アペカでのカカオ料理レシピの連載でお馴染みの薬膳料理研究家ヤマグチヒロさんと、コラムにも参加する東京農業大学醸造環境科学研究室から大西章博先生をお招きして「カカオと発酵の未来」を楽しく学ぶ企画がスタートします。

 

今回は「カカオ味噌の作り方と効能 」について。

 

薬膳の切り口で食材の新たな魅力を掘り起こしているヤマグチヒロさんが、日本食文化の代表的な調味料である味噌を大胆アレンジ! 「薬膳 ✕ 発酵」をテーマに、大豆の代わりになんとカカオ豆を使用した「カカオ味噌」に挑戦しています。まさに「カカオ豆の発酵」を研究テーマとしている大西章博先生からは、お役立ちアドバイスをいただきました。

 

まずは「カカオ味噌の作り方」を、先日開かれたワークショップの模様とともに動画でご覧ください。

カカオって実は発酵食品!

カカオは栄養たっぷりのスーパーフードとして有名ですが、そもそも実は発酵食品でもあるってご存知でしたか? 発酵食品と言えば、味噌、チーズ、ヨーグルト、お酒など様々なものがありますが、美味しくて健康にいいというイメージがありますね。カカオ豆もまた、風味を引き出すための発酵が施されているのです。

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版
なぜ発酵させているのか?カカオ豆を発酵させる理由

理由のひとつめはパルプを取り除くこと。カカオ豆は、カカオポッドという厚さ1センチ以上の硬い殻の中にあるパルプと呼ばれる白い果肉に包まれています。発酵させることで、そのパルプを分解して取り除くという役割があるのです。

 

もうひとつの理由は、独特の香りをつけるため。カカオ豆を発酵させパルプが取り除かれる工程によって、カカオ豆の渋みや苦みが抑えられると同時に、カカオ独特の香りが引き出されるのです。

日本は発酵大国

食における発酵の最大のメリットは、食材の保存性が高まり、栄養価も増すことです。だからこそ発酵は、イタリアのアンチョビ、タイのナンプラーなど、各地域の特徴を生かした食文化として発展してきました。

 

なかでも日本は、気温や湿度などが発酵に適した世界でも有数の発酵大国と言われています。私たちの先祖は、日本ならではの気候を活かし、発酵を積極的に取り入れることで、味噌、醤油、納豆、清酒など、日々の食生活に欠かすことのできない様々な発酵食品を生み出してきたのです。

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版
カカオ味噌の作り方

いよいよ「カカオ味噌」の作り方をご紹介。完成後の風味の差に期待して、今回は生カカオの「殻つき」と「殻なし」の2パターンにトライしました。

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版
<材料>

生カカオ豆 2kg(※1)

米麹 2.4kg(※2)

麦麹 1.6kg(※2)

自然塩 1.5kg(※3)

 

(※1)皮付のまま2kg、皮なしは剥いた状態で2kg。今回はインドネシア産スペシャリティカカオ豆を使用。

(※2)静岡県周智郡にある老舗「大石こうじ店よりお取り寄せ。米麹と麦麹のおすすめの割合は「32」とのこと。

(※3)今回は海塩を使用。島国なので日本人には岩塩よりも海塩の方が身体に合うミネラルを含むと言われています。

 

〈大西章博先生のひとことアドバイス〉

味噌における発酵の黄金比は、塩とその他素材の比率が「1:4」であることです!今回のレシピもこの黄金比)

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版

① 生カカオの殻を剥く(殻付きで行う場合はこの作業は省いてください)

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版

② 生カカオを20時間以上浸水させる(左:殻なし、右:殻つき)

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版

③ 浸水した生カカオ豆を3時間ほど煮る

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版

④ 煮汁と豆に分け、煮て柔らかくなった豆をフードプロセッサーでペースト状にする

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版

⑤ ボウルに麴と塩を入れ、よく混ぜる

 

〈大西章博先生のひとことアドバイス〉

麴は塊が残らないように指でよくほぐしましょう! 塊があると発酵にムラができ、食べた時の味が均一になりません。

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版

⑥ ④でペーストにした生カカオを⑤のボウルに入れてよく混ぜる(水分が足りなければ煮汁を少しずつ足して調整)

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版

⑦ 塊にして空気を抜き、容器に隙間を作らないように詰めていく

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版

⑧ 一番上に塩を振り、ラップをして密閉し、風通しのいい温度変化の少ない場所に保存する

 

 

いかがでしたでしょうか? そのお味も気になりますよね? 味噌の熟成には、半年〜1年ほど必要なので、後日完成レポートを予定。今回は殻つきと殻なしで作ってみましたが、その風味の差もどのようになるか楽しみです。ときどき様子を見てあげながら、首を長くして待つことにしましょう。

 

 

「カカオ × 薬膳 × 発酵」によって引き出されるカカオの効能

カカオにはポリフェノールが豊富に含まれているということはよく耳にします。カカオに含まれるポリフェノールは、主に「フラバノール」や「プロシアニジン類」と呼ばれるもの。フラバノールは心血管系の機能を健康に保つ作用があるとして注目を集めており、ストレスを軽減したり認知機能を改善したりする効果が報告されているそうです(※1)。

 

では、カカオの薬膳的効能は?というと、疲労感の改善、強心作用、循環器機能改善、滋養強壮などがあります。古くからカカオは媚薬として扱われており、滋養強壮の薬として認知されていました。一方で、カカオ豆は油脂を多く含むので、中医学においては「陰性」、つまり身体を冷やしてしまう食べ物になります。ですが、麹を混ぜて塩と一緒に発酵させた味噌になると身体を温める「陽性」に転化します。カカオを「陽性食品」として摂ることができるというなんです(※2)。

 

カカオの健康効果を期待して何を食べたらいいか?と考えるとすぐに頭に浮かぶのはチョコレートですが、少し気になるのは砂糖ですよね。砂糖は身体を冷やしやすいものともされています。ですが、今回の「カカオ味噌」では、砂糖は使いませんし、カカオが持つ様々な特徴に「発酵」という工程を加えることによって、栄養分がギュっと凝縮されます。生活習慣病の予防や改善が期待され、身体を冷やすことなく摂取できるため、女性の味方とも言える調味料となるのです。

 

※1Medi Palette

※2)「陰性」「陽性」とは中医学における属性を意味し、陰性は身体を冷やす、陽性は身体を温めると言われています

 

 

カカオと発酵の未来<br>ヤマグチヒロ × 大西章博<br>「カカオ味噌の作り方と効能」完全版

「カカオと発酵の未来」について学ぶシリーズ企画。今回は「カカオ味噌」の作り方を通して、その可能性を探りましたが、いかがでしたでしょうか? カカオと発酵の関係性。つまり、カカオを使った味噌という発想だけで、薬膳という観点から見たらこんなにもカカオの可能性が広がるなんて。

 

さて、次回のテーマは「カカオが叶えることができる未来」について。ヤマグチヒロさんと大西章博先生との対談は、嗜好品としてのカカオに留まらず、なんと外交・国防にも発展(?!) お楽しみに。

 

 

 

PROFILE

 

ヤマグチヒロ / HIRO YAMAGUCHI(薬膳料理研究家)

Food Officeハチドリ代表、渋谷区観光フェロー。10代の時に、友人の栄養問題による体調不良をきっかけに食の知識に関心をもち現代社会がもたらす様々な体調不良の原因となる『食の現実』を知る。それ以降、より人間が健康に幸せになるための『薬膳』という考え方による食生活の提案と研究活動を行なっている。現在は、企業・飲食店へのレシピ提供、商品開発、ケータリング提供、出張シェフ、料理動画製作、家庭向け食育講義、農家支援イベント、震災支援イベント、地方創生イベント、オリジナルブランドの薬膳温活ヴィーガンカレーの卸販売業などを手掛ける。中国薬膳研究会認定国際薬膳調理師免許取得。

https://yamaguchihiro.com

 

大西章博 / AKIHIRO  OHNISHI(東京農業大学大学院農学研究科醸造学専攻准教授)

東京農業大学農学研究科生物環境調節学専攻博士後期課程修了。微生物研究や醸造発酵、ファージセラピーを専門としながら、カカオ豆に対するロマンを掲げ、カカオ豆の発酵からカカオ外交まで、カカオでの国防を目標としながら日々研究を重ねている。彼の研究は広域に微生物、菌の活躍を扇動している。

http://dbs.nodai.ac.jp/html/226_ja.html

 

西澤禅 / SHIZUKA  NISHIZAWA

1981年生まれ、埼玉県出身。フリーランス秘書。中小企業の経営者経験を生かし、事業承継したばかりの後継者やスタートアップ企業の社長サポートをする傍、健康経営コンサルタントも行っている。プライベートではアーユルヴェーダや薬膳などを取り入りた生活で体質改善中。

 

STAFF CREDIT

 

ヤマグチヒロ(薬膳料理研究家)

アドバイザー:大西章博(東京農業大学准教授)

文章:西澤禅

写真:チダコウイチ

ゲスト:桂川桃子(画家)、橘俊哉(APeCA)

動画撮影・編集:荒井梨緒

アシスタント:長島怜生