FEATURE
FEATURE

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー

カルチャーシーンを切り拓く次世代コミュニティメディア、「three」から誕生したスイーツブランド「Chocolate Library」。果物づくりに奮闘する農家の想いを、クリエイターたちの手を通して都会のカルチャーシーンに届けています。“読むチョコレート”としてブランドを立ち上げた経緯や今後の可能性について、「Chocolate Library」のレギュラークリエイターである編集者の黄孟志(コウタケシ)さん、アートディレクターの高橋鴻介(タカハシコウスケ)さんにお話を伺いました。

全く別分野の3者が取り組む「農園のカルチャライズ」という試み
「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー
本好きにはたまらない、文庫本のようなパッケージ。

――「Chocolate Library」の商品は、文庫本のようなパッケージを開けると、チョコレートがちょっぴりかかったドライフルーツ。そこにショートエッセイが添えられていて、心惹かれます。

 

黄:根っこの部分としては、自分たちが出会った魅力的な農園、そして果実を世の中に広く届けることを目的とした商品なんです。その前提がありつつ、都心に住むミレニアル世代やZ世代に刺さるものを目指しました。

 

――商品づくりはどのような経緯で始まったのでしょうか?

 

高橋:この場にはいないんですけど、「three」というカルチャーメディアを運営しているコクハク株式会社の代表・木本さんが、「このメディアで繋がったクリエイター達と、記事だけじゃなく新しくプロダクトも生み出していきたい」と考え始めたのがきっかけです。

 

黄:木本さんはかなり有名なレストランのコンサルタントもやったりしていて、「日本に沢山存在する優れた生産者の魅力を、国内外の人びとに伝えたい」と考えるようになった。

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー
Chocolate Libraryの編集長・黄孟志さん。

高橋:そこに普段代理店でプランナーとして働きながら、個人で発明家としてデザイン制作をしている僕と、雑誌の世界で培われた編集力をプロダクトや場に使う試みをしたいと考えていた黄さんが加わって、「プレゼントできるような、オリジナルのプロダクトを作ろう」という話になったんです。

 

黄:3人で議論した結果、「農園のカルチャライズ」というビジョンを打ち出しました。
都会に住み、最先端のライフスタイルや遊び方を知る層に、地方の農園の想いを伝えるスイーツを届けたい。商品を作るために、実際に農園にも足を運びました。

 

高橋:最初に訪れたのは、鹿児島県でデコポンを栽培している山上農園でした。「きれいに実らせるために、花の段階からきれいに育つように手をかけるんだよ」といった話をしてくれて、フルーツ作りの背景にあるストーリーがすごく面白かったんです。そこで彼らの熱量をうまく伝えられるようなデザインを考えていきました。

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー
Chocolate Libraryのアートディレクター・高橋鴻介さん。

――それで最終的に本の形になったのですね。

 

高橋:はい。僕自身、ストーリーを知った上でそのフルーツを食べたことで、食べる時の感覚が変わったというか。「なるほど、すごくおいしい」という納得感を得られたんです。その感覚を共有したかったですね。

 

――商品には、ドライフルーツを使っていますね。

 

黄:届けやすさや、これから世界に発信していくことを考えて、生のフルーツではなくドライフルーツにしています。

 

――ドライフルーツにチョコレートが少し掛かっているのがおしゃれです。

 

高橋:ドライフルーツって、チョコレートと一緒に食べることでフルーツそのものの良さも引き出されるから、おいしいんですよ。そのまま食べるのとでは味の印象がガラリと変わります。

 

――フルーツからスタートしたのに、あえてチョコレートを軸にした理由は?

 

高橋:色々な種類のチョコレートがあったら、全部の味を試して自分の一番好きな味を見つけたくなるし、人とそれについて会話したくなる。ドライフルーツよりもチョコレートに統一したほうがカルチャーの要素が強い。それに、チョコレートには人々を惹きつける力が強いから、“読むフルーツ”ではなく “読むチョコレート”になりました。

エッセイとともにスイーツを味わう。新しい食体験
「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー
左から「Shiroyama Minori Farm × Rei Shito(梨)」「Mikamo Farm × Miyu Otani( イチゴ)」「Yamagami Farm × haru.(デコポン)」

――“読むチョコレート”こと「Chocolate Library」は、気鋭のクリエイターが書いたショートエッセイが付いていることも、大きな魅力となっています。どのように考えて作ってい
ったのでしょうか?

 

黄:ターゲットとするミレニアル世代やZ世代に届けた時に、“SNS映え”のために撮って終わりというような一過性のものにせず、映画や音楽のように影響を受けてから何年後も友達と語り合えるようなものにしたかったんです。それが農園の存在や魅力を根付かせることに繋がる。だからこそ、深いメッセージを残せるクリエイターたちの力が必要だと思ったんです。

 

――クリエイターはどのような基準で選んでいったのでしょうか?

 

黄:世の中に大きな影響を与えている人たちで、文章もすてきな人ですね。最初に作った「デコポン」は、芸大出身のアーティストであり起業家のharu.さんに執筆をお願いしました。芸大在学中からHIGH(er) magazineというインディペンデントマガジンをつくって新しい生き方や価値観を発信されていて、適任だなと。「イチゴ」は、ファッション誌のモデルでエッセイも人気がある小谷実由さんにお願いしました。

 

高橋:黄さんは農園でフルーツを食べた経験や生産者さんに聞いた話を一度抽象化してから、伝えたい芯を書き手であるクリエイターさんに共有してくれていました。

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー
「Shiroyama Minori Farm × Rei Shito(梨)」は、高橋さんのお気に入り。

黄:3つめに作った「梨」は、NYのファッションサイト「Fashionista.com」で「世界でもっとも影響力のあるファッションブロガー11人」に選ばれた、ストリートフォトグラファーのシトウレイさんに書いていただきました。

 

高橋:僕は「梨」はスイーツの味と作家さんの作風が、すごく合っていて好きですね。シトウさんの文章は、ストイックで節々にかっこよさがにじみ出ていて、農園で見た美しい梨園や、梨そのもののイメージが絶妙にマッチしているんです。

 

――黄さんはどの文が好きでしたか?

 

黄:3名それぞれの文章に個性の全く異なる魅力があるので選べないのですが、haru.さんの「じんわりと朝日にコーティングされた私は、昨日よりも少しだけ最強な気がする。」という一節を読んだときは、このブランドの成功を予感しました(笑)。彼女自身の感情を表現しつつ、デコポンの気持ちも翻訳していてうまく交わっているのがいい。

 

高橋:ドライフルーツにすると、どうしても色の鮮やかさが失われてしまうんですけど、文章があることで、フルーツのみずみずしい感じを呼び起こしてくれる。エッセイをつけてよかったなと思いました。

果物の味わいを引き立たせる、Whosecacaoのチョコレート
「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー
ビターチョコレートがかかったデコポンのドライフルーツ。

――食べてみると、フルーツに対して絶妙なバランスでチョコレートがついていて、味わい深いですね。

 

黄:チョコレートは、世界中のカカオ農園とお菓子業界をつなぐ活動をしている、「Whosecacao(フーズカカオ)」さんとタッグを組んで、チョコレートの味やつける分量を決めて、ドライフルーツに合うオリジナルのチョコレートをいちから作ってもらいました。

 

高橋:正直僕らはチョコレートのことは何も知らなかったので、一緒にやってみてチョコレートの味わい方の幅広さに驚きました。「デコポン」は蜜の甘みが強めで、それに合うようにビターなチョコレートを合わせたんですけど、他のフルーツは必ずしもビターなチョコレートが合うわけじゃなかったんです。スパイスやエッセンスで風味を調整したりして実験しながら、いかにフルーツとチョコレートをマリアージュしていくか、ベストな組み合わせ方を探りました。

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー
イチゴのドライフルーツにはホワイトチョコレートをかけて甘酸っぱく。

――こだわったポイントはありますか?

 

黄:チョコレートの付け方や分量ですね。チョコレートをどこにどれだけつけるかで、食べ方も味わい方も変わってしまう。最後の一口にフルーツとチョコレートの両方の味が残ることを目指しました

 

――食べるときにもストーリーと同じく起承転結があって、リンクしていることを感じます。

Chocolate Libraryが生み出す新しいカルチャー
「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー

――2020年2月には渋谷PARCOのバレンタインシーズンのメインポップアップに抜擢され、販売とイベントをされていました。どのような反響がありましたか?

 

黄:SNSで、「“チョコレートを読む”ということが新しい体験だった」「大好きなharu.さんの文章と一緒においしいものを味わえて、すごく豊かな時間だった」というような感想は多くありましたね。

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー

――作り手としては、どんな新しさがあったと思いますか?

 

高橋:僕自身、結構本を読む方なんですけど、外で本を読む時と家で読む時で全然感覚が違うというか。晴れの日にオープンな感覚で読むのと、雨の日に読むのとでも違いがあって、状況によってストーリーの感じ取り方が全然違うんです。でも、「味わう」という状況がプラスされると、味わい方とストーリーの間に相互作用が起きて、感じ方も変わる。

そこが新しいなと思いました。

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー
コクハク株式会社の事務所内には、#読むチョコレートのステッカーが。

黄:文章を読んで左脳を使い、味覚で右脳を使うので、農園の魅力を脳全体で味わう深い体験になるところが新しいかなとも思います。ポップアップで販売した時、エッセイも見える形で展示したんですけど、情報が溢れている時代だからこそ、内容を“知ってから買う”ということが成り立つんですよね。そして、読むからこそ味わって体験したくなる。効果的なアプローチができたと思います。

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー
ロゴは、本棚に並ぶ本をイメージ。

――今後はどのように展開していきたいですか?

 

黄:まずは海外進出ですね。エッセイを翻訳して海外で出すのはもちろん、海外のクリエイターに書いてもらってもいいと思うんです。

 

高橋:「Chocolate Library」のロゴを見ていただくとわかるんですけれど、本棚に本を並べるように、集めていけるものになったらいいなと思っています。

 

黄:フルーツの種類を増やしつつも、各農園と継続的な関係を持ちながら発展させていきたいですよね。同じフルーツでも、別のクリエイターさんが違う角度から関わって、セカンドエディションを作るというのも良いと思います。

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー

高橋:確かに、クリエイターによって物語と味の関係性が変わってくると面白いですよね。あとはショートエッセイを一冊の本にして、カタログ的に「この文章が面白かったから、買ってみよう」となると、とっても豊かだなと思います。

 

黄:今後も農園の存在や想いを深く届ける「農園のカルチャライズ」をしようというビジョンを大切にしながら、色々な手法を試していきたいですね。

 

高橋:そのためにも、まずは個人に「いいね」と思ってもらって、それが社会とも繋がっているという関係性を大切にしたいです。「Chocolate Library」によって若い人たちが農園のことを語ることがカルチャーになって、巡り巡って農園のイメージが良くなってくれると良いなと思います。

 

文:宇治田エリ 写真:林ユバ

 

【Profile】

「読むチョコレート」が創り出す、新たなカルチャーとは? Chocolate Libraryインタビュー

左:高橋鴻介(Kosuke Takahashi)

Chocolate Libraryアートディレクター。1993年生まれ。大手広告代理店にプランナーとして勤めながら、発明家としても活動中。視覚でも触覚でも読める点字「Braille Neue」、触手話をベースとしたインクルーシブなゲーム「LINKAGE」などを手掛ける。

 

右:黄孟志(Takeshi Koh)

Chocolate Library編集長。1988年生まれ。編集エージェンシー・かくしごと代表として、未来をつくる企業の“隠し事”を“書く仕事”で応援中。複数のWEBメディアで編集長を務める他、これまでに『GINZA』『週刊プレイボーイ』『東京新聞』『Forbes JAPAN』など幅広いジャンルの媒体で連載コラムを執筆。

企画・販売元

コクハク株式会社

https://kokuhaku.co.jp/

 

チョコレートライブラリ―公式ECサイト

https://chocolibrary.theshop.jp/