた。

今日は最近お気に入りだという「宮城島」を、少し案内してもらうことにした。

 

地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
果報バンタに笑顔で現れたセイラさん
地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
次に訪ねたのは知る人ぞ知る宮城島のうつくしい天然のビーチ「ウクの浜」
地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
「僕は泳いでいてもいいですか」と、あっという間に海へ飛び込んだ晋作さん

果報バンタの次に向かったのは「ウクの浜」。宮城島の中でも、知る人ぞ知る絶景ビーチだ。両端を荘厳な崖に囲まれたビーチはまさに秘境。セイラさんは誰よりも先に、海へと続く坂道を軽やかに下っていく。

 

地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」

ローチョコレートとは、なるべく非加熱で作るチョコレートのこと。セイラさんの「ローバハルチョコレート」は「植物のパワーを最大限に活かし」、白砂糖、小麦、乳製品、添加物を一切使用せずに作っている。

 

ウチナーンチュであり、米軍基地での勤務経験もあるセイラさんは、もともとしっかりと甘いチョコレートが大好き。例えば「バハルバー」は、「どんなにチョコを作っても、お父さんは甘くない!って食べてくれなくて。だから、お父さんに食べてもらえるものをと思って」作ったもの。アーモンドクッキー、デーツシロップから作ったヴィーガンキャラメル、オーガニックのピーナッツバターをローチョコでコーティング。デーツとメープルシロップの甘さをしっかりと感じることができるいわばローチョコレートのスニッカーズだ。尖りのないやさしい味わいで食べ応えもしっかり。常温でも良いけど、夏はアイスにしても美味しい人気の商品だ。

 

 

 

地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
お父さんにも喜んでもらいたくて作った、ちゃんと甘い「バハルバー」

以前は「カロリーのことばかり気にしていた」というセイラさんが、6年ほど前にヨガやマインドフルネスの講師も務める晋作さんと出会い、断食を経験したことで、食の在り方、そして自分の体としっかり向き合うようになった。

 

「厳しい家庭に育った」というセイラさん。ご両親に禁止されていたチョコレートをおばあちゃんがこっそり食べさせてくれて、それを顔中につけながら夢中で食べた記憶があるそう。幼い頃から漠然と「カカオの海で泳ぎたい」という夢を持っていたほどチョコレートが好き。

 

「食べて下さる方々の身体に優しく」

「地球への負担を少しでも少なく」

「つくり手も嬉しい」

 

そんなサイクルを実現したくて、いまの自分が食べたいと思うチョコレート作りに挑戦してみることに。最初はローチョコレートが何かもわからない状態から学び、試行錯誤。その後「AIEN COFFEE & HOSTEL」を営む友人の「ブランドにしてみたら?」という一言に背中を押されてローバハルチョコレートを商品化した。「日々進化しています。だから最初とは全然違います。ただただ好きやってきて、そうしたら沖縄って狭いし、私はウチナーンチュなのでいろんな人がサポートしてくれて。あっという間にいろいろ広がって、みんなのおかげで今の形になりました」。

 

地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
5つの味が楽しめる「ダーナバー」

いわゆる板チョコの「ダーナバー」。ダーナはサンスクリット語でシェアする、分け与えるという意味だそう。沖縄を意識した「ドラゴンフルーツ味」、「モリンガ味」、「カカオ85%」、伊江島の塩「みーぐるましゅ」を使った「シーソルト」に、定番の「カカオ66%」の5種類。甘味はココナッツの花蜜やメープルシロップで。ドラゴンフルーツ味とモリンガ味にはロープロテインが入っているので栄養補給にも。最近「オーシャンズ」という新作も加わった。

 

 

地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」

海を眺めたあと、ふたりは秘密の「鍾乳洞」に案内してくれた。知らなければ絶対に辿り着けないような茂みの奥に洞窟の入り口があって、一歩中に入ると、それまで強い日差しに焼かれていた肌をいたわるかのような涼やかな空気が体を包む。ゆっくりと最奥へ進んだころ、晋作さんが瞑想の時間へと誘ってくれた。砂の上にそのまま腰を下ろして呼吸に集中し、滴る水滴の音だけが耳に残る。微かなロウソクの灯が揺れ、静かな、それは何とも形容し難い神秘的な体験だった。

 

「私にとってチョコレートづくりは瞑想なんです。チョコレートを混ぜるときは温度と、湿度とカカオと向き合っている時間。無になってリフレッシュできるんです。精神が安定するような。そのスタンスは最初からずっと変わっていなくて、これからも大事にしたいなと思っています」。

 

 

地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」

最後は、セイラさんと晋作さんがリトリートなどでも使用するというお気に入りの宿「かふーやー宮城igusa villa」へ。外の螺旋階段を登ると、目の前に広がるのは「トンナハビーチ」。室内は土の壁と畳がナチュラルな空気を漂わせるやさしい空間。島に暮らすナディーさんが作るヴィーガンのお弁当でテーブルを囲む。玄米ムスビにお豆ベイクのファラフェル、ベイクベジマリネ&マンゴーソースサラダなど、しっかりとした野菜の味わいとボリューム感。

 

地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
ふたりのお気に入りの宿「かふーやー宮城igusa villa」へ。この島でケータリングをしているナディーさんのヴィーガン弁当でランチをいただく。

お弁当を食べながら、セイラさんが静かに語ってくれた。

 

「夢は世界平和なんです。私は、なんでもできるけど全部はできない、と思っていて、だからこそ自分ができることをやっていきたい。女性性のことや、自己愛、シェアする気持ちなど、チョコレートを通して、ちょっとの気づきやその種になるような活動ができたら嬉しいなと思っています。世界平和と言うと大きく感じるけど、女性がハッピーになることで、きっと家庭がハッピーになるし、そうしたら子どもたちも嬉しいし、旦那さんもハッピーになる。そういうことが世界平和につながるのではないか、と思っています」。

 

実はセイラさんと晋作さん、沖縄本島の北部、国頭村にあたらしい場所を作るために動き出しているのだという。「チョコレートの工房があって、畑や、自分たちの営み、生活がある。そこに“チョコレートガール”が現れてみんなでチョコレートを作り、やがて世界各地にローバハルチョコレートを広めてくれたら嬉しいな、って思い描いています」。

 

地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」
地球の愛を感じ、身体も心も満たされる。 セイラさんの「ローバハルチョコレート」

取材終わりに、かふーやー宮城のオーナー、アキさんが顔を見せに立ち寄ってくれた。アキさんは「セイラさんに似合うはず」と、突然ワンピースをプレゼント。子どものように喜び、はしゃぐ様子を見ながら晋作さんは「セイラは、愛されるチカラがすごいんです」と呟いた。

 

きっとそうやってたくさんの人から受け取る愛を、セイラさんは溢れ出すままに惜しみなく次の人へ届ける。その手段のひとつが、チョコレートなのだろう。

 

「テーマはspread love(愛を広げる)。ローバハルチョコレートは、私のライフスタイルです」。

 

 

かふーやー宮城

〒904-2424沖縄県うるま市与那城上原8198

Instagram @kafuyamiyagi

 

 

 

セソコマサユキ Masayuki Sesoko

沖縄在住の編集者。東京で雑誌・書籍の編集、イベントの企画運営等に携わったのち、2012年6月に沖縄に移住。著書に「あたらしい沖縄旅行」(WAVE出版)「、あたらしい移住のカタチ」(マイナビ出版)、「石垣 宮古 ストーリーのある島旅案内」(JTBパブリッシング)などがある。沖縄CLIP編集長。沖縄を楽しむメディア&コミュニティ「SQUA」主宰。島のものづくりを伝える「島の装い。展」ディレクター。

http://masayukisesoko.com

Instagram @sesokomasayuki