: 藤井存希

写真 : チダコウイチ

 

 

カカオの未来を、さまざまな角度からクリエイトしていく「APeCA」が、東京・西小山で話題のイタリアン「Cizia (チッツィア)」とコラボレーション。女性シェフ・馬場かつえさんが得意とするパンを使ったコースと、カカオを料理に合わせたコースを披露してくれた。この2つのショートコースが実際に提供される日は後日発表とのこと。さて、シェフのセンスとカカオが織りなす化学反応や如何に?

“西小山には小さないい店が多い”。

 

そんな注目を集める店の一つが、201911月にオープンした「Cizia (チッツィア)」。西小山駅から続く商店街沿いで、焼きたてのパンの香りを漂わせる小さなイタリアンだ。

 

店主兼シェフの馬場かつえさんは、イタリア料理店での修行後、練馬区内の人気ベーカリー「まちのパーラー」でパン作りを学んだ異色の経歴の持ち主。

あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
店主兼シェフの馬場かつえさん。平常時はランチからディナーまで、仕込みと調理を一人で担う。

「今は自家製パンを出すレストランも増えましたが、私が修行していた十数年前はまだ、パンにまで力を入れているお店は少なくて、パン屋さんから卸してもらったり、自家製パンの選択肢がイタリアンならフォカッチャ、フレンチならバタールというように限られた種類しかなかったんです。料理に力を注ぐほど、『せっかく美味しい料理を作るのだから、一緒に食べてもらうパンも美味しくしたい』という気持ちが強くなり、パン職人に転職しました」

 

馬場さんにとっては、「自分の店を持ちたい」という気持ちより、「料理もパンも美味しいお店があったら」という漠然とした想いが「チッツィア」の開店につながったのだという。

あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
「チッツィア」ではパン工房も併設。商店街に面した窓口で、月1回、販売も行っている。
あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。 あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
パンはハード系を4-5種類用意。緊急事態宣言下でも3-4種類を用意している。

特筆すべきは、料理・パン・ワインの絶妙なバランスだ。パン単体で口にするとやや塩みを感じるものの、料理→パンの順に食べてワインを飲むと、その塩みはまったく気にならないどころか、ワインを味わうための旨みと化す。次いで、ワインを飲んで料理を食すと、パンを頬張りたくて仕方がなくなる。

「ワイン泥棒のパン」。

パンを口にしたお客様のふとした一言が、この旨みのループを言い表しているようだ。

あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
ランチでは毎日焼きたてのフォカッチャが食べられる。
あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
焼き上がったパンが積み上げられていくカウンターでは、その香りでワインを愉しむお客様もいるそう。

「チッツィア」では通常はアラカルトメニューでの提供だが、今回「APeCA」とのコラボレーションとして、カカオを料理に合わせた2種類のショートコースを提案してくれた。一つはフルコースをカカオで味わう「カカオコース」と、もう一つは馬場さんのパンも味わいたい人向けに、カカオを使いつつ前菜からデザートまで全てパンの上で完結する「パンコース」をご用意。

 

カカオの可能性をフルコースで表現した「カカオコース」

カカオニブやカカオパウダー、カカオマスを、スープやサラダ、パスタ、肉料理、デザートに使用。カカオでソースにコクを加えたり、スパイスの役割として、また削ってナッツのような食感のアクセントにと、馬場シェフの自由な発想が生かされるコース構成だ。

 

(写真は撮影時のコースの一例です)

あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
一皿めの「玉ねぎのスープ」。溶かしたカカオパウダーをスパイスとして加えることで、甘みの苦みのアクセントをプラス。玉ねぎの自然な甘みと、カリッ、トロッと食感の違いを楽しめる。
あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
肉料理は「トリッパのラザニア」。カカオを練りこむことでコクを加えたパスタ(ラザニア)は、カカオの豊かな香りが余韻を残す。
店自慢のパンとカカオをともに味わえる「パンコース」

前菜からデザートまでカカオを使った料理に合わせて、クロスティーニやフォカッチャなどのパンを焼き上げる、馬場シェフならではのコース。カカオパウダーを練り込んで長時間発酵したパンなど、通常のアラカルトでは登場しないようなパンに出会える可能性も。

 

(写真は撮影時のコースの一例です)

あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
「カプレーゼ」と聞いて意表をつかれた1皿め。みずみずしいトマトと口当たりのよいモッツァレラチーズが、パンの香ばしい風味を引き立てる。カカオニブとカカオマスの食感もポイント。
あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
3皿めは「ホワイトアスパラのソテー」。パンの絶妙な苦味や塩みが味わい深い一品。レンコンの滋味深い味わいが、バナナを練り込んだカカオソースと相性抜群。

これらの2つのショートコースが開催される日は、「チッツィア」のインスタグラムで発信予定。予約人数に達し次第、受付終了となる。

 

ここで紹介した料理はほんの一部だが、「イタリアン」という枠に収まりきらない、ニュータイプであることはご覧の通り。

「自分では、“イタリアンっぽいお店”を目指しているんです」と馬場さんは言う。

あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。
飾らない笑顔にほっこり。肩肘張らず、居心地のよい店内。

「さまざまなシェフがいると思うのですが、私の中では、イタリア料理と言うと、イタリアでイタリアの食材を使った料理で、日本で日本の食材を使った料理が日本料理だと思っているんです。その土地で食べる料理がその国の食文化だと思っていて、そこにとらわれてしまうと、日本はこんなにも食材に恵まれているのに、使いずらくなってしまったり、やりたいことも制限されてしまう気がしているので、“イタリアンっぽい”という響きがちょうどいいんです」

 

料理人としてのセンスがぎゅうと詰まり、飽くなき追求によって日々進化する馬場さんの料理を、心ゆくまで味わってほしい。

 

【店舗情報】

あなたはどっち?カカオコース or パンコース。 注目すべき西小山のレストランへ。

Cizia (チッツィア)

〒142-0062 東京都品川区小山6丁目6−3

Tel:03-6314-3965

定休日:月曜(※日曜・祝日は不定休)
Instagram : @cizia_nishikoyama

 

 

 

 

文 : 藤井存希

フードジャーナリスト。大学時代に受けた食品官能検査で“旨み”に敏感な舌をもつことがわかり、食べ歩いて20年。出版社時代はファッション誌のグルメ担当、情報誌の編集部を経て2013年独立。現在、食をテーマに雑誌やWEBマガジンにて連載・執筆中。

https://www.instagram.com/akinokocafe/