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カカオから見るメキシコ文化 写真紀行

カカオ好きなAPeCA読者の皆さま、そして沢山のチョコレートラバーズにとってメキシコの古代文明が魅力的なのは言わずもがなでしょうか。

 

カカオの歴史を少しお話させてください。カカオ豆は中南米地域に広がったメソアメリカ文明において、「神様の食べ物」とも言われれていたそうです。薬やお金としても使われ、日本は縄文時代の頃です。栽培食物としたのはマヤ文明、チョコレートやカカオの語源はメキシコ先住民語からきているといわれています。ポテチカ商人と呼ばれる人たちが、アステカの中心地メキシコ首都テノチティトランなどの高地地域から、カカオ産地のソコヌスコなどへ約1000kmもの長距離を旅をしたそうです。

カカオ豆を擦り潰して水に混ぜた甘くない飲みもの「ショコラトール」は支配者階級の人だけしか飲めなかった高級飲料でした。1528年にアステカ帝国を征服したスペイン軍が欧州にカカオ豆を持ち帰り、砂糖や香辛料を加えて甘いチョコレートに改良していきました。その後1800年以降にイギリスやアメリカにて板チョコレートの形が確立されます。、チョコレートが飲みものから食べものになったのはここ数世紀のことなのです。

このような歴史を踏まえると改めて、チョコレートの起源に関わるメキシコは、カカオ歴史に深く関わるオルメカ、マヤ、アステカ文明などの発祥の地であり、カカオを知る上で外せない国だと気づかされます。

カカオから見るメキシコ文化 写真紀行

メキシコは食文化の豊かな国で、2010年にはメキシコ料理が「無形文化遺産」として食の分野ではじめて文化遺産に登録されました。日本でメキシコ料理というと肉やチーズたっぷりのタコスやブリート等をイメージされる方も少なくありませんが、それらはメキシコ風アメリカ料理(テクス・メクス料理と呼ばれます)であることも多いのです。メキシコ現地ではレストランや屋台、家庭料理でも無形文化遺産になったメキシコ料理が生きていました。

今回紹介するのはチョコレートを使った「モレソース」というものです。チョコレートというと語弊があるかもしれませんが、カカオや唐辛子、スパイス、砂糖も入っているのでスパイスチョコレートソースと言っても間違いではなさそうですね。モーレ・ポブラーノ(mole poblano)と呼ばれるメキシコのプエブラ発祥の料理が有名で、鶏などお肉にかけて味わうのが定番の食べ方です。

カカオから見るメキシコ文化 写真紀行

メキシコシティ内でモレソースがかかった料理が食べられるEl Cardenalさんにて実食してきました! メニューを見ると“Pollo en mole poblano(鶏肉にモーレ・ボブラーノをかけた料理) ”の他にも、メキシコのアオハカ式の黒いモレ、緑のモレなど、一口にモレと言っても場所や素材によって様々なバリエーションがあることが分かります。

カカオから見るメキシコ文化 写真紀行
アハオカ式モレの“mole negro”添えられているのは辛みのある味付きライス。

私が選んだのはアオハカ式の黒いモレ“mole negro”です。気になっていたソースの味わいは、甘さがありながら、予想よりもスパイシー。色んな香辛料を挽いたものが舌の上に残って感じられ複雑な調和を味わわせてくれます。この甘さやコクが深くて強い感じには、田楽の味噌を思い出しました!

メニューを確認したところ、モレにはチョコレートやバラエティーにとんだチリに加えてバナナやトマト、ピーナッツ、とろみのためかパンやクリスピーなトルティーヤが入っているようです。バナナの甘さはコクが出そうですし、モレソースの作り方ではチリなどを香ばしく焼いてから加えるので、焦げからくる旨みや深さはとっても豊潤でした。

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レストランのある建物の1階にはモレソースの小売りもしていました。お家でもお店の味をそのままいただけます。メキシコのコストコ的な庶民スーパーchedrauiでも量り売りのモレソースが販売されていました。市場でも並んでいたりと、モレソースはメキシコの家庭料理での使用頻度が多く愛されていることが伝わります。

伝統的なモレソースがレストランだけでなくご家庭でも食べられている事情が分かったところで、沢山の人が行き交う世界都市メキシコシティの今チョコレートショップを覗いてきました!

TOUT CHOCOLATE
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メキシコ公園周囲の通りの一つ、アムステルダム通りという閑静な住宅やお店が立ち並ぶ場所にTOUT CHOCOLATEはあります。ライトアップされたショップ名とハイカラなカラーリングが目を惹きます。ショップ前でインスタグラム用に写真を撮る方や、雑誌やメディアの撮影場所としても使われているおしゃれな通りです。

 

<お店情報>

ショコラティエLuis Robledoはニューヨークやパリにて様々な銘店を渡った経歴を持ち、北米のショコラティエのトップ10に2回選ばれています。ここ数年はメキシコシティのBarry Callebautのチョコレートアカデミーセンターの所長を務めてチョコレートやペストリーの知見を多くの生徒やブランドに届けています。

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テーマカラーがビビットなピンクのようで、店内にもキュートなラッピングが沢山並んでいます。

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ボンボンショコラも丁寧に並んでいます。メキシコ産カカオを使ったものから、乾燥チリやスパイス入り、オレンジに、私たち日本人に親しみのある柚子を合わせたものもありました。フルーティーなメキシコのパッションフルーツや芳醇な香りのトンカ豆(クマル)など中南米の素材を生かしたフレーバーも沢山あります。実際に食べてみるとフルーツの新鮮さや濃度が高いのか、カカオに負けない味のインパクトが想像以上で感動しました。やはりその土地にあった食材を使ったものを、その風土の中でいただくことはとても意味があるのだと再確認しました。

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TOUT CHOCOLATE はカフェ併設のお店で、チョコレートを使った焼き菓子やパンも並んでいました。メキシコの死者の日(11月1日-2日)辺りには十字架のデザインのパン、Pan de muerto(パン・デ・ムエルト)の十字架部分をチョコレートでかたどったタイプも並ぶそうです。

※死者の日(メキシコのお盆のような行事)にお供えするパンがパン・デ・ムエルトです。

QUE BO!

もう一つ伺ったチョコレート専門店はメキシコシティ中心の歴史地区にある「QUE BO! (ケ ボ!)」です。

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QUE BO! はメキシコ産カカオ100%にこだわるお店です。お洒落な飲食店やショップが集う建物のの2階に店舗を構えています。

 

<お店情報>

ショコラティエJose Ramon Castilloは国際ガイドのCroquenurd de Chocolatより2012年から世界最高のショコラティエの1人とされ、パリのCergy Pontoise大学からチョコレートマスターの称号を受け、彼自身はメキシコカカオの保存や拡散に力を入れています。QUE BO!はインターナショナルチョコレートアワードにて2018年と2019年に金、銀、銅メダルを獲得しています。

カカオから見るメキシコ文化 写真紀行

店頭に並ぶチョコレートはどれも美しく、宇宙をイメージしたパッケージのボックスなどデザイン性の高さが特徴です。チョコレートはオレンジやマンダリン、ハイビスカス、パッションフルーツ、グアバなどフルーティーなフレーバーが豊富です。メキシコのモーニングに出てくるような現地でよく食べられる南国フルーツを積極的に織り混ぜています。

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他にはビターなメキシココーヒー、写真の上中央にカラフルなマカロンの横に黄色の丸いチョコの円盤がのせられてコロンとしたボンボンはブラウニーが丸くなって並んでいるもので、とても可愛かったです。

カカオから見るメキシコ文化 写真紀行

チョコレートドリンクはさまざまなタイプが用意されていて、イエローカラーのものはスパイシーなものを組み合わせていたり、メキシコ伝統的にコーンが入ったものなど様々なタイプがありました。定員さんが丁寧に好みのドリンクをヒアリングしてくれます。メキシコではトウモロコシ粉をお湯やミルクでといたアトレをはじめ、カカオを入れたポソルやテハテと呼ばれるコーン入りドリンクも豊富なんです。そんな伝統をこちらのケボ!さんは現代風にアレンジされていらっしゃいます。写真では見切れてしまったのですが、ショコラドリンクのパウダーの上にはブルーの色が素敵なハラが並んでました。ハラとは、メキシコのチョコレートドリンクのショコラテを作るために使う撹拌器のモリニーニョ(モリニージョ)を混ぜるために使う容器です。ハラから注がれるショコラテを飲む暮らしは、伝統的かつ丁寧なイメージで憧れてしまいます。

カカオから見るメキシコ文化 写真紀行

カカオとの長い歴史と共に生まれたメキシコの食文化は、現在においても家庭からお店まで豊かに受け継がれていました。

 

文・写真:古屋真衣