FEATURE

信念を持って生まれ故郷である福知山で洋菓子店を営む水野直己シェフ。世界No.1ショコラティエの称号を得ても、その想いは変わらない。水野シェフの大切にしていることは……写真家・新津保建秀のアーティスティックな写真作品とのコラボレーションでおくります。

 

京都から車で約1時間半の福知山市内。住宅街にある「洋菓子マウンテン」の駐車場では、平日にも関わらず、ひっきりなしに車が入れ替わり、レジにはチョコレートを買い求めるお客様が列をなしている。

「ワールドチョコレートマスターズ2007」世界大会に日本代表として出場して総合優勝し、ショコラティエとして世界一位の称号を得た水野直己シェフが率いる洋菓子店だ。

 

世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
台風など度重なる被災を経て、2016年より現在の店舗にて営業を再開。小高い住宅街にあり、視界を遮る高い建物がないため、店内には明るい日差しが差し込む。
世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜

生まれ故郷である福知山に水野シェフが凱旋帰郷したのは約12年前。ご実家で営む洋菓子店を受け継ぐ形で、シェフ・パティシエに就任した。東京で活躍するショコラティエは多いが、なぜ水野シェフはこの場所へ戻ることを決めたのか。

 

「この街に父が『洋菓子マウンテン』を創った1978年に僕が生まれ、僕が育ててもらった街もこの場所。僕が勉強してきたお菓子を披露するならこの街で、という考えになったのはとても自然なことなんです。この店のすぐ近くに、僕が子供の頃に遊んでいた公園があったり、もちろん自分に子供が生まれて、育てる場所として環境の良い場所を選んだということもありますし。もう一つは、フランスでの経験が人生観が大きく変えたんだと思います。フランスではどんな田舎の町にも立派なパティスリーがあって、その町の人たちが『パリよりもうちの街のお菓子の方が美味しい』と自分の街のパティスリーを誇りに思っているんですよね。そういうのを見てきて、田舎で『すごいお店』と言われることってカッコいいなって思ったんです」

 

世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
フランスでの修行時代に、水野シェフが集めたアンティークのお菓子型。お店の外のウインドウにミュージアムのようにズラリと並ぶ。
世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
杏と塩 ¥1575(税別)
「ワールドチョコレートマスターズ2007」優勝時の作品を商品化した、水野シェフのスペシャリテともいうべきチョコレート。フローラルな香りを持つチョコレートを主役に、杏の甘い香りをあててあげることで、より華やかな香りが楽しめるひと品。レストランでの修行時代に学んだという塩の持つ味わいを生かし、ヨルダンの死海の塩を添えている。
世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜

「父は5年前に亡くなりましたが、チーズケーキ以外にモカロールなど、見た目の面影は残しつつ今のテイストを織り込んだり、父の時代の『マウンテン』で出していたレシピをリバイバルした焼き菓子や生菓子もいくつか並べています。当時のレシピは何を書いているのか全然わからないものもありますが(笑)。僕が福知山に戻ってきた当時も、こういう大きいお店になってからも、ずっと昔から変わらずに来てくださっている常連さんたちがホッとする味を残しておきたいですし、その期待を裏切らないという証でもあります」

 

「地域への恩返し」という単純な言葉よりもはるかに温かいものを感じたのは、約15人ほどいるスタッフに混じり、水野シェフのお母様と奥様がともに働いているのを目にしたからかもしれない。

 

世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
チーズケーキ ¥255(税別)
水野シェフのお父様が作ったチーズケーキを再現しているという、ふわふわの食感が楽しめるスフレタイプ。今も昔も変わらず、レモンの皮が入っているのがポイントなのだそう。

そんな水野シェフが考える「美味しいチョコレート」とは、「テレビを見ながらパクパク食べられるような普段使いのチョコレート」が理想なのだそう。

 

「背筋を正して紅茶を淹れないと食べられないチョコレートは作りたくないんです。うちのお客様も皆さん、僕が作るチョコレートのスタイルが好きなので、カカオごとに持っている味わいや個性を引き出し、伸ばしてあげる組み合わせなどが人気です」

 

世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
コレクション ¥3150(税別)
おすすめのボンボンショコラ10種類を詰め合わせ。毎年発表してきた新作で好評だったものを残し、その年の新作を1〜2品加えているという、選りすぐりのコレクション。今年の新作はハーブとチェリー。
世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
プラリネ パルフェ ¥2500(税別)
2021年のバレンタインに合わせて発売された新作。ウィスキーボンボンショコラの製法をなぞらえて、コーンスターチと粉糖を合わせたもので型を作り、自家製のプラリネは流し固めたひと品。プラリネは、ナッツの種類によって焼き加減を変えたり、砂糖の焦がし加減を変えるなど、細やかな調整から生まれたこだわりの味わい。

現在、「洋菓子マウンテン」には、埼玉、名古屋、大阪、広島、福岡など日本各地から水野シェフのもとで修行したいと門を叩いた若いスタッフが働いている。

 

「福知山市内の子は一人もいないんですが、本当に全国から来てくれてますね。だいたい一度お菓子業界に入ってから僕のことを知ってくれるみたいで、ある程度のベースができてきた子たちが働いてくれてます。僕が福知山でお店を頑張ることで、『日本の有名パティスリーは東京だけじゃない』と、若い子たちが東京で学んだことを地元に持ち帰りたいと思ってくれるモデルケースになってくれたらすごく嬉しいですね」

 

世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
サッカーが大好きだという水野シェフ。お店の裏手にある練習場で、スタッフたちとサッカーをしたりするのだそう。スタッフとの関係性からも、水野シェフのあたたかいお人柄がうかがえる。
世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
2階にはカフェスペースを併設。「週末は特に、遠方から来てくださるお客様が多く、よく「どこで食べられますか?」と聞かれていたので、2階にカフェスペースを作りました」と水野シェフ。
世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
フィグルビー ¥2240(税別)
いちごのお酒に漬け込んだいちじくをルビーチョコレートでコーティング。ルビーチョコレートは基本酸性なので、アルカリ性に触れると色が変わるので、酸性を維持するために薄くホワイトチョコレートでコーティングしてからいちごのお酒に漬け込むことで変色も防ぐ。
世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜
カカオ ¥495(税別)
オレンジのムースを濃厚なビターチョコでコーティングした、王道の組み合わせ。上に乗っているカカオポッドはキャラメルのムース。

文=藤井存希

写真=新津保建秀

 

 

 

 

 

【Profile】

世界No.1ショコラティエが、福知山で「洋菓子マウンテン」を続ける理由。 〜写真家・新津保建秀が引き出す水野直己シェフの魅力〜

水野直己(Naomi Mizuno)

1978年生まれ。京都府福知山市出身。「お菓子の家ノア」、「レストラン パリジェンヌ」を経て2002年渡仏。パリ「Le grenier a pain」で修業後、「Le Trianon ANGERS」でガロワイヨ氏に師事。2004年帰国し「二葉製菓学校」講師。2009年から「洋菓子マウンテン」シェフパティシエ。2005年「内海杯技術コンクール」金賞、2006年「UIPCG第7回マスタークラス世界選手権ドイツ大会」世界第4位、2007年「ワールドチョコレートマスターズ2007」世界大会で総合優勝など受賞歴多数

 

【店舗情報】

洋菓子マウンテン

 

620-0017 京都府福知山市字猪崎小字山本322

Tel0773-22-1658

営業時間:11:00〜18:30、土日祝:10:00〜18:30

※カフェ・スペースL.O.: 閉店30分前

定休日:水曜
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