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60sチョコレートパッケージメモリアル

宇野亞喜良がパッケージイラストを手掛けた「Rondo」をはじめ、1960年代のチョコレートのパッケージがとても魅力的だ。実際のパッケージの画像や当時のCMなどをみていこうと思う。

 

古い雑誌には、当時の流行や文化が書籍や新聞よりもくっきりと記録されているので、状態の良いものを見つけては集めているのだが、昨年、1967年の雑誌を読んでいたらこんな広告が掲載されていた。

 

https://bit.ly/3sdKYsO

 

あまりのかわいさに、思わず興奮気味にツイートしたため脱字はスルーしてほしい。

“Rondo”という商品名のゴージャスな模様はエンボス加工、優美なハープとバラをあしらったロマンチックなデザインは今見ても色あせない美しさだ。

 

 

先ほどの写真付きのツイートはあっという間に拡散され、akameさんという方から「宇野亞喜良さんのお仕事ですよ」と、リプライをもらった。

 

https://bit.ly/2K5JoYK

 

それは2016年10月18日発行の日本経済新聞の夕刊に連載されている「こころの玉手箱」での宇野氏へのインタビュー記事。

 

https://s.nikkei.com/3oB8mOB

 

1964年に横尾忠則氏、原田維夫氏とともにスタジオ・イルフィルを設立。しばらく暇だったところ、前の職場からの縁で、グラフィックデザイナーの亀倉雄策の紹介でコンペに参加し、選ばれたものだということだった。

「これを見ると、イラストレーションで食べていこうと決意したあの頃の自分と、それを応援してくれた亀倉さんや仲間のことを思い出す」(記事より抜粋)と話していることからも、宇野氏にとっても思い入れのある仕事とわかってなんだか嬉しい。

 

宇野氏の60年代の広告の仕事といえば、すぐに思いつくのがマックスファクターの広告。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
写真の広告は1967年の「ドレスメーキング」に掲載されたもの。「装苑」のような洋裁雑誌だったドレメは、学生がデザインした服も掲載していて、それがどれもピエール・カルダンのコスモコールルックさながらのスペースエイジぶりでびっくりする。が、それはまた別の話すぎるのでまたいずれどこかで。

私が高校生だった2000年ごろはマックスファクターといえば女優の松嶋菜々子がCMキャラクターを務めていて、マスカラに定評があり、私も私の周りも、誰もが愛用していた。マックスファクター自体は1991年にP&G傘下になったのち2016年に「SK-Ⅱ」「イリューム」を残して化粧品ブランド自体はなくなってしまったが、割と最近まで続いていた身近なブランドが1960年代からあって(日本進出は1953年!)、しかも大好きなイラストレーターが広告を手がけていたなんて! と、私と同年代の宇野氏ファンなら静かな興奮を覚えるのではないだろうか。

 

著名なデザイナーやアーティストが若き日に活躍していた頃に手がけた商品がまだまだたくさんあるような気がして、当時のチョコレートのパッケージやCMを探った。

 

が、しかし膨大な数を発売してきた製菓メーカーは、すべての資料をアーカイブすることは困難だったようだ。特に高度経済成長期の大量生産時代、携わったスタッフやコンセプトをいちいち大切に保管している方が珍しいのだ。

そこで、様々なものの蒐集家で民族文化研究家の町田忍氏にご協力いただき、所蔵しているチョコレートのパッケージを披露していただいた。

町田氏は1960年代からチョコレートの箱や包み紙を集め続け、とんでもない量を保管している。

 

まずご紹介したいのが、毎年数多くの新商品が発売されては淘汰されてきたが、ロングヒット商品のひとつとなったが明治「ミルクチョコレートデラックス」。

1957年に発売され、パッケージデザインを手がけたのは亀倉雄策氏だ。当時は斬新なデザインと話題を呼び、マイナーチェンジしつつも60年以上クリーム色にストライプのデザインのパッケージを貫いてきた。

 

2007年に映画『ALWAYS 続3丁目の夕日』公開の際にセブンイレブンで復刻販売したので見覚えがある人も多いはず。

発売当初は包み紙タイプだったが、その後デザインを踏襲した箱パッケージになり、100円ショップに販売場所を絞って最近まで販売されていた。

 

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

あまり変わっていないパッケージといえばこちらも。

明治「アーモンド」。現在のパッケージでも「ALMOND」の「O」部分にアーモンドチョコレートを置く手法は受け継がれている。

 

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

また、ロッテの「ラミー」「バッカス」も現在のイメージと近いデザイン。

町田氏のコレクションには、同シリーズでもう一種類商品がある。

ラムレーズンの「ラミー」、ブランデーの「バッカス」、そしてオレンジリキュールの「バレンシア」。写真は1972年ごろの商品だが、町田氏によると「ラミー」「バッカス」は毎年マイナーチェンジされているから必ずチェックしているんだとか。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

こちらは2019年に終売した森永「チョコフレーク」。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:森永製菓

ゴツゴツした断崖のようなチョコフレークの写真に“彩り鮮やかなメキシカン調のパッケージ”というコンセプトのカラフルなロゴをあしらった絶妙なバランスのパッケージがかわいらしい。

パッケージのいい感じぶりはもちろん、この時期のエンゼルマークは天使が「森永」の「M」を持って地上に舞い降りてるかのような愛らしいデザインにも注目したい。

 

ちなみに、発売した1967年は、イギリスのファッションモデル・ツィギー が来日した年。「チョコフレーク」のCMキャラクターとなり、日本でツィギー旋風が巻き起こった。

 

https://bit.ly/3q9GPUW

 

そう、1960年代におけるチョコレートはお洒落でハイカラなお菓子。

CMやパッケージには世のトレンドを存分に取り入れられ、スタイリッシュなものが多かった。

 

たとえば明治「アポロチョコレート」。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

現在のアポロチョコレートとは似ても似つかぬスペイシーなデザインがかっこいい!

発売は1969年。同年に人類初の月面着陸を達成したアメリカの宇宙船アポロ11号がモチーフの、チョコといちごチョコの二層タイプのチョコレートは今と変わらないけれど、パッケージは現在に比べて随分スタイリッシュだ。

※しかし商品名の由来はアポロ11号ではなく、ギリシャ神話の太陽神“アポロン”から。

 

https://bit.ly/3oD8Kwf

 

こちらも激変、不二家「アーモンドチョコレート」。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

今や個包装&袋タイプのパッケージで販売されているが、以前は箱パッケージだった。

ブラウン×オレンジの2色刷りのパッケージがノスタルジック。

 

 

マカダミアナッツが獲れる南の国の女性をイメージしたイラストが、インパクト抜群な明治「マカダミアナッツチョコレート」。

マカダミアナッツを含んだ板チョコなので、現在発売している「マカダミアチョコレート」は粒状なので「マカダミアナッツチョコレート」とは仕様が違うが、前身的商品と言える。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

1976年のパッケージだが、当時人気だったイラストレーターの山口はるみ調のエアブラシを使ったタッチのイラストが時代を感じさせる。

 

 

このようにロングセラー商品は、パッケージも中身も幾度となくリニューアルやブラッシュアップを繰り返される。息の長い商品の過去のパッケージは、今見ても素敵なものが多数あるが、短命に終わった商品にもすてきなデザインはたくさんあったに違いない。

 

例えば、1968年に発売されていた明治「ピーナッツボール」。

アメコミ調のピーナッツのキャラクターの背景にはゴロゴロとピーナッツの写真というフタに、手書き風のロゴが洒落ている。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

1976年に発売された明治「ホーリィ」は、木肌と木目を彫り込んだ丸太型のチョコレート菓子。「Holly」は柊の木のことだが、描かれているのはなぜかもみの木と丸太小屋。クリスマスを連想したのか、“Holy Night(聖なる夜)”と掛けているようだ。

 

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田

1977年に販売された明治「ホワイトチョコレート リリック」。

ホワイトチョコレートから白い雲や雪山を取り入れたロゴとパッケージがかわいらしい。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

CMもリリカルなイメージで素敵。若かりし日の森下愛子の愛らしさとおしゃファンシーな水色のダイヤル式公衆電話に目が奪われる! CMソングはゴダイゴが担当。

 

 

「女の子ってとてもリリックなの、男にはわかんないの」

なんて、今では絶対にNGなキャッチコピーも古き良き昭和テイストだ。

 

 

1967年に“大きいことはいいことだ”をキャッチコピーに、従来の板チョコよりもひとまわりほど大きくて値段は50円のお得なチョコとして発売された、森永「エール」。そのパッケージは、キャッチコピーを表すかのように、ロゴとチョコレートをダイナミックに掛け合わせたデザイン。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

当時、型破りな指揮者として人気だった山本直純を起用したCMからも、ダイナミックなノリを感じる。

右は1972年の東京-岡山間新幹線開通記念パッケージとあって、新幹線「ひかり」が主役。私はこの団子鼻の0系新幹線が一番かわいらしいと思っているので、個人的に嬉しいコラボ。乗り物モチーフのお菓子はたくさん販売されているけれど、こんなに古くからそのアイデアが使われていたなんて、鉄道ファンも気になるパッケージなのではないだろうか。

 

 

同じく森永の板チョコレート、「ツーユー」。こちらは1970年のもので、一輪のバラとともに贈り主の名前を書く欄がある、パッケージデザイン。「ツーユー」は、1968年に発売された板チョコレートで、シンプルにロゴだけをプリントしたパッケージもあるが、町田氏が所有するものはスペシャル仕様。サイドのトリコロールの星モチーフや、エンゼルマークを消印に見立てたエアメール風のデザインが洒落ている。

 

60sチョコレートパッケージメモリアル
資料提供:町田忍

日本チョコレート・ココア協会によると、バレンタインデーに女性から男性へ想いを伝える際に、チョコレートを贈る習慣の始まりは1950年代からで、森永は1960年にバレンタイン企画を新聞広告などに掲載し、チョコレート販売を促進したという記録が。この「to you」のパッケージはバレンタイン商戦を見込んだ商品だろう。

 

宇野亞喜良氏が手がけたチョコレート広告をきっかけに、1960〜70年代のチョコレートパッケージのほんの一部を振り返ったが、どれも物語性や時代性を感じ取れるものが多かったように感じる。

町田氏のようにすべてのチョコレートパッケージを保管することはなかなか難しいが、外側も一緒に楽しむことで、今まで以上にチョコレートに愛着が湧く。

この時代に限らず、現在でも素敵なパッケージのチョコレート商品はたくさんある。デパートや専門店のチョコレートのパッケージが特別素敵なのはもちろんだが、街にあふれた市井のチョコレート商品のパッケージにも注目してはいかがだろうか。

 

 

 文=西村依莉