文 : 森嵜周

写真 : 岩根愛

 

―――

 

愛さんへ

 

先日は葉山にお越しくださってありがとうございました。
3月20日は二十四節気のひとつ
『春分』昼と夜が同じ長さになりこれからは少しづつ少しづつ昼間の時間が
長くなっていきます。
さて、今日は一日中『春の嵐』の葉山です

 

ざあざあと外は雨。雨の日は雨を聴く。
こんな小さな「気づき」をどれだけ持てるかで人の1日の濃さは、幸福に満ち溢れずいぶん違ってくるように思うのです。
人の幸せは、大きな成功や幸運ではなく、こうした日常の細部にこそひたすらに
宿っているのかもしれないものですね。

 

 

2021.3.21

 

 

菓名【草萌】(くさもえ)

草木萌動(そうもくめばえいずる)
草木が芽吹き始める頃。草の芽が萌え出すことを「草萌え」(くさもえ)と言います。

 

練り切り製

中餡には、桜餡を使用し外餡は、白餡にカカオマスを練り込む

 

和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡
和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡

 

―――

 

愛さん へ

 

お時間ができたら、茶でもいかがですか?
「わたしは何をしたいの?」と無理な自分探しをするより「どうしたら周りが喜ぶかな」とか
「この人が今困っていることは何なのかな?」と、周りに目を向けられる人こそが、

 

やわらかく たくましく しなやかで

 

自分の人生を切り開いていく可能性を持っているような気がします
しなやかにそして力強い鉱物たち
地球が生み出した芸術作品だとしたら
この砂糖菓子は人が生み出した芸術作品
一緒にいてここちよく、どこかお守りのような佇まいと暖かさ。
さあ春だよ。

 

 

2021.3.31

 

 

菓名【陽】(ひなた)

琥珀糖 こはくとう
黒糖で炊いた生カカオを寒天で固め

乾燥させ結晶化

 

和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡
和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡
和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡

 

―――

 

愛さん

 

立春を迎え季節は春分までも過ぎて行き
こんなにも早く時間って過ぎたっけ?
なんだかこの町に住んでいると、忙しくしている方が恥ずかしくなるんです
いつもわくわくしている子どもの頃のように海を眺め山を見渡し、自分の『すき』を集めてみたくなるんです

 

待ち遠しかった春を共に喜びを分かち合うために
君に会いに行く砂浜の道
ハマダイコンの染み透ける紫色の花びらにふと
立ち止まった
ほんのり大根の香りがした。

 

わたし「拾い魔なんだ。」
ぱっとみて、心に止まったものはほっとけない性格で、そう基準は、楽しいか。楽しくないか。

 

 

森嵜 めぐる 拝

 

和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡
和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡
和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡

 

はじめかたちを作っておいて
その入れ物にあとからこころが入る

 

カカオコレクション

 

◆三盆糖にカカオパウダーを混ぜ合わせた落雁

 

◆加加阿豆大福

 

◆加加阿きな粉飴(黒豆きな粉にカカオニブとセミドライイチヂクを練り込んだ)

 

◆カカオマス練り切り

 

◆生カカオ豆の琥珀糖

 

◆加加阿羊羹

 

和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡
和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡
和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡
和菓子めぐるの『季節はめぐる』<br>写真家 岩根愛が切り取る愛とめぐるカカオにまつわるふたりの往復書簡

 

プロフィール

 

森嵜周
1974生まれ
多摩美術大学造形表現学部卒業
油絵を学ぶが立体や映像のほうに興味がうつる。
移ろい変わる季節、日本の風土、立体、食べて無くなってしまうものへの儚さ、それら全てが集結したものが和菓子の世界であると感じている

 

そこに確かにあるものの存在を知ること
自然と人間の間をとりもつ
現在進行形の感性を
和菓子を通して表現しています

 

 

岩根愛

東京都出身。1991年単身渡米、ペトロリアハイスクールに留学。帰国後、1996年に写真家として独立。

2018 年、初の作品集『KIPUKA』(青幻舎)を上梓、第44回木村伊兵衛写真賞、第44回伊奈信男賞受賞。2020年、「あしたのひかり-日本の新進作家Vol.17」(東京都写真美術館)に『あたらしい川』出展、同時に作品集『A NEW RIVER』(bookshop M)刊行。著作に『キプカへの旅』(太田出版)『ハワイ島のボンダンス』(福音館書店)