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ストーリーを「まとう」パン Organic & Vegan Bakery matoi × カカオニブの可能性

ストーリーを「まとう」パン Organic & Vegan Bakery matoi × カカオニブの可能性

 千葉県市川市の住宅街、池のほとりに小さなパン工房を構える「Organic & Vegan Bakery matoi」。オーナーのオオヌキさんご夫妻は、1歳のお子さんを育てながら、100%オーガニックの植物性素材から天然酵母ハードパンを作っています。「心とからだと地球に優しい」ヴィーガンパンにこだわるmatoiと、カカオを通してコラボレーションできないだろうかーーこうしてカカオニブを使ったオリジナルレシピ制作の企画がスタートしました。

 

 カカオニブとは、焙煎したカカオ豆を砕いて殻を取り除いた状態の、いわばチョコレートのピュアな原料。今回matoiさんに使って頂いたのは、なかでも生産量が全体の1%ほどしかないといわれる貴重な「クリオロ種」です。このカカオニブを使って、お二人はどんなパンを作り上げたのでしょう。ヴィーガンパンへの思いや今回のコラボレーションについて、奥さんのサラさんにお話を伺いました。

 

 

ストーリーを「まとう」パン Organic & Vegan Bakery matoi × カカオニブの可能性
ペルー在住の日本人窪田さんが無農薬・無肥料で育てた「クリオロ種」を使用。酸味が少なく、風味が良いのが特徴。
造り手の想いを「まとう」パン作りへの夢
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サラさんの柔らかな笑顔に癒され、取材も和やかに。

─まず、「matoi」をオープンされたきっかけを教えてください。

 

サラさん:もともと私たちが出会ったのが一緒に働いていたカフェで、当時「いずれ自分のお店を持ちたい」という夢を持っていた私に賛同してくれたのが今の旦那さんだったんです。それで、どんなお店をやろうか考えていた時に、彼が「小さい頃からパン屋になりたかったんだよね」と打ち明けてくれて。そこから「二人で夢を叶えてみようか」と具体的な話をしていき、独立資金を貯めました。建築士さんとのご縁もあり、今の「自宅兼パン屋」というmatoiのスタイルができあがったんです。

 

ー店名の由来を教えてください。

 

サラさん:二人とも作家さんがつくったの陶磁器などの作品や、心をこめて丁寧に作られた料理が好きで、 「なぜそこに魅力を感じるんだろう」と考えたら、「その作品や料理が作り手の想いを纏っているからだよね」という話になって。 同じ料理でも作る人によって味が異なるのは、それぞれ違う背景があるからだと思うんです。うちのパンも、食べた時にそんな風に感じてもらえるような「まとっているパン」をつくりたいという思いから名づけました。 

 

 

 

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1階がパン工房、2階は自宅スペースの1軒屋。
アレルギー発覚、そして母になり選んだ「ヴィーガン」というライフスタイル

―お店のパンは、動物性食品、小麦以外の7大アレルゲン、白砂糖、パーム油、添加物は不使用とのことですが、コンセプトを絞るきっかけは何かあったんですか?

 

サラさん:カフェを辞めた約5年前に、牛乳アレルギーが発覚したんです。カフェで働いていたときは毎日摂取するから気づかなかったのですが、辞めたら毎日牛乳を飲む習慣がなくなり、たまに飲んだ時に調子が悪いことに気づいて。試しに1週間辞めてみたら胃痛が治ったので、検査してみたらやはりアレルギーでした。

 

私も含め、最近はアレルギー持ちの方が多いこともあり、「できるだけ色々な方が気持ちよく食べてもらえるよう、アレルギー対応ができるパン屋にしたい」というのは最初から決めていました。

 

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有機または自然栽培の植物性原料のみを使用している。

ーそこからヴィーガンにこだわるようになった理由は?

 

サラさん:まずは「卵・乳不使用」でレシピ開発を始めたのですが、 いざオープンが近づいてくると、それ以外もNGな人が意外と多いことや、学生時代に宗教上の理由で食を制限している海外の友達が、日本で食事の選択肢が少なく困っていたのを思い出して。「せっかくならヴィーガンパン屋をやろう」と思い立ったのが、約2年前のことです。 

 

ヴィーガンについて調べていくうちに、畜産業や酪農業で排出されるメタンガスが気候変動を加速させていることや、環境汚染のことも知りました。健康面でも、動物性食品を摂らない方が炎症の起こりにくい強い体ができること、そして動物たちの悲しい現状についても知って。ヴィーガンで美味しいパンをつくり続けることが、わたしたちの心とからだ、地球をつないでいくためのmatoiなりの方法だと思うようになったんです。

 

実際に作ってみると、植物性の材料って、小麦の味を全然邪魔しないんですよ!せっかくオーガニックの良質で美味しい食材を使うなら、その子達の良さを邪魔しないように植物性だけを使うのが、自分たちに合ったやり方だと確信しました。

 

 

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磨き上げられた工房内。化学出身のご主人の影響で、水やエタノールも化学記号で記されている。

ーそれからご自身もヴィーガンに転向されたんですか?

 

サラさん:実はヴィーガン歴は1年位なんです。最初は「ヴィーガンパン屋をやる」のだから、自分も試してみようと思いました。アレルギーのこともあり、まずは乳製品を抜いて、それから肉、魚、卵と段階的に辞めてみたら、もう超元気になって! 目覚めがよくなり、疲れにくくなりました。

 

お客様からも「パンを食べたのに体が軽い」「風邪引いてる時に食べたら元気になった」という声を頂いたり、反響があって。必要な方にきちんと届いて、美味しく優しく楽しんでもらえたらそれが一番幸せだなと思い、ブレずに動物性ゼロを貫いています。

 

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現在は土曜日の店頭販売と通信販売で営業中。

 

ー1歳のお子さんがいらっしゃるということですが、子育てとの両立はやはり大変ですか?

 

サラさん:大変なこともありますが、それ以上にたくさんのパワーをもらっています。 この子がいるからオーガニックにこだわるし、ヴィーガンを貫ける。自分が生きて死ぬだけだったら、もしかしたらそんなに本気にはならないかもしれないけど、『この子が大人になるころには、どんな地球に住んでるのかな』と考えると、やらない理由がないんですよね。 

 

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ヴィーガンというライフスタイルを選び、「生活しやすくなった」とサラさん。
カカオニブを使ったレシピ開発について

ー植物性の素材に注目する中で、今回ヴィーガン対応のカカオニブを使ってみて、いかがでしたか? 苦労された点はありますか?

 

サラさん:カカオニブはこれまでいくつか試したことがありましたが、今回のクリオロ種はとにかくパンチ力がすごかったです。 カカオの風味が強い分、どの材料と合わせるかという段階でかなり悩みましたね。単体だとカカオニブの主張が強すぎて。でも少ししか使わなかったらパンにする意味がないですし。

 

最初はナッツと合わせようと思いましたが、食べてみたらカカオ自体のオイルがすごく濃かったから、ナッツのオイルとぶつかって逆に味がぼやけると思って使いませんでした。

 

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レシピはエクセルで細かく管理している。

ー配合へのこだわりを教えてください。

 

サラさん:カカオニブのコクや香りの強さを一番活かせるように、あとは味わいにほのかに感じるスパイシーさを引き立たせるために配合を工夫しました。使ったのは、シナモン2種類、カルダモン、ブラックペッパー、そしていちじくとレーズン、フランボワーズ。今まで作ったパンの中で一番材料が多いんですよ。こんな複雑なレシピははじめて(笑)。

 

 

ストーリーを「まとう」パン Organic & Vegan Bakery matoi × カカオニブの可能性
力強い風味のカカオニブは、2種類の粒度をブレンドすることで生地となじませたという。

ー生地の材料や焼き方も工夫されたんですか?

 

サラさん:全粒粉20%の小麦ベースに、保水力の高いライ麦を通常より多めにブレンドしています。カカオニブって油分が多いので、みずみずしい生地にしてあげると油分と水分がよく乳化してコクが増すんです。

発酵の工程は、発酵するだけでなく風味が増していく過程なので、「発酵熟成」と呼んでいます。matoiのパンたちは入れる酵母の量も少ないし、さまざまな菌を含んだ天然酵母を使っているから、発酵がゆっくり進むんです。

 

今回のカカオニブパンは一次発酵で21時間、二次発酵で1時間、合計22時間も寝かせています。 低温でじっくり発酵させるから、うちのパンは置いておくとますます美味しくなるんですよ。 常温だったら1週間は持つし、冷凍したら1ヶ月以上美味しく食べられます。  

 

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粉に対して同量の水を加える「加水100%」でこねることにより、生地がしっとりとして小麦の風味が増すそう。
「パンの材料」としてのカカオニブの可能性

ー今回のコラボレーションしてみて、新しい発見はありましたか? 

 

サラさん:カカオニブってチョコレートの原料のイメージだったんですけど、今回向き合ってみて、ドライフルーツやナッツと同じように「一つの材料」として使えることに気づきました。

 

ー確かに、チョコレートパンはたくさんあっても、カカオニブのパンって見かけないですよね。

 

サラさん:実際、パンの材料として使うのは難しい印象でした。味がすごく濃いから、小麦がカカオに負ける可能性があるし、ドライフルーツやナッツのように混ぜれば美味しいパンが焼ける材料とはちょっと違うような気がして。私たちもこういう機会がないと使わなかったかもしれません。でも、使ってみたら思わぬ風味や食感の広がりがありました。

 

―最後に、今後挑戦してみたいことはありますか?

 

サラさん:先日店頭販売でカカオニブのパンを並べてみたんですが、「カカオニブとは何か」「なぜカカオニブを使ったのか」を丁寧に説明しないと、なかなか購買につながらなくて。 もう少しカカオニブのことを知ってもらう工夫をしていけたら良いな、と思っています。何より「カカオニブ、美味しいんですよ」というのも伝えたいです。

 

ヴィーガンパン屋としては、とにかく普通のパンより美味しいパンたちを焼くこと。いろんな方に食べてもらって、それが実は「体によかった」「環境や動物に優しかった」と後から気づいてもらえるような素直に美味しいパンであることが理想だと思っています。 

 

ー朗らかに笑う自然体のサラさんと、優しい眼差しでサラさんを見守るご主人。二人が紡ぐストーリーをまとったカカオニブのパンは、噛めば噛むほどに味わい深く、カカオニブの香りやスパイスが口中に長く残り……まるで余韻の長い、上質なワインのようでした。

 

【matoiより、パンの紹介】
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小麦とライ麦を合わせた生地に、細挽きしたカカオニブと粗挽きのままのカカオニブを練り込んでいます。 すべての材料をカカオニブのために配合しました。 

使用したのは、カルダモン・ブラックペッパー・シナモンを香らせたフランボワーズ・黒いちじく・レーズンです。 

低温でじっくり熟成した生地を、1時間かけて焼き上げることで香ばしく旨味の強いクラストに。瑞々しいクラムは噛めば噛むほど美味しさが増し、様々な風味が広がります。 

 

 

【美味しく食べるアレンジレシピ】
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ココナッツシュガーで甘みをプラスしても美味しい。

朝食べてもおやつとしても、ワインと合わせても楽しめるハードパンです。

そのままでも、リベイクしてもおいしい!

 

・そのまま食べるなら、赤ワインやバルサミコ酢をつかったお食事との相性は抜群。赤ワインを使った煮込み料理にもオススメ。

・オリーブオイルとバルサミコに付けて、食事パンとしてもgood。

・おやつだったら、ココナッツオイルを塗ってからトースターでリベイクして、ココナッツシュガーかアガヴェシロップで甘みを足すと、優しく軽やかなバターのように香ばしい香りが楽しめます。

 

※今回のコラボレーションから生まれたカカオニブのパンは、webストア(https://matoibread.stores.jp/)と店頭、どちらも数量限定で販売予定です!

 

文:水上彩 写真: 林ユバ

 

  • matoi

Organic & Vegan Bakery

心とからだと地球を想い、100%オーガニックの植物性素材のみでお作りする天然酵母ハードパンのお店。

住所:千葉県市川市国府台5-17-14

営業日:第2,3,4,5週 土曜日(2020年5月より営業日拡大予定)

お知らせやお問い合わせはInstagramまたはFacebookにて。

 

  • オオヌキ サラ

1987年 地球の日生まれ。日本人の父とシンガポール人の母をもつ。高校を2年で自主退学し飛び級で千葉大学に入学、同大学院修士号取得。大手カフェチェーンに新卒入社するも、日本の食の安全性に疑問を持ち独立開業を目指して退職。その後、IT企業に転職、営業・人事・webコンサルタントなど多岐に務めながら、独学でパン作りを学ぶ。2019年春、出産や子育てをきっかけに、心とからだ、地球と日々の暮らし、そして命のつながりに思う事がありヴィーガンに転向、Organic & Vegan Bakery “matoi”を開業する。