水彩画のようなカラフルなパッケージに南国らしさが溢れるバヌアツ産ヴィーガン・チョコレート「Aelan(アエラン)」。「天国に2番目に近い島」と呼ばれる秘境から小規模でな工場で手作りされるアルチザンチョコレートを輸入する古屋真衣さんは、学生時代に輸入業をはじめ、現在は3歳と5歳の男の子を育てるワーキング・ママでもあります。柔らかな笑顔の奥に強い意志と行動力を持ち、前向きな挑戦を続ける真衣さんにお話を伺いました。

 

二児の母として伝え手として。自分らしく輝く自然派インフルエンサー古屋真衣さんインタビュー
売るだけでなく、オーガニックの発想を伝えたい

――ばりばりのリケジョでロシア語検定もお持ちの才色兼備な真衣さん。キュートな見た目とのギャップにやられます(笑)。大学では何を勉強されていたんでしょうか?

 

 実は小学生の頃から宇宙飛行士になりたくて、受験資格を満たすために理系に進んだんです。大学では好きだった化学を専攻し、実験に打ち込む日々でした。研究室にこもっていると、稀に粉塵や揮発性物質が原因でアレルギーになってしまう学生さんがいたんです。いまオーガニック食品を扱っているのは、その反動というのもあるかもしれません。

 

――在学中に起業、輸入業をはじめられたきっかけは何だったのでしょうか。

 

 最初の商材であるオーガニックチーズの輸入を始めたのは、もう運命というか。英語を学ぶために代表をしていた留学生サークルにオランダ人の女の子が入ってきたのですが、その子の実家では偶然にもオーガニック認証に基づいたヤギの飼育からチーズの製造を手掛けていたんです。そのチーズを現地で食べたときに味わいに感動して……即座に「輸入しよう!」と思い立ちました。その当時、オーガニックといえば有機栽培の野菜のイメージでしたが、有機栽培の飼料を食べ自然な環境で育ったヤギのチーズだってオーガニックなんだと知ったんです。オーガニック認証では、もちろん製造工程も厳密に規定されています。その規定は国や地域によっても様々ではありますが、ヤギにも人にも、そして地球にも優しいという考え方に共感しました。

 

今では動物を虐待しないのびのびとした育て方やビーガンという発想も徐々に広まってきましたが、当時はあまりオーガニック製品に対する意識も浸透していなくて。ただ商品を輸入して売るだけではなく、オーガニックという発想を伝えたいと思ったんです。今はオーガニックのチーズと海藻、そしてバヌアツ産ヴィーガンチョコレートを三本柱として扱っています。

 

――確かに、海藻がオーガニックというのも、あまりイメージが湧かないですよね。

 

 そうなんです。海は繋がっているのに、どうしてオーガニック/オーガニックでないという区分けがあるのか…。たとえば海苔などの生産性を上げようとすると、養殖場に酸性の薬剤を入れたりするんです。それが周囲に広がり、地球を汚す原因になってしまいます。ヨーロッパでは、「大型船が入り込まない」とか、「手作業で収穫して根を残すサステナブルな収穫をする」といったオーガニックの基準がしっかりしていて、水質も全く違います。販売先の伊勢丹では世界の海藻事情についてトークショーをさせて頂いたこともあって、商品を売るだけでなくストーリーを伝えられる機会があったことは嬉しかったですね。

 

二児の母として伝え手として。自分らしく輝く自然派インフルエンサー古屋真衣さんインタビュー
セミナーに登壇したり、インフルエンサーとしても活躍中
バヌアツ産ヴィーガンチョコレートの唯一無二の魅力

――バヌアツ共和国は正直あまり馴染みがないのですが、チョコレートの輸入を始めたきっかけを教えてください。

 

 2年前に参加したFOODEX(食品の展示会)で、たまたまトンガやサモアといった太平洋諸島エリアを通りがかったときに、チョコレートの試食を勧められたんです。今までニッチな分野を攻めてきましたし、チョコレートはライバルが多そうだから、はじめは輸入する気はなかったのですが…食べてみたら美味しくって!

 

 話を聞くうち、カカオを挽く際にも上質なヴィンテージの石臼を使ったり、こだわり抜いて造ったチョコレートということもわかってきました。今はヴィーガン市場も大きくなってきているし、やってみようかなあという気になって、2019年10月から輸入を始めました。

 

――どのような特徴があるんでしょうか。

 

 まず一番の特徴は、カカオバターが入っていないヴィーガンであることです。もちろんカカオ豆に含まれる自然の油分はありますが、追油をせず、砂糖とカカオのみを使うシンプルさにとにかく驚きました。カカオバターが入っていないと溶けにくいため、常温でも取り扱えるというメリットもあります。

 

 一方で味わいの滑らかさに欠けると思われるかもしれませんが、それでも美味しい理由は、オーナーがフランス人女性で、フランスの高度な技術が入っていることも大きいと思います。オーナーのサンドリンさんはもともと火山学者として火山島であるバヌアツにきたそうなのですが、この地のカカオの虜になり、そのまま住み着いてしまったそう。バヌアツのチョコは「volcanic chocolate」とも言われ、火山性土壌由来の力強い味わいが特徴なんです。

 

二児の母として伝え手として。自分らしく輝く自然派インフルエンサー古屋真衣さんインタビュー
オーナーのサンドリン氏。現地のカカオ生産者団体を創ったり、女性の活躍支援もしているアクティブな女性だそう

――試食させていただくと、味わいの後半から強く長く伸びていく余韻と深みが印象的です。1かけ食べただけでもかなりの満足感があります。ワインも火山性土壌からは力強いワインができると言われますが、なんだか共通しているのがおもしろいですね。

 

 確かに!バヌアツはカカオの生産に向くカカオベルトにぎりぎり入っていますが、同じくベルト内のお隣のトンガではカカオはできないんです。気候もほぼ同じなので、やはり土壌の違いが現れているのかもしれません。

 

――水彩画のようなカラフルなパッケージも可愛いですよね。

 

 南国らしさがよく出ていますよね。ニューカレドニアの近くにあるバヌアツは「天国に2番目に近い島」とも言われ、ニュージーランドやオーストラリアから気軽にいけるリゾート地として密かな人気です。80以上の島からなり、生産者や土壌の違いで島によって味わいの特徴が異なるため、例えば同じカカオ70%で島違いで食べ比べるのも楽しいですよ。

 

二児の母として伝え手として。自分らしく輝く自然派インフルエンサー古屋真衣さんインタビュー
品質の高さを示す数々の受賞歴シール。チョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」でも好評を博した

――コロナ禍が落ち着いたら行ってみたいです!

 

  観光業で成り立っているバヌアツは、いま鎖国状態の厳しい状況に置かれています。フェアトレードマークをつける機関すらない後発開発途上国ですが、日本でアルチザンチョコレートの魅力を伝えることで、少しでも社会貢献できればと思っています。

 カカオだけ輸入していいチョコレートを造り「原産国●●」として売る方法もありますが、最終工程まで現地で作る方が、付加価値をつけ現地の雇用を生み出すという点でも大切だと思っているんです。

 

二児の母としての顔。子育てと仕事の両立は?
二児の母として伝え手として。自分らしく輝く自然派インフルエンサー古屋真衣さんインタビュー

――商材探しも兼ねて子づれで海外に行かれたり、仕事と子育てをアクティブに両立されていてすごいです。平均的な1日の流れを教えていただけますか。

 

 さいきんピラティスを始めたので、朝は5時半に起きます。7時に2人分のお弁当作り、8時に朝ごはんを食べさせ、9時にスクールバスのお迎えが来たら、そこからお仕事です。 レンタルオフィスで商談をしたり、PRの仕事で外に出たり。子どもたちは2歳からプレスクールに通わせているのですが、これまでずっと一緒だったときは、ベビーカーを引いて商談したこともありました。

  15時に退社したら、そこからは夜ごはんを作り、家族の時間。買い物は土日にまとめてしていますが、毎日温かいものを食べさせたいので、作り置きはできるだけしないようにしてます。

 子供が21時に寝てからはお酒を楽しんだり、最近は図書館で大量に本を借りてきては読書したり、自分の時間に充てています。寝るのは23時前くらいですが、もともとショートスリーパーなのでそんなに寝なくても大丈夫な「アイアンガール」です(笑)

 

二児の母として伝え手として。自分らしく輝く自然派インフルエンサー古屋真衣さんインタビュー

――多忙ななかでも自分らしさを大切にしていらっしゃる真衣さん、とても魅力的です。今後やりたいことについて教えてください。

 

 もともと旅行が好きで、子どもがいない時はロシアを横断したり僻地へよく出かけていたこともあり、コロナが落ち着いたら商材探しの旅に出かけたいです。おもしろいものを見つけたら積極的にやりたいと思っていますが、その上で一つ一つのブランドを丁寧に育てつつ、ボリュームも増やしたいと思っています。今は映像だったり、伝え方が色々あるので、これまで学んできたPRの知識も生かしてブランドを強く展開させていくことで、現地が潤うサポートをしていきたいです。

 

 身近なところでは、いま急ピッチで進めているのが、バヌアツ産チョコレートを使った「モレソース」の商品化です。モレソースというのは、カカオや唐辛子、スパイス、砂糖が入ったチョコレートのソースで、メキシコなどではお肉にかけて食べる文化があります。一昨年メキシコで実際に味わってきたので、その本場の味を再現しようと、大槻食品さんと準備しているところです。

 

 

 

文=水上彩 

写真=岡村大輔

 

【Profile】

古屋真衣(Mai Furuya)

1992年生まれ、岐阜出身。2013年、慶応義塾大学理工学部在学中に輸入業GnR代表に就任。学生時代、オランダから来たベジタリアンの留学生Miekeと出会い、彼女の実家のオーガニック牧場のチーズ輸入をスタート。現在はオーガニック海藻やヴィーガンチョコレートなど輸入ジャンルを増やしながら、オーガニック業界のインフルエンサーとして、多種多様なオーガニック食材の認知を日本で深めようとしている。二児の母でもある。