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アパレルからチョコレートの道へ、いつでも大切なのは顧客にとっての最良の体験

英国のカカオブランド「ホテルショコラ」。1993年に誕生して以来、チョコレートのみならず、カカオを起点にしたライフスタイルを提案してきた。

日本でも2018年に第一号店をイオンレイクタウンにオープンし、高級チョコレートメーカーが群雄割拠する中で、着実に支持層を広げている。チョコレートを口にする機会が増えそうなこれからの季節に向けて、「カカオを通して喜びを与えたい」という同社のフィロソフィーについてホテルショコラジャパンのCEO兼共同創業者であるクリス・ホロビンさんに話を聞いた。

 

アパレルからチョコレートの道へ、いつでも大切なのは顧客にとっての最良の体験

1993年に2人の英国人が立ち上げたホテルショコラ。そのポリシーは「More Cacao, Less Sweet」。私たちが通常食べているチョコレートは、カカオマスに砂糖を混ぜ込んで作られる。ホテルショコラではカカオ本来の味を味わってもらうために、使用する砂糖の量を可能な限り少なくするレシピを開発してきた。こうした姿勢について、ホテルショコラジャパンのCEO兼共同創業者のクリス・ホロビンさんはこう語る。「私たちの考えはとてもシンプルで、ただただ食べる人を喜ばせたいんです」。

 

アパレルからチョコレートの道へ、いつでも大切なのは顧客にとっての最良の体験

「70%ダークチョコレートという人気の商品があります。これはカカオの含有量が70%で、ミルクを含まないのでビーガンの方にもお勧めできる商品です。私たちのダークチョコレートは良質のカカオを使っているため、ミルクを含まずともまろやかで、濃厚なカカオの風味を凝縮したような味わいを楽しめます。

同じく人気の商品で、65%スーパーミルクチョコレートという商品があります。これは70%ダークと同じくらいカカオの含有量が高いミルクチョコレートで、非常に画期的なチョコレートとして多くの賞を受賞しました。質の良いミルクが少量加わることで、カカオの濃厚な風味はそのままに、さらに砂糖を少なく、まろやかな口溶けのチョコレートを実現しています」。

 

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この65%スーパーミルクチョコレートの開発には2年かかったという。ホテルショコラがそこまでしてカカオを多く、砂糖を少なくすることに手を尽くす理由について「チョコレートはカカオが主たるべきと考えます」とホロビンさんは語る。

「とはいえ、おいしいと思う味覚は人それぞれ異なります。多くの方の好みに合うチョコレートが見つかるように、40%ミルクチョコレートから100%ダークチョコレートまで、カカオ含有量の異なるチョコレートを幅広く揃えていますよ」と満足そうに語る。

 

アパレルからチョコレートの道へ、いつでも大切なのは顧客にとっての最良の体験
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ホリデーシーズンにあわせて、かわいらしいペンギンのチョコレートも。イギリスのショコラティエが手で削った型をもとに作られているそう。

目指しているのはただひとつ。「カカオを通してお客さんに幸せな体験を提供すること」。このホロビンさんの顧客本位の姿勢は彼のバックグラウンドから来ている。「もともとはアパレル業界でマーチャンダイジングや店舗開発を担当していました。高価格帯の衣料品を売る店舗であれば、来店するお客様は店の什器やハンガーにも高級感のあるものを求めるかもしれません。しかし、廉価な衣料品を販売する店舗で、什器に高価な素材を用いることは理にかないません。店舗にお金をかけた分は商品の価格に転嫁されることになります。内装にそれほど予算をかけることなく、商品の価格を抑える方がお客様は喜ぶでしょう。お客様に気持ちのいい買い物体験をしてもらうことが何より大切だと思っていました

アパレルからチョコレートの道へ、いつでも大切なのは顧客にとっての最良の体験

こうしたホロビンさんのカスタマーファーストの考えはホテルショコラの理念と重なる。

 

「ホテルショコラではRoots to Wrapperという表現を大切にしています。カカオの木からチョコレートのラッピングまで責任を持つということです。チョコレートを贈ったり、贈られたりするときの気持ちの高揚や、チョコレートを開けるときの期待感はチョコレートを選ぶ際の大きな要素になります。しかし、最終的に人が一番幸せを感じるのはチョコレートを食べたときだと思います。こうした考えのもと、華美な包装は省き、外見よりも実であるチョコレートそのもののクオリティを上げることで、上質だけれど高価ではなく、買い求めやすいものにしたです」

 

と語るホロビンさん。2021年にはチョコレートのパッケージを100%堆肥化可能なフィルム材にする計画だ。

2018年、ホテルショコラの日本法人立ち上げに合わせて英国から来日したホロビンさん。今は本国と日本とで目的意識を共有するために、毎週木曜日、テレビ会議に3時間割き、本国主導で進むチョコレート商品の開発に加わる。一方でこのほど東京・中目黒にオープンしたホテルショコラ中目黒店のカフェメニューの開発は日本主導だそうで、ホロビンさんがメニューのディレクションを担う。

アパレルからチョコレートの道へ、いつでも大切なのは顧客にとっての最良の体験
©KOZO TAKAYAMA
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ボロネーゼパスタ ベイク

「自宅がテストキッチンと化しています。夜遅く家族が寝静まる頃、キッチンに立ち、あれこれレシピを試す毎日です。醤油と味醂を混ぜ、そこにカカオニブをまる2日間浸漬させることでカカオの芳醇な香りを醤油味醂に移したソースを作っています。このソースを豆腐にかけるんです。やみくもにカカオを混ぜたりするのでは意味がありません。料理に使う以上、カカオである必要性のあるレシピを考えています。サンドイッチに挟むソースには山葵にホワイトチョコレートを混ぜ込んで山葵の刺激をやわらげるなどね」

というように奇をてらってただカカオを足すのではなく、和食と融合するかたちでカカオを取り入れている。こうした取り組みもすべて食べた人にカカオを通した新たな体験をしてもらいたいから。

 

「料理学校のコルドン・ブルー出身の母親は料理教室を開いていたので、厨房が遊び場の少年時代を過ごしたんです。だから料理は大好き。そして自分で新しい料理を生み出すことが楽しいから、カカオを使ったメニュー作りは仕事であり、私の日常のようなもの」。

 

アパレルからチョコレートの道へ、いつでも大切なのは顧客にとっての最良の体験
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さらに新しいチョコレート体験を提供するために、プロが作るホットチョコレートの同じ味を家庭でも手軽に作ることができるチョコレートドリンクメーカー「ベルベタイザー」をこのほど発表した。17世紀にヨーロッパで普及したチョコレートポットのクラシカルなデザインを踏襲しつつ、操作はボタン一つという便利さ。ミルクと1回分のチョコレートフレークをポットに入れてボタンを押すだけ。2分半でポットの中のミルクが70度前後に温められて、フレーク状のチョコレートを攪拌し、ベルベットのように艶やかなホットチョコレートが出来上がる。ポットの内側はフラットな構造でテフロン加工を施しているため、チョコレートがこびりつくことなく、後片付けもしやすいというすぐれもの。カプセルコーヒーで一杯ごとに好みのコーヒーを入れるように、15種類あるフレーバーを楽しむことができる。これからの季節、ウィッシュリストに入れたい家電の一つになるだろう。

アパレルからチョコレートの道へ、いつでも大切なのは顧客にとっての最良の体験

 

文=長谷川香苗

写真=林ユバ

 

【Profile】

ホテルショコラ

2004年、2人の英国人、アンガス・サールウェルとピーター・ハリスがロンドンにオープンしたカカオブランド。真に上質なカカオの芳香を大切にしたチョコレートを届けたいとの信念からチョコレート作りのモットーは「More Cacao, Less Sweet」。持続可能なカカオ文化を育むために、2006年にカリブ海のセントルシア島にある1745年から続くカカオ農園を買い取り、カカオ生産者とフェアなパートナーシップを築いている。カカオ豆の製造工程で出る廃棄物を極力減らすために、カカオ豆を覆っている白いカカオパルプを発酵させてカカオビール造りに生かすなど持続可能なカカオビジネスを進める。現在、世界で100以上のショップを展開。

ホテルショコラ (Hotel Chocolat) – イギリス発ラグジュアリーチョコレートブランド